姫野カオルコは、過去に何度も直木賞の候補として選ばれ、五度目にしてようやく受賞に至り世間に名を知られることとなった実力派です。そんな姫野カオルコ作品の特徴は、作品ごとに七変化する文体だと言うことができるでしょう。

- 著者
- 姫野 カオルコ
- 出版日
- 2008-10-10
- 著者
- 姫野 カオルコ
- 出版日
- 2014-11-07
- 著者
- 姫野 カオルコ
- 出版日
- 2015-12-04
- 著者
- 姫野 カオルコ
- 出版日
文体のクセの強さとしては三段階中の二段階目、ややクセありということです。文章としては、インタビュー形式をもとに構成した形がとられており、平易な文体で綴られており読みやすくなっています。「ややクセがある」のは、主人公である倉島泉(せん)の半生そのものかもしれません。
もともと「筆者」は物語「シンデレラ」の翻案小説の企画を進めていました。しかし、「筆者」は幸せの象徴としてのシンデレラにどうしても共感できず、編集長に相談したところ、それでは「倉島泉」について書けといわれたのです。「倉島泉」というのは、事務所立上げ時に参画したメンバーの親戚とのこと。「筆者」は泉について親族を含む関係者へのインタビューを重ねていきます。いったい「倉島泉」とはどのような人物なのでしょうか?
- 著者
- 姫野 カオルコ
- 出版日
- 2012-06-12
長野県諏訪で生まれた泉は、妹のほうが病弱でかわいらしいということで、長女として母親から厳しくしつけられて育つのです。その後も良家のお見合い話を妹に取られたり、妹の婚約者と結婚しても、旦那の不倫相手に略奪されたりします。舞踏会に参加する前までのシンデレラが継母や姉達にイジメられるシーンそのままです。
その後、白馬の王子が現れるかというとそんなことはありません。だからといって、泉は不幸せだったのでしょうか。泉は好奇心旺盛で、純粋に周囲の人々の幸せを考えて毎日を過ごしていました。人にはあまり気づかれませんでしたが、泉はよく笑っていたそうです。
筆者がインタビューを重ねるにつれ、静かに泉の生きざまが明らかになっていきます。「富み善き美しき人生」とは何か?本作品からは、本当のシンデレラストーリーとは何なのかを考えさせられます。裕福である、良家に嫁ぐといったことが幸せと思われがちですが、本当にそうなのでしょうか。周囲の理解や思い込みとは離れていても、本人が幸せだと思う生き方があるのではないでしょうか?泉の半生を紐解くと、本当の幸せについて改めて考えさせられます。
『リアル・シンデレラ』を読んで、姫野カオルコが読者に問う、「本当の幸せとは?」について、改めて考えてみるのもよいかもしれません。
- 著者
- 姫野 カオルコ
- 出版日
- 2007-02-24
直木賞受賞に至るまでの姫野カオルコ作品について紹介しました。女性だからこそ書ける作品、昭和という時代を知るからこそ書ける作品などがありました。作品によって見事に使い分けられた文体の違いにも注目しながら、楽しんでいただければと思います。