映画や漫画、舞台など伊坂幸太郎の作品は小説以外のかたちでも目にする機会が増えました。現実感とフィクションが程良く入り混じるユニークな設定や、スリルに溢れたダイナミックなストーリーを持つ伊坂作品をランキング形式でご紹介します。

その傍ら小説を執筆し、2000年に『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー、その後の発表作も様々な賞にノミネートされ、メディアミックス作品も多いなど、人気・実力ともに兼ね備えた作家です。
それぞれ語り手が異なる6編から成る、連作短編集です。
伊坂と親交の深いシンガーソングライター・斉藤和義に作詞を頼まれた際、「小説なら」と執筆した作品。これを受けて斎藤は「ベリーベリーストロング〜アイネクライネ〜」という曲を作りました。
作中には「斉藤さん」も登場しますよ。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2017-08-04
タイトルになっている「アイネクライネナハトムジーク」はもともとモーツアルトの楽曲名。「ある小さな夜の曲」という意味があります。
この言葉が象徴するように、本作に登場するのは皆ごくごく普通の人ばかり。描かれているのも日常の風景です。殺し屋などは出てこないし、サスペンス要素もありません。でも、そんな普通の人が起こした小さな出来音が、誰かの人生を変えていくのです。
物語は緻密な計算によって少しずつリンクしていて、日常の中に小さな奇跡が転がっていることがわかるでしょう。
2018年の冬には映画化されることが決まっています。そちらもお楽しみに。
ベストセラー作家となった現在も仙台で執筆活動を続けている伊坂。本書は2005年から2015年の仙台での日々を綴ったエッセイ集です。
「タクシーが多すぎる」、「ずうずうしい猫が多すぎる」など「多すぎる」をテーマに日常が描かれています。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2015-06-25
あの伊坂幸太郎が、こんなに心配性で自意識過剰だったのかと驚いてしまうかもしれません。基本的に描かれているのは仙台でののんびりとした暮らしぶり。この日常から、数々のヒット作が生み出されていると思うと不思議な気持ちになってしまいます。
文章の随所にクスリと笑えるユーモアが織り込まれているのは、彼の小説と同じですね。
その一方で、東日本大震災に関しては、地元を愛する真摯な姿勢が伝わってきます。伊坂は震災を経験して、「楽しい小説を書きたい」と強く思うようになったそう。小説家というのは場所を選ばずに仕事ができる職業なのかもしれませんが、それでもどれだけ有名になろうとも、彼が仙台にこだわって住んでいる理由がわかる気がします。
伊坂幸太郎の小説が好きなら、抑えておきたい一冊でしょう。ちなみに本書には短編小説「ブックモビール」も収録されているので、こちらもぜひチェックしてみてください。
劣悪なことをしているにも拘らず、どこか憎めない、それでいてほっこりする小悪党物語です。
悪事の下請けを生業としている岡田という男。岡田は、悪事から足を洗いたいと相棒の溝口に申し出ます。これに対し溝口は条件を提示し、岡田は見知らぬ三人家族の父親に「友達になろうよ」とメールを送るところから物語は動き出します。どうやらその家族は“訳有り”のようで、岡田はその家族とドライブに出掛けますが……。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2015-12-17
物語は5本の短編で成り立ち、小悪党二人組が絡んでくる様々な出来事についての話が中心となっています。虐待されている小学生、盗んだ車のトランクの大金、問題児の男の子、ボスを騙してのかたき討ち。一見、これらは何の繋がりも無いように見えますが、登場する多くのキャラクターの行動や発言が、見事なまでにすべてラストの章の伏線になっています。
作中に散りばめられた伏線の素晴らしさはもちろんのこと、同時に注目すべきは作中に登場する濃いキャラクターたちです。特に、岡田の相棒である溝口です。50を過ぎた親父が良い具合にふざけていて笑いを誘います。
登場人物の軽快な会話や展開で、どんどん読めてしまいます。伏線にやられた、と悔しい思いをしながらも、読み終えた後はまた読み返したくなるでしょう。
表題作「フィッシュストーリー」は世代をまたがって善行が施されていく物語です。売れないけど、自分たちの主張をロックに載せて伝えたいバンドが生み出した曲「フィッシュストーリー」。彼らはあえて売り出したレコードに無音部分を作り出しました。その「フィッシュストーリー」をドライブ中に聞いていた男性が、無音部分で事件に遭遇します。
遭遇した事件がきっかけで新しい生活が始まり、その息子も事件に大きく影響を受けるのです。その息子が偶然遭遇したハイジャック事件で事件を解決します。そして、そこで救われた女性がまた世界を救うのです。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2009-11-28
世の中の正義は、実はこのように周り回って発揮されるんじゃないか?しかも何世代にも渡って。その繋がりがゆったりと表現されています。バンドマンが夢をもって楽曲に取り組み、売れたかというとそうではなかったかもしれないけど、その楽曲が正義を作り、世界を救う!読み終わったときには爽快な気持ちになることができます。
その他の短編も、表面的には善い事なのかそうじゃないのかわからないけれど、結果的に何らかの善行を支えている、といった物語が集められています。
