時代小説を読んでみたいけれどなにから読めばいいか、わからない。これから時代小説を楽しみたいという方におすすめな、絶対外さない名作時代小説をご紹介します。

- 著者
- 藤沢 周平
- 出版日
- 著者
- 浅田 次郎
- 出版日
- 著者
- 冲方 丁
- 出版日
- 2012-05-18
- 著者
- 佐伯 泰英
- 出版日
- 2002-04-09
- 著者
- 高田 郁
- 出版日
- 2009-05-15
- 著者
- 高田 郁
- 出版日
- 2010-08-05
- 著者
- 池波 正太郎
- 出版日
- 2016-12-31
- 著者
- 宮部 みゆき
- 出版日
- 2004-04-15
- 著者
- 西條 奈加
- 出版日
- 2017-06-15
- 著者
- 北原 亞以子
- 出版日
- 1993-09-03
- 著者
- あさの あつこ
- 出版日
- 2011-04-08
この作品は、頭も良くて剣も立ち、なんでも器用にこなすけれど、やりたいことの見つからない天才肌の彦四郎と、質朴ながら壮大な夢を持ち、努力を惜しまない勘一とを、対照的に描き出した時代小説です。
父親が下士なら嫡男も下士と決まっていて、次男や三男ともなると、婿入り口でもないかぎり、一生冷や飯食いになるしか道がない時代。勘一は、粘り強く努力を重ねた結果、異例の出世を果たします。
作中で勘一と塾の先生が次のような会話を交わします。
「彦四郎はいかなることも、たいして励むことなく易々とやってのけます」と勘一が言うと、「たいして励みもせずにか…。もしかしたらその少年は、己のやりたいことが何もないのかもしれぬな」と先生が答えます。
天才と努力家、いつの時代でも、汗水たらして努力してこその成功です。才能だけでは上に昇れないのです。
- 著者
- 百田 尚樹
- 出版日
- 2012-06-15
出世を果たした勘一が、不遇なまま亡くなった竹馬の友=彦四郎のことを知り、彼との思い出を回想してゆく所から物語は始まります。
学問も剣も藩校でトップだった彦四郎が起こしたある「事件」。この「事件」を引き起こした原因が明らかになる過程で、勘一と彦四郎の友情、勘一と彼の妻「みね」と彦四郎のしがらみが鮮明になってゆきます。
値打ちのある骨董品でなく、使い古しの鍋釜まで扱う汚い古道具屋、皆塵堂。主人はやる気がとんと見えず、すぐに釣りに行ってしまう伊平次です。勤め人は皆長続きせず、唯一居ついているのは歳に似合わずちゃっかりしている峰吉という子供と鮪助という貫禄たっぷりの猫。大人が長続きしないわけは、皆塵堂がいわくつきの品も引き取り、そのせいで幽霊が出るからなのです。
- 著者
- 輪渡 颯介
- 出版日
- 2014-03-14
はじめの巻では、銀杏屋という老舗道具屋の息子、太一郎が主人公になっています。太一郎は水嫌いの猫嫌い。長男なのに父親から遠ざけられ、弟が後取りだと他業種に奉公に出されていますが、その弟が急死したため銀杏屋に帰ってきます。古道具屋としての修業を積ませるために父親が見つけてきたのが皆塵堂です。幽霊が出る店で、太一郎は修業を続けることができるのでしょうか。また、父親が太一郎を遠ざけたのはなぜなのでしょう?そして、太一郎が水嫌い、猫嫌いになったわけとは?
