猫の生き様に人々は心を動かされる
ようやく授かった子供を流産してしまった中年夫婦。哀しみの中で捨て猫を拾いました。しかし、妻は生まれてこれなかった子供の身代わりのような気がして、強い嫌悪感を抱き始め、やがて猫を捨ててしまいます。翌日、家の前に少女が現れました。少女の風変わりな言動により、妻は捨てた猫を探しに走ります。
- 著者
- 沼田 まほかる
- 出版日
- 2010-09-16
2007年に発表された、これまでとは作風の異なる沼田まほかるの新境地の作品です。3部構成で、それぞれの作品の主人公は、流産してしまった妻、不登校の少年、妻を亡くした夫が主人公になっています。そのすべてに、猫のモンが関わり、それぞれの主人公に寄り添います。
主人公の三人はそれぞれ死や孤独といった闇を抱えています。モンは自らの生き様を見せることで彼らの心を救います。
本作の魅力は、キーとなる猫の扱い方です。動物ものの小説となると、ハートフルな物語が多くなります。しかし、本作は、猫を邪険に扱うことが多く、猫好きにはきつく感じられます。猫はただ生き様を見せるだけです。登場人物はその姿から自身について考えさせられるのです。
猫の物語なのに、猫はきっかけでしかありません。そのため、安易な感動物語とはならず、しんみりと読み手の心の染みわたる作品となっています。
沼田まほかるの作品をお得に読む
謎の少女が引き起こす怪奇現象
産業廃棄物の処理場に放置された冷蔵庫。不思議な声に導かれた僧侶・浄鑑とサラリーマン・悠人は冷蔵庫を開けます。そこにはミハルという少女が眠っていました。ミハルに異常な気持ちを持つ悠人ですが、悠人とミハルが共にいると災厄が起こる言い、浄鑑がミハルを引き取り、浄鑑の母・千賀子と育てることにします。
- 著者
- 沼田 まほかる
- 出版日
- 2011-11-28
しかし数年後、ミハルの猫が亡くなったことをきっかけに、町で奇妙な出来事が起こり始めます。この出来事はミハルが起こしたことなのでしょうか。そもそもミハルとは一体何者なのでしょうか。
2009年に発表されたホラー小説です。物語は浄鑑と悠人の話が交互に進みます。浄鑑のパートでは、ミハルの愛猫の死によって彼の母がミハルを偏愛し過ぎて壊れていく様子や、そのほかの周囲の人間が壊れていく様も描かれます。
そして悠人はミハルに惹かれながらも会うことができない苛立ちから、彼女にひたすら暴力を奮っては、よりを戻すを繰り返します。こうした人間の闇が持つ不気味さと、謎の少女ミハルの周囲で起こる怪現象が相まって、忍び来るような静かな恐怖感がある作品です。
本作の魅力は、底知れない深遠さにあります。主として描かれる人間は現実的なのに、怪異現象や仏教を絡ませた世界観には答えがありません。真相がわかりそうでわからない深遠さがより恐怖を盛り立てた、現実に近いようで底知れない怖さがあるホラー作品です。
殺人を書いた手記が示す真実
主人公・亮介は不幸のどん底にいます。婚約者は失踪し、母親は交通事故で亡くなり、父親は末期のすい臓がんと発覚したのです。父親を気遣い実家に戻った亮介は、押し入れからユリゴコロと書かれたノートを見つけます。ユリゴコロには、殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白が書かれていました。このノートは果たして事実なのでしょうか。そして誰が書いたのでしょうか。
- 著者
- 沼田 まほかる
- 出版日
- 2014-01-09
2011年に発表された恋愛ミステリー小説です。亮介のパートと、ユリゴコロという題名のノートのパートが交互に描かれます。亮介は殺人について書かれたノートを読み進める毎に怯えを強くします。
ノートの真偽や作者という疑問から始まり、なぜ父が所有していたのか、もしかすると自分は殺人鬼の子供なのではないかという疑問が次々と沸き、不安に押し潰されそうになる様には、描写のリアルさも相まって強烈な切迫さを感じずにはいられません。
本書の魅力は、前半と後半での話の転換です。前半はサスペンスなのですが、いつの間にか複雑な家族の謎を紐解いていく心を打つような物語に変化しています。巧みな表現を積み重ねて、自然に変化させていくので、サスペンスと家族愛という相容れないような純愛の気持ちが違和感なく融合します。怖いだけでは終わらない沼田まほかるの恋愛小説をご覧ください。