本作を読むと、結局は良いほうに進んでいくに違いない、いや進んで欲しいという思いを込めて創り上げた物語たちに出会うことができます。伊坂幸太郎を読んでほんわかしたい気持ちになったときには、ぜひ『フィッシュストーリー』を手に取ってみてください。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2013-06-26
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する。
そう宣告されてから5年が経過し、地球の余命はあと3年。
『終末のフール』はそんな世界観で紡がれる、仙台にある団地「ヒルズタウン」を主な舞台とした短編集です。
小惑星が降ってくるのが紛れもない真実だと分かった当初は、暴力や略奪といった慌ただしいできごとが頻発しました。親を失った子供も少なくありません。身を守るために暴徒を殺して、罪悪感に苛まれる人もいます。
ですが、地球滅亡宣言から5年も経つと世間は意外と落ち着くのです。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2009-06-26
人々はどんな反応を示し、どんな行動をして、どんな感情を抱くのか。
タイトルにもなっている「終末のフール」は、老夫婦と十年前に家を飛び出していった娘との再会が題材となっています。もうすぐ終わってしまう世界の片隅の、家族再生の物語。
「籠城のビール」では、悲しい過去を背負った兄弟二人がマンションの一室に立て籠もります。そこに住む元アナウンサーの男と家族に復讐しようとしますが、復讐を誓った兄弟も当惑するような予想外の事態が待ち受けていて……。
引きこもりの父親に苛立つ少年が登場する「鋼鉄のウール」には、世界の状況なんて関係なく延々とキックボクシングの練習を続ける選手が登場します。どうして黙々と練習しているのか。そして、崩壊寸前の少年の家族はどうなるのか。
8つの短編の登場人物たちはそれぞれ個性的な余生を過ごしています。
世界がもうすぐ終わるというあまりにも重たい現実。
にも関わらず、描かれるストーリーが読者に与える印象はあたたかいです。普通に考えたら絶望的なのですが、不思議とその世界を生きる人々が羨ましくなるかもしれません。
伊坂幸太郎の軽妙な語り口が遺憾なく発揮されています。それぞれの物語は独立しているのですが、すべて同じ団地で起きる話なので少しずつ繋がっていて、その仕掛けもまた愉快。
間もなく地球が滅亡してしまうとして、自分なら今この瞬間からどう生きるだろうか。そんなことを考えながら読み進めるといいかもしれません。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2007-05-15
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2008-09-12
小学生の頃、同じ野球チームだった相葉(アイバ)と井ノ原(イノハラ)。社会人になった相原は後輩の為に多額の借金を背負い、一方井ノ原は難病の子供の治療費工面に奔走する毎日。そこで相葉は一攫千金を狙い、とある作戦を練ります。しかしトラブルが起き、たまたま居合わせた井ノ原を道連れに、とんでもない事件に巻き込まれ……。
- 著者
- ["阿部 和重", "伊坂 幸太郎"]
- 出版日
- 2017-11-09
本作の魅力は、何といってもスケールの大きさでしょう。仙台を舞台に、冴えない2人が世界の危機を背負って謎に迫っていくのですから。
また、物語の随所に伏線が張り巡らされており、その回収の仕方も見事です。序盤での会話が物語の終盤で活かされていたり、ふとした瞬間にでてくる単語が物語のキーワードであったりと、一瞬も気を抜けません。
キャラクターも魅力的です。主役の2人はヒーローでもなんでもなく、元問題児と苦労人。現実世界にもいるかもしれない、と思わせる人物だからこそ、スケールの大きな物語も違和感なく成立します。
トラブルメーカーの相原に、面倒見の良い井ノ原が振り回されるという図は、一種お約束なのかもしれませんが、「喉が渇いたところにお茶が差し出される」というような心地よさを感じます。
魅力あふれるキャラクターにアクションシーン、主役2人の友情と青春等、見どころが満載。読後は大作映画を見たかのような爽快感が得られます。エンターテイメント大作という言葉が相応しい一冊でしょう。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2007-06-23
- 著者
- 幸太郎, 伊坂
- 出版日
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2010-11-26
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2006-06-28
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2006-12-21
- 著者
- 幸太郎, 伊坂
- 出版日
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2008-02-08
いかがでしたか。伊坂幸太郎の小説に登場するキャラクターは皆個性豊かですが、ちょっと見回せば私たちの周りにもいるんじゃないか、と思えるような親近感があります。読んだあとは、「明日からまた面白い人に会いに行こう、探しに行こう」と思える不思議な魅力を持つ作品ばかりです。