幽霊が出るというのは亡くなった人がいるということ、そしてその亡くなった人に何らかの思いが残っているということです。章ごとに様々ないわくつきの古道具とそれにまつわる幽霊事件が出てくるのですが、結局のところ一番怖いのは生きている人間なのだと思わされます。コメディタッチではありますが、幽霊の描写はおどろおどろしくてゾクッとすることでしょう。
血のつながりというものは厄介で、親子だからこそ言えなかったり、言い過ぎてしまったりする気持ちもあります。親の言うことが的外れに思え、自分のことをちっともわかってくれないと子供が思うのは時代が変わっても同じようです。第1巻の太一郎と父親のエピソードを読むと、それでもやはり親は親であること、そして親も人間であるということを改めて感じさせられます。修業を終え気持ちの整理もついた太一郎が皆塵堂を去った後、2巻以降は不運続きの庄三郎、滑稽なほど真面目な益次郎、1巻でサブキャラクターだった猫好きの巳之助などが主人公になっていきます。
釣りバカのようでいて必要な時には的確な行動をとる伊平次、太一郎の友人で超鈍感、猫大好きの巳之助、子供なのにシビアな峰吉、飄々としているが要所要所でからんでくる清左衛門、そして看板猫の鮪助など、キャラクターが多彩ですから、読み進めるうちにお気に入りの1人が出てくることでしょう。また、人情物、ホラー、ミステリーなどの要素を兼ね備えていますから、そういった意味でもどなたでも楽しめると思います。更に猫が好きな人には特におすすめしたいシリーズです。
時は平安、人や獣とともに鬼やあやかしも息づいていた時代です。主人公は実在した陰陽師、安倍晴明。今でいう占い師のようなものでしょうか。もう1人の重要な登場人物が管弦の名手である源博雅です。『陰陽師』は、教科書にも出てくる古今集などをモチーフに、実在の人物をモデルにして、2人が都に起こる怪奇事件を解決していく人気シリーズなのです。
- 著者
- 夢枕 獏
- 出版日
晴明は広い屋敷に住んでいますが、晴明の他に人がいるのかどうかは友人の博雅にさえわかりません。どうやら式神という霊のようなものを使用人代わりに使っているようなのです。博雅がそのことについて尋ねるたびに、晴明は、この世で一番短い呪は名であり、人も物も名によって縛られている。目に見えぬものさえ縛ることができる、それが呪である、などと禅問答のようなことを言います。
晴明の陰陽師としての力量は際立っており、皆が恐れる妖怪や誰も退治できなかった鬼なども易々と倒していきます。これらは人の怨念が物に宿ったり、家族を殺された動物などが成ったりしたものです。人に害を及ぼすようになってしまったために陰陽師が呼ばれるわけですが、晴明は彼らの哀しみも感じ取りつつ、自らのさだめとして封じていくのです。
「おまえはいい漢(おとこ)だな」「優しい漢だな」「博雅はおもしろい漢だな」。……博雅に対しことあるごとに晴明は言います。圧倒的な力を持つ晴明は、それがゆえに鬼や妖怪を退治する役割を負わねばなりません。だからこそ、思っていることがすぐに顔に出る、小難しい話にはすぐに飽きる、でも「たとえ晴明が妖物であっても、この博雅は、晴明の味方ぞ」と真っ直ぐに言い切れる博雅が眩しいのかもしれません。
最強の陰陽師である晴明ですが、博雅をからかってみたり、式神で遊んでみたりするかわいい一面もあります。長いシリーズですが、晴明と博雅の人柄に惹かれてどんどん読みたくなってしまうことでしょう。
秋山小兵衛は剣術一筋に生きてきた男ですが、59歳にしてすでに道場をたたんだ隠居の身です。物語は小平衛の息子、大治郎が開いた道場に「相手の氏素性は明かせないが、切るのではなく両腕を折ってほしい」というあやしい依頼があったことから始まります。大治郎は断ったものの、あやしい依頼について父に報告します。涼しい顔で聞いていた小兵衛ですが、大治郎が帰った後に依頼者について密かに調べ始めるのです。
- 著者
