悲しき双子の運命譚『双頭のバビロン』
物語は1920年代のウィーンの上流階級に生まれた双子、ゲオルクとユリアン。二人が語りを交互に変えながら進んでいきます。二人は結合性双子として生まれますが、分離手術を受けるまで人目のつかないところで育てられていました。
- 著者
- 皆川 博子
- 出版日
- 2012-04-21
分離後の二人は別々の道を歩むことになります。ゲオルグは名家の跡取りとして陸軍学校に行きますが、騒ぎを起こして退学に追い込まれ、ハリウッドへと渡ります。そこで映画監督として大成功し、自分の理想の映画を作るために中国で芸術的な映画を作り始めるのです。
一方ユリアンは存在を抹消され、ボヘミアで謎の少年ツヴァンゲルと共に高度な教育を受けて育ちます。そこでウォルター博士の実験を受け、ゲオルグの記憶の共有、精神感応などが可能になりました。夢と現実が曖昧な物語の描写に読者は翻弄されますが、物語の最後の登場人物の独白により謎が解けていきます。
膨大な資料を読み込んで作られた作品とだけあって、ハリウッドの描写は非常に詳しく書かれていています。そのせいか映画史の本を読んでいる気分にさせてくれるので、映画に興味がある方にもおすすめの本です。
本作の最大の特徴は、歴史小説、推理小説、怪奇小説の三つの特徴が混在しているところです。作者の文章の巧みさと全体の構成力で、三ジャンルを違和感なくまとめあげているところに驚きました。オカルトの要素ありますが、しっかりとした時代考証がなされているため、実際にあったように思えるほど見事な情景描写です。物語の髄所で伏線や小細工が散りばめられており、全ての伏線が回収され謎が解けるラストにも驚くことでしょう。
皆川博子の作品をお得に読む
皆川博子による、ゴシックミステリーの金字塔『聞かせていただき光栄です』
物語の舞台は、解剖が神の意思に反する罰当たりな行為とされていた18世紀のロンドン。解剖医のダニエルは、家宅捜索をされます。ダニエルと弟子たちは、解剖台の上に置かれていた子宮を露出させた貴族令嬢の屍体を急いで暖炉に隠します。家宅捜査終了後、屍体を取り出してみると、令嬢の屍体の代わりに、四肢を失った屍体と顔を潰された屍体が現れたのです。彼らはやがてこの事件には、死体の他にも大きな事件が隠されていることに気がつき……。
- 著者
- 皆川 博子
- 出版日
- 2013-09-05
この小説には個性的なキャラクターが生き生きと登場します。そのおかげかグロテスクなシーンが多いのですが、ユーモアを感じられ、どんどんと作品に引き込まれる王道ミステリーといえるでしょう。
詩人、令嬢、密室、監獄など魅惑的なキーワードが次々と出てくるので、ゴシック小説好きにおすすめの一冊です。
変死体と陰謀『アルモニカ・ディアボリカ』
本作は『聞かせていただき光栄です』の続編にあたります。過去の事件のせいで失意に沈んでいた解剖医ダニエルの元に、またもや不可解な事件が舞い込みます。被害者の死体は天使のように美しく、胸には謎の言葉が書かれていました。しかし今回もまた屍体がすり替えられていて、事件はますます難解になっていきます。弟子たち一行は事件解決のために屍体を解剖しますが、被害者は予想外の人物で……。
- 著者
- 皆川 博子
- 出版日
- 2016-01-22
前作のように個性的、かつ18世紀のロンドンを彷彿とさせる単語がたくさん出てきます。前回よりも悲壮的で救いのない内容ですが、今回も皮肉やユーモアが物語のあちらこちらに散りばめられています。登場するキーワードが史実に基づいており、作品の構成がしっかりしている読み応えのある小説です。
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