日々多くのSF小説が発売されていますが、やはり名作と呼ばれるものは、時間が経っても色褪せないものです。今回は、いつになっても面白い、そんな名作のSF小説をご紹介します。

2016年に日本SF大賞受賞、特別賞を受賞した作品です。
菱屋修介が友人とゲイパレードを見に行くと、世界にアポカリプティックサウンドが響き、天使が舞い降り、世界は終わりを告げます。
修介は自分の妄想世界である月世界に逃げ込むのですが、そこから繰り広げられるパラレルワールドに、読んでいると翻弄されてしまい、まるでジェットコースターに乗っているかのような気持ちを味わえます。
- 著者
- 牧野 修
- 出版日
- 2015-07-08
ニホン語が存在しない世界や、宇宙を統一しようとする神と言語の力で戦う言語バトルなど、言語に特化したSFと言えるでしょう。
ポップな装丁からは想像もつかないような骨太なSFです。最後の最後に待ち受けるシーンがまた秀逸で、言語SFとしてあるべき結末だと思わざるを得ません。
あなたもジェットコースター言語SFなるものを、楽しんでみませんか?
「スワロウテイル」シリーズの第1作です。ある病気によって男女別に隔離されて生活している感染者たちは、それぞれのパートナーとして、翅をもつ以外は人間と同一の身体構造を持つ人工妖精と呼ばれる人造人間と暮らしています。人と同じようにパートナーを愛し、愛されるためにつくられた存在です。
揚羽は自分もまた人工妖精でありながら、狂ってしまった人工妖精を殺すという仕事を持っています。東京自治区創立二十周年を迎えた頃、不可解な連続殺人事件が起きて……。
- 著者
- 籘真 千歳
- 出版日
- 2010-06-30
表紙のかわいらしい少女の絵とは裏腹に、その内容は重く、人工妖精と人との間にある悲しい愛や、揚羽の背負っている背景など、扱うテーマとしては萌え要素などはありません。
作家本人が、夢は人工知能との結婚と公言している通り、人工知能の幸せとは何かといった、永遠のテーマがしっかりと埋め込まれています。また、独特の造語や“旧日本製”と書いて“シチズン”と読ませるようなルビふりなど、文体にも特徴があるので、SF文体好きにもおすすめです。
星雲賞を受賞した作品です。何度もドラマ化や、映画化もされているので、ご存知の方も多いかもしれません。『家族八景』、『七瀬ふたたび』、『エディプスの恋人』の3部作となっており、ここでは2作目をご紹介します。
人の心を読む能力“テレパス”を持つ火田七瀬が、同じ能力を持つ少年ノリオや、念力を使える黒人ヘンリーと出会います。迫害を恐れて、能力を隠しながら3人で暮らし始めますが、超能力抹殺をたくらむ集団に命を狙われるようになってしまいます。
1作目では通常の人間の中にテレパスである七瀬が入りこむというお話でしたが、2作目では、テレパスやテレキシネスといった超能力者同士のやりとりを存分に楽しむことができます。
また、テレパスがあるがゆえか、年齢以上の知性を発揮する3歳のノリオと七瀬の会話もかわいらしく、非能力者に囲まれた殺伐としたシーンが多いなかで非常に癒されます。
とはいえ、ストーリー全体を通した、非能力者の能力者への排他意識や、抹殺をたくらむ集団の冷酷さは、読んでいてとてもやるせない気持ちでいっぱいになります。
- 著者
- 筒井 康隆
- 出版日
ノリオ、ヘンリー、七瀬をはじめ、超能力を持つ多くの仲間が迎える壮絶な最後は、道徳や倫理とは何かを胸元に突き付けられる思いがします。
自分が超能力者だったら、あるいは身近にテレパスがいたら、自分はどうするか。そんなことを考えさせられる作品です。
言わずと知れたショートショートSFの神様ともいうべき、星新一の作品です。
元旦のお参りで、なんと福の神が自分にとりついてくれることになり、うかれていると予想外の展開になる「福の神」。画期的な発毛剤が開発され、さっそく買ってみると見事に毛が生えたが、その毛がなんと緑色だという「アフターサービス」。一人の女性をめぐって、二人の男が争う「三角関係」。