- 池波 正太郎
- 出版日
周囲を煙に巻くような軽口ばかりたたいているのに、いざ剣をとればわずかな軽い動作で相手を負かしてしまう小平衛。身長が息子の胸のあたりまでしかないというかなり小柄な体ですが、戦う時には体が大きくなったように見えるというのですから、その強さは恐ろしいほどです。
剣の腕は確かで人望もある小平衛ですが、格好いいところばかりではありません。手伝いに来ていた19歳の娘、おはるに手をつけてしまうエロ老人でもあります。筋の通らないことは許しませんが、差し出されたお礼は遠慮なく受け取ります。潔癖すぎないこの絶妙なバランス感覚は、数々の戦いを制し、負けた者たちの恨みをきちんと背負う覚悟を持ち続けてきた人生からくるものなのでしょう。強いだけでなく人間臭い一面も持っている小平衛はとても魅力的です。
こんな小平衛とおはる、息子の大治郎、女剣士の佐々木三冬などが活躍する話が16巻にわたり出版されています。作者の他界により未完となっているのが残念ですが、起こった事件は章ごとに解決するのでストレスなく読み進められるでしょう。
民谷家の一人娘で美しい岩は、重い疱瘡(ほうそう)を患い、顔の半分が膿と爛れにまみれた顔になってしまいます。運の悪いことに父親の又左衛門が事故でお役目を解かれることになり、民谷家存続のために婿候補となったのがいつも平坦で笑わない浪人伊右衛門。伊右衛門は岩の顔を見ることもなく結婚に同意するのでした。
- 著者
- 京極 夏彦
- 出版日
お岩さんの「四谷怪談」を下敷きにした作品ですが、登場人物は同じながらまったく違うテイストの話になっています。岩は醜い狂女ではなく、辛い境遇になりつつも武家の誇りを失わない強く美しい女性ですし、伊右衛門も強欲で非情な男などではなく、手先が器用で物事に動じず子供好きな、岩を深く愛する夫なのです。
心の底では愛し合っている2人ですが、互いを思いやるあまりすれ違って喧嘩ばかりの毎日です。すれ違いからくる溝は、伊東喜兵衛の悪巧みや様々な人たちの思惑でどんどん広がっていき、ついには2人を引き離してしまいます。思いがけない展開の連続で、巧みに伏線が張りめぐらせてあり、読み進めるうちにどんどん京極ワールドに絡め取られていくことでしょう。
笑わない伊右衛門は最後に「嗤」います。この漢字はただ笑うのではなく嘲笑をさす字です。ラストで愛する岩を抱いて嗤う伊右衛門は、壮絶でおどろおどろしく、でも美しい。伊右衛門は何を嗤ったのでしょうか?すれ違ったまま進んでしまった自分と岩の運命でしょうか?悪巧みの末に切り伏せられた喜兵衛?それとも見かけの恐ろしさで岩の本質を見抜くことができなかった世間でしょうか。
広く知られた『四谷怪談』を知る人は、京極夏彦が描くまったく違った究極の愛の形に度肝を抜かれることでしょう。人間も恋も眼に見えるものだけが真実なのではありません。ドロドロしたところもある、でも目が離せなくなってしまう新しい恋愛の形です。
信子はかつて共に琴を習った和枝から、夫である寺門市之進の仕官の世話を頼まれます。そのことを夫の佐藤欽之助に話すと欽之助はひどく怒り出しました。実は和枝は欽之助が求婚したことのある相手だったのです。
- 著者
- 周五郎, 山本
- 出版日
夫が、美貌を誇り、やることも派手だった和枝に求愛し振られた後に自分と結婚したことを知った信子は打ちのめされます。しかもその後、和枝は「寺門は自力で仕官がかなった」と傲慢な言い方で報告に来るのです。
平凡ながら幸せな結婚生活を送っていたのに、負けん気の強い友人の言葉に揺さぶられて傷つく。……現代女性の悩み相談にも出てきそうな構図です。でも、最後欽之助の想いと思いがけない男らしさがわかった時に、胸がすく思いがします。
12の短編をおさめた本の中の1編です。その他にも、歳の差婚であらぬ邪推をされている若妻の本音を夫が知ることになる「驕れる千鶴」、貧しい中でも互いを思いやり、気持ちに応えようと奮闘する夫婦を描いた「大将首」など、少し古めかしいゆえにかえって新鮮な愛の形が描かれた作品が収められています。1話完結の短編集なので読みやすい1冊です。
