4位:テロを通して現代社会の閉塞感を描く
日本で小規模なテロが頻発するようになりました。事件を起こした実行犯たちは「レジスタント」と称し、自らの命を犠牲にして社会への抵抗を示します。彼らには貧困層であること、職場や地域のコミュニティに居場所がないという共通点がありますが、彼ら同士の接点はありませんでした。
誰がテロを指示しているのでしょうか。その本当の目的とはどこにあるのでしょうか。
- 著者
- 貫井徳郎
- 出版日
- 2014-04-08
『私に似た人』は2014年に発表された、連作短編集です。日本で起こる小規模なテロを話題の中心に据えて、テロの実行犯、テロリストを追う公安刑事、テロを激しく憎む青年など多数の視点から描かれます。個々人の心の闇を描くことで、現代社会の閉塞感をリアルに表現しています。
本作の魅力は、現代日本の抱える問題をリアルに描いたことです。社会問題の渦中にいる人々を描き、社会の救いようのなさを強調し、警鐘を鳴らします。作中の小規模なテロは実際には起こっていないフィクションですが、いずれノンフィクションになってしまうのでは、と思わせられる作品です。
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3位:映画化もされた貫井徳郎の代表作
ある一家が惨殺された事件を、被害者の関係者から話を聞いていくことで事件の概要、被害者の人物像が明らかになっていく物語です。
被害に合うのは一見誰もが理想とする幸せな家族。一流企業に就職し収入も多くいわゆるエリートといわれる夫、にじみ出る育ちの良さからどこにいっても人々の中心にいるような美しい妻、そんな2人に育てられた行儀のよい兄妹。犯人が未だ捕まっていない未解決事件を、ある一人の記者が被害にあった夫と、妻の複数の関係者にインタビューをする、という形で話が進んでいきます。
- 著者
- 貫井 徳郎
- 出版日
- 2009-04-05
最初は近所の住人から始まり、話が進むにつれ、もっと過去の深い関係者にも話を聞いていきます。
インタビューということもあり、それを受ける人は面白おかしく、また、自分の事は棚に上げ他人を陥れるように話そうとします。その様子は痛々しくもあり、自分にもこうゆう一面があるのかもしれないと恥ずかしさすら感じるかもしれません。
徐々に語り明かされる夫妻の本性と、女性の物語、何か解りそうでつかみきれない謎もあり、とても読み応えのある作品です。2017年2月18日公開の映画とあわせて読んでみてはいかがでしょうか。
2位:警察の焦燥が事態を悪化させる
警察のエリート、佐伯は連続幼女殺人事件を追っていましたが、犯人を検挙できず、世間の風当たりは非常に厳しくなっていました。そこで佐伯は犯人にメッセージを送り挑発します。刺激された犯人は佐伯の娘を誘拐し、殺害することを計画します。
一方、娘を亡くし無気力になった無職の松本は、新興宗教に入会しました。そこで松本は黒魔術にのめり込みます。死んだ娘と同じ年の少女を誘拐して殺し、その遺体に娘の魂を呼び戻そうとしました。しかし、試みは失敗します。諦めきれない松本は次々と少女を誘拐し殺害していきます。
- 著者
- 貫井 徳郎
- 出版日
『慟哭』は1993年に発表された貫井徳郎のデビュー作です。犯人を追うエリート刑事、娘を失い宗教にのめりこむ男の二つのストーリーが交互に展開していきます。
エリート刑事の物語では、娘をさらわれた親としての気持ち、捜査責任者としての立場の二つの間で揺れ動き、徐々に心が壊れていく様を、宗教にのめりこむ男の物語では娘の死による悲しみを抱えきれず、やがて狂っていく様を丹念に描きます。そして、この二つのストーリーのつながりが見えた時、この物語が持つ人間の悲哀が明らかになるのです。
本作の魅力は、エンディングにあります。入念に作り込まれたトリックにより隠されていた驚きの真相ももちろん良いのですが、それだけでは終わりません。最後の一文で、もう一つ真実を明らかにします。ミステリーに親しんだ方には特に衝撃のある終わり方かと思います。
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