どの作品も星新一節がこれでもかというくらいに効いた、諷刺と戦慄と夢と笑いに満ちた珠玉のショートショート集となっています。
- 著者
- 星 新一
- 出版日
- 1976-12-02
最初は笑ってしまうような話も、どこか心に刺さるところがあり、人間の持つ弱さや愚かさを改めて考えずにはいられません。1976年に書かれた作品でありながら、現在でも違和感なく読むことができるのは、人間の本質をとらえているからではないでしょうか。
活字嫌いだった人が、星新一で本に目覚める方も多いといいます。今まであまり本を読んだことがない方にも、ぜひ手に取っていただきたい作品です。
未来人保彦が現れたことによって崩された普通な世界。主人公である美雪のみが知るはずの真実が、実は……。
- 著者
- 法条 遥
- 出版日
- 2013-07-24
26世紀の地球が舞台。謎の増殖型戦闘機械群により、地球、そして人類は絶滅の危機にありました。敵である増殖型戦闘機械を壊滅させるべく立ち上がったのは、人間ではなく、時間戦略知性体という人工知性体。時間を行き来できるこの知性体が、戦いを繰り返し、最後に辿り着いたのは3世紀の日本、邪馬台国で……。
- 著者
- 小川 一水
- 出版日
邪馬台国の卑弥呼と、人工知性体が出会うという設定は、SFファン、歴史ファン、双方が興奮するシチュエーションではないでしょうか。人工知性体でありながら、苦悩もし、恋もする主人公が切なくて健気。
未来を救うために過去に遡りますが、過去が変われば未来も変わり、元の過去とは違う、別の平行世界が生み出されてしまいます。それを知りながらも、人類のため、戦いを続けていく人工知性体。
時間枝の分岐に少し混乱はしてしまうかもしれませんが、270ページという長編にしては短めのページ数の中で、コンパクトでありながら壮大なSF大作が味わえます。
遠い未来、この作品に出てくるような人工知性体が開発されるかもしれない。そして謎の戦闘機が地球を襲うかもしれない。その時、我々人間の立ち位置は一体何であろうか……そのように思いをはせてしまうほど、この作品の主人公は魅力的で、そして切ないのです。
戻るべき過去はもうないというのに、人類のために悲しき戦いを10万年にもおよんで続ける物語。人間ではなく、人工知性体であるからなお、愛おしく感じてしまうのだろうなと思います。
景虎と手を組み、現代の兵器と戦術を駆使して幾多の合戦を潜り抜けながらも、伊庭たちはこの時代のある違いに気づいていきます。それは、自分たちがよく知っている正史と微妙にズレが生じていること。斎藤道三や織田信長が存在していないということ。そんな自分たちがよく知っている戦国時代の違いというものに疑問を抱き、「自分たちの知る歴史とは違うこの世界での自らの役割は何か?」と、考えていくようになるのです。
- 著者
- 半村 良
- 出版日
主人公の笠原郁も、メディア良化委員会の行き過ぎた検閲への義憤から来る強い反抗心と、幼少期から大好きな本を守ってくれた図書隊との出会いと憧れをきっかけに、図書隊員に入隊します。しかし、そこで彼女を待っていたのは、鬼教官の堂上篤による過酷な図書隊の訓練。女性であっても一切手を抜かない堂上のスパルタ指導に苦しみながらも、図書隊への憧れと本を守るという情熱をバネにして必死に耐え抜きます。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2011-04-23
「たいせつな場所へ連れて行く」そう言われ、導かれるがままに一雄が橋本親子のワゴンに乗り込んだ瞬間、そのワゴンは時間を超えて、タイムマシーンのように一雄を過去の世界へと導いたのです。そこから先は、過去の美代子や広樹との出会いと、ふたりの不倫や受験失敗というそれぞれのつまずきのきっかけを知るなど、今まで気付かず、目にしてこなかった過去の問題と直面していくことになります。そんな中、一雄は家族が抱えていた辛さや苦しみに気づき、自分も戸惑いながらも家族を助けようとするのですが、結果はいずれも失敗に終わります。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2005-02-15