江与は適齢期を過ぎても独身の「女医者」とよばれる婦人科の女医。それも中條流という、ご法度の堕胎も行う医者なのです。ふとしたことから出会った津田清之助に惹かれますが、清之助は女医者を取り締まる立場の同心。自らも何があっても命を絶つことは許されないと考えています。
- 著者
- 諸田 玲子
- 出版日
タイトルにあるほおずきの実は、赤くて可愛らしく、子供が鳴らして遊ぶ身近な植物です。江与の家にはほおずきがたくさん植えられています。しかしそれは実を愛でるためではありません。実はほおずきの根には子宮収縮作用があり、堕胎医はそれを薬として使うのです。
本来、体を治し命を長らえさせるのを手助けするはずの医師が、胎児の命を流さなければならない。そこには母体の安全、女性の経済状態、身分違いの恋の結末、騙され乱暴されたなど、一概に言えない様々な背景があるのです。命を失くす哀しみを引き受けつつ、それでも江与は「女たちが安心して子供を産める世の中にならない限り、私はやめない」と仕事を続けるのでした。
江与は、ふわふわした夢のあとで現実がやってくる恋をほおずきのようだといいます。しかし、可愛らしさと毒を併せ持つほおずきは、生と死の間で医業を続ける江与の生き方をも暗示しているようです。葛藤はありつつも、この問題から逃げずに立ち向かう江与の姿はせつないけれど力強いものです。そして、それなら夢も現もすべて受け入れようと清之助が言ってくれる場面には本当にホッとします。
産むこと、生まれること、生きること、死ぬこと、愛すること、別れること。考えが違い、会うたびにやりあう2人の心が、次第に近づいていく様子が描かれます。江与の主体的な生き方と、それを包み込む度量の広い清之助に喝采を送りたくなることでしょう。
ぎょろりと大きな目玉の村椿五郎太は、武士は武士でも小普請組という職禄のつかない家柄。気丈な母里江と2人暮らしをしながら、乳兄弟の伝助が営む水茶屋「ほおずき」で代書屋の内職をしています。五郎太は幼馴染の紀乃が好きで、紀乃も同じ気持ちなのですが、小普請組であるため紀乃の父親から認めてもらえません。五郎太は学問吟味という試験を受け、役をもらえるよう頑張ることにします。
- 著者
- 真理, 宇江佐
- 出版日
五郎太は人がよく、紀乃一筋の素朴な青年です。代書屋稼業で関わった人たちのためについついひと働きしてしまいます。愛すべき人物ですが、その人のよさが裏目に出ることもしばしば。試験にも猪突猛進というわけにはいかず、母や師からは「志が低い」と言われてしまうのです。
代書屋の内職をしつつ勉強をしているあたり、バイトをしながら学生でもある現代の若者に通じるものがあります。試験日が近くなると、とにかく一心不乱に勉強しなければならないのに「自分はこれでいいのだろうか」などと突然深いテーマを考え出してしまうのも同じです。自分たちのすぐそばにもいそうな人物像で、好感が持てます。
でもこの人の好さから関わる事件が物語の波となり、私たちを楽しませてくれます。どんな依頼がどんな事件をつれてくるのでしょうか。五郎太は首尾よく試験に合格し、定収入を得られる道を掴み取ることができるのでしょうか。そして晴れて紀乃と結ばれることが出来るのでしょうか。
この作品には悪役が出てきません。素町人なのに五郎太を「ごろちゃん」と呼び、変わった格好をしたがる伝助をはじめ、みな愛すべきキャラクターばかり。紀乃の父親平太夫だけは息子の御番入りを鼻にかけ、紀乃と五郎太の恋路を邪魔する男なのですが、それも子供可愛さからくるもので心底の悪人というわけではないのです。少し気の強い紀乃と五郎太のやり取りも微笑ましく、ほのぼのした人間模様が安心して読める1冊となっています。
- 著者
- 宇江佐 真理
- 出版日