真の正義をめぐるハードボイルド小説
所轄署の捜査二課暴力団係の刑事の仁義なき闘いを描いた超ハードボイルドなストーリーが綴られています。
舞台は昭和63年の広島。違法捜査やヤクザとの癒着などの黒い噂をされるほどの独自捜査を貫くベテラン刑事大上は、新米刑事日岡とコンビを組むことになります。二人は、ある組の企業の社員が行方不明になった事件を追うことになるのです。
その事件を発端に裏社会に激風が吹き荒れます。手荒に捜査を進める大上に日岡は戸惑いの連続でしたが、組同士の対立が抗争の火種となり、それを止めるべく奔走していくのです。二人の熱いキャラに息をつく間もなくハラハラドキドキさせられ、巧妙に仕掛けられたストーリーと謎かけに最後まで読む手が止まりません。
- 著者
- 柚月裕子
- 出版日
- 2015-08-29
広島弁で交わされるテンポのよいやり取りが、リアリティを生み出す要因になっているのではないでしょうか。徐々に加速する展開と、惚れ惚れしてしまう程の男気に臨場感溢れる描写がハラハラドキドキの怒涛のラストを演出します。
そしてなんと言ってもプロローグの意味がエピローグで一気に結びつくとき、そのどんでん返しにはかなりのやられた感に襲われるでしょう。
正義とは?そして信じることとは何かと、葛藤し続けた果てに出した日岡の答えに深く考えさせられます。疾走感と躍動感で読み手を高揚させスリルをたっぷり堪能できる作品です。
デコボコ漫才コンビ
直木賞を受賞した『破門』へと続く「疫病神」シリーズの第一弾!!笑えるデコボコなコンビが繰り広げるハードボイルド小説です。
建設コンサルタントの二宮が産廃業者の小畠の依頼を請け負うところから物語は始まります。
小畠は、廃材の処分場を作るという計画を進めていました。しかし、いざ申請するとなって地元の水利組合は補償金を上積みしてきたのです。困り果てた小畠は、それを回避し、組合長の同意を得たいという依頼を二宮にしてきました。そして調査をしていく二宮は、この計画の裏に暴力団が大きく関わっていることを突き止めるのです。
- 著者
- 黒川 博行
- 出版日
- 2014-12-25
父が暴力団員だった二宮は、その関係で、建設工事を妨害してくるヤクザをヤクザによって制する“サバキ”と言われているものの仲介をしていました。そこで二宮は、いつものようにサバキの斡旋をしている暴力団の幹部である桑原に依頼することにします。
一方サバキを仕事にしていた桑原は、とある現場のサバキの費用が支払われないという事態になっていました。ここでタイミングよく二宮が受けた依頼を手放すまいと躍起になる桑原と二宮の、お互いを巻き込んだスリリングな4日間が始まるのです。
二宮と桑原が、互いを疫病神と罵り合いながらも、漫才テンポで交わされる関西弁の会話は読み手を引きこみ、繰り広げられる暴力の中に笑いを湧き起こさせてくれます。標準語では表現しようのない世界観のある作品です。
炎上が加速していく展開にハラハラドキドキが止まりません。同時にその場にいるかのような情景描写が読み手の心を掴みます。そして、ヤクザは悪人、という思いを持っていても人間味を持たせていることで、憎めない甘さを植え付けられてしまいます。気づくと二人を応援してしまっている自分にハッとしてしまうのではないでしょうか。
何かを解決するためとはいえ危ない橋を渡ってきたことへの戒め、そんなひとり勝ちさせないクライマックスに清々しさを感じさせてくれる1冊です。
不条理と理念
D機関に所属するスパイ結城中佐を中心に世界各地で展開される、スパイ任務の疾走感溢れる物語が綴られている連作短編集です。
軍部から猛反発されるも作られたスパイ養成機関。それまでのスパイ選抜法ではなく、一般の大学出身者から優れた人材が集められていきます。そして、指導者である結城中佐の理論に基づき養成されていくのですが、その理論はとてつもなく孤独で哀しく苦しいものでした。
しかしその理論のもと、恐ろしくも哀しい自負心が彼らを動かし、冷静に賢く任務こなし着実に成果をあげていくのですが、次第に指導者の統計が崩れていくのです。
- 著者
- 柳 広司
- 出版日
- 2011-06-23
飾り気のない読みやすい文章が、先へと読み急ぎたい気持ちにさせ、あっという間にラストまで導いてくれます。そして、冷たく暗い感覚が肌に伝わる情景描写が大戦前の情景や雰囲気が凄く伝わり、最後まで目が離せません。
私たちが目にしてきたスパイ映画とは違い、冷たく乾いた人間描写が本来のスパイの姿を連想させ、その環境の不条理さが胸に渋い痛みを与えるのでしょう。超人的な肉体と怜悧さで任務をこなしていくも、孤独で亡霊のように日々を過ごすその様は、読み手に寂しさを湧き起こさせるかもしれません。
あなたは何かに命をかけることができますか?常に危険と隣り合わせのスパイたちの、命をかけた壮絶な戦いを本作でご堪能ください。