『ボッコちゃん』、『きまぐれなロボット』など、1000をも超える膨大な作品を書き続けた作家、星新一の描く物語は、おそらく読書をあまりしたことのない方でも手軽に読めるでしょう。特有の淡々とした文体でとてもユニークなストーリーで、どの作品も何とも言えない不思議な感覚になる結末を用意してくれています。
- 著者
- 星 新一
- 出版日
- 1976-04-01
夏季キャンプに参加した、渡辺早季、朝比奈覚、秋月真理亜、青沼瞬、伊藤守の5人。楽しい思い出になるはずだった彼らの夏は、社会の闇を知った瞬間、いとも簡単に壊れてしまいます。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
- 2011-01-14
ある日、中生代の地層から砂時計が発見されます。その砂時計は永遠に砂が流れ続けるという不思議なもの。理論物理学研究所の助手・野々村浩三は、教授とともに砂時計が発見された古墳へと赴きます。
そして砂時計の謎を追う人々が次々に変死したり行方不明になったり、いつしか砂時計の存在を知る人間がいなくなってしまいます。その一方、未来を含む膨大な時空の中で起こる様々な出来事や戦い。果たして野々村の運命は……?
- 著者
- 小松 左京
- 出版日
この作品は物理科学的でありながら、歴史に基づいたエピソードも登場し、小松左京がいかに博学であったかを思い知らされます。
作中にはエネルギー素粒子、軌道エレベーターなどといった超科学的なキーワードが出現。さらに登場人物の関係性が複雑になることから、やや難解に感じる部分もありますが、全銀河とブラックホールを巻き込んだ、何十億年もの時空を超える壮大な戦いに圧倒されます。宇宙における、我々人間のように知性を持った生物の存在意義とは何か?そしてタイトルに込められた「果しなき流れ」の果てには何があるのか考えさせられます。
今なお読み継がれる、SF小説の金字塔。小松左京の頭の中の宇宙を垣間見ることのできる作品です。
マルドゥックシティ―〈天国への階段〉と呼ばれる螺旋状の道路が存在する都市では、階級制度がはっきりと現れ、上流階級の暮らす地域には下流社会で生きる者は行く手段を持ちません。階級によって市民は厳しく区別されるべきだというのがこの社会システムの象徴でもあります。
上流社会に属する男シェルに買われていた少女娼婦のバロットは、彼によって車ごと焼かれてしまいますが、万能兵器のネズミウフコックによって助けられます。その後自分を手にかけようとした男の行方を二人で探すことに。しかし、その男のボディーガードとしてついていたのがネズミのかつての相棒で……。
- 著者
- 冲方 丁
- 出版日
- 2010-10-08
瀕死の状態を助けられたバロットは電子機器や金属を操れる能力を手に入れウフコックと二人でシェルの犯罪を追っていきます。バロットははじめから万能兵器であるウフコックに心を開き、このヒトは自分のことをわかってくれる人だと感じとるのです。
「急に何かを察したようにウフコックが呟いた。その声の調子だけで、こちらがまだ言葉にもしていない気持ちを、ことごとく察知したのがわかった。まるで魔法だった。」
(『マルドゥック・スクランブル』から引用)
自分のことをわかってくれる人を幻滅させるようなことはしたくないと思うようになってきます。物語が進むにつれて二人の関係も変化していくので、注目しながら読むと楽しめるでしょう。
物語の後半では二人と敵の激しい戦いが繰り広げられるのですが、その敵のルックスも個性的で現実には存在しないであろうものを表現するのは難しいはずなのに詳細でわかりやすく書かれているのでイメージができやすいのです。
