ワケあり捜査官たちの活躍、そして葛藤
ちょっとクセがあるけれど魅力的な『警視庁広域捜査専任特別調査室』の登場人物たち。警視庁刑事部に新たに設立された部署・広域捜査専任特別調査室「SRO」に在籍する7名は、室長の山根新九郎を含む調査官全員がキャリア(幹部候補生)でした。しかし彼らは全員ワケありだったのです。
- 著者
- 富樫 倫太郎
- 出版日
- 2010-11-20
アメリカで、犯罪行動心理学やプロファイリングを学び、階級は警視長というエリートなのに昆虫ヲタクの独身室長・山根。自宅がゴミにまみれているが、外では完璧な警視正(けいしせい)・芝原。マル暴風の風貌ながら、情にもろく部下思いの熱い男・尾形。レイバンのサングラスを愛用する「警視庁のダーティハリー」針谷。個性的な登場人物が揃っています。
ワケありエリートを集めた「SRO」の設定も展開もおもしろく、文章や事件解決過程の描写が巧みなので、さくさく読めるミステリー作品となっています。シリーズは番外編を含めて7作出ています。一度手に取ったら、一癖も二癖もあるけれど、ずば抜けた捜査能力を持つ登場人物たちに、また会いたくなること請け合いです。
富樫倫太郎の警察小説!
杉並中央署生活安全課に新設された「何でも相談室」=通称0係は、役立たずばかりを集めた島流し専用の部署です。そこに科捜研から異動して来た小早川冬彦は、空気が読めないマイペースで無礼な警部。係員たち、特に叩き上げ刑事・寺田高虎のからは煙たがられていますが、プロファイリング能力だけは本物で……。
- 著者
- 富樫 倫太郎
- 出版日
- 2016-01-09
冬彦は空気が読めないだけでなく、オタク気質もあり、警察の隠語や府庁を誰かが使うといちいち説明したりもするのです。実際に近くにいたら、いらっとするだろうなと思えるキャラクターですが、とんでもない知識量と観察眼を持ちます。空気は読めないけれど、事件に絡んでくる関係者の行動や考えはわかるのかもしれません。
迷子をくり返す幼い女の子や、徘徊する老婆、立小便……などの日常に近いちょっとした事件が、放火、ヤクザ、カジノといった大事件と絡み合う展開です。
シリーズ化しているだけあり、単独の警察小説として充分おもしろい本作。ただし富樫綸太郎のもうひとつのシリーズ『SRO』との連動要素も気づくと、さらに楽しめる1作になるでしょう。
コメ相場で成り上がる男の成長物語
大坂を舞台にした男が困難を乗り越え、工夫を重ね、成長していく物語『堂島物語』。
江戸時代、貧しい小作農の息子の吉左は16歳のときに、自分が生んだ子を跡継ぎにしたがる継母との不仲もあり、大坂の米問屋・山代屋に奉公に出ることになりました。遅い奉公のはじまりだったため、先輩たちは年下も多く、いじめられます。店からも、下男のような扱い方をされるのでした。しかし生来勤勉な上に度胸もあり、相場観も持っていた吉左。彼は隠居である月照の指導のもと、非公認のコメ相場取引で頭角を現しはじめ……。
- 著者
- 富樫 倫太郎
- 出版日
- 2007-12-15
本作では、相場の売り買いを見極めるシーンが多く出てきます。自分なりのチャートを作ってみたり、米農家を巡って様子を確かめたりといった描写が的確なので、相場取引に参加しているかのような気持ちになることでしょう。
足りない資金を補うために得意先から借りて相場に挑み、失敗したら大事になるという緊張感が作品を引き締めています。キャラクターも活き活きしていて、文章も読みやすいですから、相場という言葉を聞いて「難しそう……」と尻込みせずに読んでみてくださいね。