幻想的な世界で理知的に謎解き!見立て殺人の古典名作
探偵ファイロ・ヴァンスの活躍するシリーズ4作目にして最高傑作と名高いのがこのお話です。
ファイロ・ヴァンスはニューヨークの屋上庭園付き高級マンションに住み、親族からの遺産で、美術品を収集したり、スポーツをしたりと気ままに暮らしています。桁違いの博識で、探偵の仕事も知的好奇心からくる趣味のようなもの。
- 著者
- S・S・ヴァン・ダイン
- 出版日
- 2010-04-05
現代風に、身も蓋もない説明をすればセレブのイケメン。そんなファイロ・ヴァンスを、ヴァン・ダイン自身がその友人として語る形で物語は進みます。
マザーグースを題材にした本書は、いわゆる「見立て殺人」ものと呼ばれる形式になっています。
「クック・ロビンを殺したのはだあれ」
「わたしって雀がいった」
まるで詩を再現するかのように、ロビンという名の男が、弓と矢で殺されていました。
おあつらえ向きに、スパーリング(雀)が登場し、ぼくが殺しましたと自白します。
けれどそれは、一連の事件の幕が開けたにすぎない出来事でした。
マザー・グースはイギリスやアメリカで古くから親しまれている童謡です。日本ではあまり馴染みのないものですが、独特の残酷さと幻想が合わさった詩はそれだけでも魅力的。
意味ありげな紙片や、事件現場の見取り図が差し挟まれ、まるで現場にいるような臨場感のある本書。童話の中のように幻想的に進んでいく見立て殺人を、理知でひも解く推理小説となっています。その2つの雰囲気が混ざり合った独特の世界観の中、パーフェクトボーイの名探偵・ファイロ・ヴァンスが活躍する様子をどうぞご堪能ください。
日本で大人気の「悲劇シリーズ」。「館もの」の名作
今でこそエラリー・クイーンの傑作ミステリとして有名な本書ですが、刊行当時は「バーナビー・ロス」という、エラリー・クイーンとは別名義で書かれていました。
著者の作品は、同名の探偵・エラリー・クイーンが父・リチャード・クイーンと共に活躍するシリーズが有名ですが、本書を含む悲劇シリーズの探偵はドルリー・レーン。耳が不自由になって引退した、元舞台俳優です。ハムレット荘という名の家に住み、使用人たちをシェイクスピア作品の登場人物の名で呼ぶ小粋な初老の男が事件に挑みます。
- 著者
- ["エラリイ クイーン", "宇野 利泰"]
- 出版日
物語は富豪ハッター家の当主が死亡したところから始まります。このハッター家、不思議の国のアリスに登場するマッドハッターを彷彿とさせる、それぞれが何かしら問題を抱えた一家。死亡したヨーク・ハッターの妻エミリーとその息子・コンラッド、そして娘達。更にコンラッドの妻に子ども達など、登場人物全員がみんなどこか病的で、誰もが怪しく見えてしまいます。
そんな一家が住む家が主な舞台。本書は「館もの」に分類されるもので、閉ざされた空間(館)の中で、一見不可能と思われる殺人が次々と起こります。
そんな閉ざされた空間で人間の心理が光った作品です。みんなどこか壊れた登場人物、そこで起こる殺人は謎や闇が深いように感じます。そして巧みに張り巡らされた伏線、緻密な描写はより一層作品の深みを増しています。最後の犯人の顛末は予想外、かなりひねりのはいったものとなっています。
本国アメリカよりも日本に愛好家が多いという本書。刊行順ですと「Xの悲劇」が先行、「Zの悲劇」「レーン最後の事件」と続きます。四部作をじっくりと読んでみたい方は「X」からどうぞ。
お好きな真相を選んでください
『毒入りチョコレート事件』は、新製品のチョコレートとしてユーテス・ペンファーザーにあててチョコレートが送られてくることから物語が動き出します。ペンファーザーはチョコレートをベンディックス夫妻に譲ります。しかし実はそのチョコレートは毒入り。ベンディックス氏は重体に陥り、夫人は死亡するという事件が起こってしまうのです。
事件の捜査が難航するなか、「犯罪研究会」の六人がそれぞれ自分たちの推理を披露していきます。
- 著者
- アントニイ・バークリー
- 出版日
- 2009-11-10
この作品は「多重解決型」と呼ばれる推理小説の手法を使っています。「多重解決型」とは、ひとつの真実を探偵役が解決するものではなく、事件の真相がいくつも複数の人物によって考えられる、という手法です。
犯罪研究会のメンバーが、一人一晩ずつ自分の推理を披露していくのですが、前の発表者に対し「ここがちがうのではないか?」という反論や、納得する推理を取り入れて自分なりの推理に変換したり、という犯罪研究会の中の人間関係も垣間見ることのできる作品になっています。
一人の探偵が事件のすべてを見抜くのではなく、全員が全員なりの「真実」を持っています。ぜひ、一緒に事件の推理をして誰の推理に一番近いのか、考えてみてくださいね。