SFは現実とかけ離れすぎて抵抗がある方もいるかもしれませんが、この物語は自然にその世界観を想像できるので初心者の方も読みやすいのではないでしょうか。
たまには違うジャンルの作品を読んでみようかなと思っている方はぜひ『マルドゥック・スクランブル』を手にとってみてはどうでしょう。
そこで、ケイジは命を落としたはずでしたが、次に気がついた時は、出撃の前日に戻っていました。それからまた出撃し、戦死し、そしてまた出撃し、戦死する。そんな転生と死のループを、158回近くと気が遠くなるほどケイジは繰り返すことになります。淡々とした文章で描かれているこの展開は、実感こそ湧きませんが、何度も生き返っては死ぬということ自体は、想像しただけで恐ろしいものです。そんな、恐ろしいけれど目が離せない物語を進めていく中で、ケイジはリタ・ヴラタスキという、圧倒的な戦闘力を持つひとりの少女兵士と出会うことになります。
- 著者
- 桜坂 洋
- 出版日
- 2004-12-18
宇宙人である彼らは地球に遭難してしまって、食料が尽きたので、食料を分けてほしいと頼むのです。けれど、言葉が通じない地球人と宇宙人。困った地球人は、冷凍睡眠で眠る頭のいい人たちに直接話してもらおうと、彼らが眠る部屋を指さします。しかし、宇宙人たちは「食料がほしい」と言う言葉に返事をもらえたと思ってしまい……というストーリー。
- 著者
- 星 新一
- 出版日
- 1972-06-19
このSF小説の主人公は、気象庁の職員・灰田涼です。M(モンスター)を相手にしている仕事だから、正義感に溢れた主人公なのかと思いきや、ドライな性格の持ち主。M(モンスター)を相手にする職場なのも、公務員の人事異動の結果に過ぎないと考えています。けれど、決してやる気がないわけではありません。いざというときは、真摯に職務に向き合い、真面目で実直な姿も見られるのです。
- 著者
- 山本 弘
- 出版日
- 2010-06-24
最初は部屋を埋め尽くすほどだったコンピューター。それがデスクトップとなり、ノートパソコンとなり、今ではスマートフォンでも、苦労することなく情報を得ることが可能となりました。ポケットにも入るサイズのスマートフォン。だんだんと小さくなっていく、情報処理のための機器。最終的に人類が行き着く情報処理は、脳への直結となるのだろうか? そんなことをリアルに感じてしまうSF小説でした。
- 著者
- 野崎 まど
- 出版日
- 2013-07-24
ライトノベルではありますが、名作SF小説といっていい作品。本作で扱われる「タイムリープ」=「時間跳躍」は意識だけが時間移動をするというもの。これにより、タイムトラベルものにつきものなタイムパラドックスの問題を回避することに成功しているのです。高度なロジック、構成を有するライトノベル史に金字塔です。
- 著者
- 高畑 京一郎
- 出版日
「学ぶ」ということが、自分の人生を大きく変えていく。どん底の中でも、知識を活用することで、どこまででも登っていくことができる。主人公の力強さと負けん気、そして知識を正しく活用するという賢さに驚かされます。知識というのは、ただ持っているだけでは意味がありません。それを上手に活用してこそ、本来の意味を成すのです。
- 著者
- 筒井 康隆
- 出版日
- 1994-03-01
強制送還された日本で、トァンは一緒に自殺を図り、失敗した友人の零下堂キアンと再会します。けれど、キアンもまた「ごめんね、ミァハ」という言葉を残し、自殺してしまうのです。実はその自殺は「生府」に反抗する、反抗勢力が起こした「集団自殺」でした。
- 著者
- 伊藤計劃
- 出版日
- 2014-08-08
今回ご紹介した作品は、どれもSF小説の名作として有名な作品ばかりです。発売からどれほど年数が経っても、やはりいい作品というのは色褪せないもの。発売当初に感じたドキドキやワクワクは、いつ読んでも感じることができます。まだ読んだことがない人は是非手に取ってみてくださいね。