立川談四楼の傑作!
ひどい言葉を言われてもひどい目に合わされても、そばにいたいと思うあたりから、師匠に対する痛いほどの敬愛の念を感じられる『談志が死んだ』。
- 著者
- 立川 談四楼
- 出版日
- 2015-10-28
そもそも本作で描かれる立川談志とは、どんな人物なのでしょう。破天荒な行動や、江戸っ子のべらんめぇ口調で毒舌のイメージが強いかもしれません。彼の落語家としての評価は高く、5代目三遊亭圓楽、3代目古今亭志ん朝、5代目春風亭柳朝(柳朝没後は8代目橘家圓蔵)と共に「江戸落語若手四天王」と呼ばれるほどでした。古典も創作もこなし、理論と感覚の両面から落語に挑んでいたそうです。好き嫌いはともかく、彼の落語を聞いた人は口をそろえて天才、名人と認めたといいます。
そんな天才師匠が言った「破門」の言葉は、彼を敬愛し続ける弟子たちにとって、どれほどの衝撃だったのでしょう。それがたとえ病ゆえに発された「正気を失った」暴言だったとしても。
正気を失っても師匠なのかという部分が、えぐるように描かれます。重たくて息苦しいテーマですが、相変わらず談四楼の文章はリズミカルで読みやすいのです。それが逆に哀切を極めているのかもしれません。
立川談四楼の企みに、気づけるか
幼いころの弟の死、師匠である談志との出会い、弟子入り、真打試験に落ちて師匠に「でかした」と激励された話、落語協会脱会の大騒動などを描く『一回こっくり』。
- 著者
- 立川 談四楼
- 出版日
「生」と「死」という重たいテーマなのに、創作落語の内容とうまく絡ませていく構成の巧みさや文章のリズムのよさで、すらすらと読めてしまう不思議さがありました。「魅せる」「読ませる」という点において、ほんとうにうまい人だと思います。さすが言葉を仕事にしている方です。
大切な人を失っても、残された人間たちは生きていかねばなりません。どんなにつらくても時間は過ぎていく……と自分の中に諦めのような決心がついたとき、それが創作落語「一回こっくり」に結実していきます。
「一回こっくり」は、人情噺に幽霊が出てくる変わり種です。談四楼の経験から創作したものなのだとか。
読後には、談四楼の声で「一回こっくり」を聴いてみたいなと心の底から感じると思います。
立川談四楼初の時代小説
貧乏長屋を舞台に、富くじで千両が当たった博打好きの左官・次郎兵衛が巻き起こすドタバタ劇『長屋の富』。状況や情景、感情などを表現する地の文がまったくない、全篇会話で描かれる作品です。
- 著者
- 立川 談四楼
- 出版日
江戸弁での会話のテンポが軽妙です。落語に詳しくなくても聞いたことがあるような噺のくだりが随所に登場し、かなり楽しめる展開です。落語に詳しい人ならさらに、にやにやしてしまうはず。
長屋の人たちは、「大家と言えば親も同然」と世話好きの奥さんだったりと、落語あるいは昔のホームドラマのような人物配置です。
台詞だけでぽんぽんと物語は進み、内容も重くありませんので、難しく考えずに楽しめる作品です。