山本一力が送る、現代人にも響くメッセージ『大川わたり』
銀次は27歳になったばかりですが、ひとつきに2両も稼ぐほどの腕のいい大工でした。
彼は失意の中で博打にはまり、半年で20両にもおよぶ借金を作ります。借金返済で持ち金はすべて取り上げられ、仲間を賭場に引き入れるように強要されるようになります。やがて、賭場に引き込んだ鏝屋の一家が夜逃げをし、銀次は腹を決め……。
- 著者
- 山本 一力
- 出版日
あとがきによると、山本一力が生まれてはじめて最後まで書き通した処女作をあらゆる部分で書き直しをして、時代考証の誤りもできるだけ訂正した作品なのだそうです。
プロットが巧みなのか、冒頭から引きこまれます。 銀次は挫折しても、周りの仲間たちの助けで立ち直って必死に生きていこうとします。読者たちには人を信じ、困難に逃げずに立ち向かうことがいかに大切かを教えてくれるのです。
現代社会に疲れているひとにこそ読んでほしい1冊です。
凛として生きる女将を描く『梅咲きぬ』
江戸中期の深川の料亭・江戸屋が舞台です。この店の女将は、代々「秀弥」という名前を襲名しており、現在は三代目。四代目を継ぐ一人娘の玉枝が主役となるお話です。
- 著者
- 山本 一力
- 出版日
- 2007-09-04
物語は、玉枝が6歳のときからはじまります。老舗料亭の女将になるべく、周囲に厳しく優しく温かく見守られ育っていきます。彼女は思いやりと気配り、礼儀、物事や人間の質を見抜いていく力などを養いつつ、15歳で若女将となるのです。
江戸深川の人情を描く小説であり、子育て小説でもあるように思えました。節の最後に「このことを、玉枝は九歳の秋にわきまえた」「玉枝はこの日まで思いもしなかったことを胸に刻みつけた」というように、玉枝の成長の様子が記録されているせいでしょうか。
若女将となっていく過程で、ある藩の武士と恋に落ちますが、身分違いですから結ばれることもなく、それでも思いを寄せ合い、お互い結婚話に見向きもしません。結局は別れざるを得ないのですが、それさえもずば抜けた女将としての器量の象徴のように思えました。
凛と前を向いて生きていく玉枝をぜひ見守ってほしいと思います。
山本一力のデビュー作!『損料屋喜八郎始末控え』
喜八郎は、上司の不始末の身代わりとなって同心(下級役人)の職を辞し、庶民相手に鍋釜や小銭を貸す、少し裏事情のある損料屋となります。支給米を担保にして、金繰りに困った旗本や御家人たちに金を融資する札差が盛んであった時期に、喜八郎は米屋の身代わりとなったり、元上司の北町与力・秋山の懐刀となったりして、巨利を貪る相手に渡り合っていきます。
- 著者
- 山本 一力
- 出版日
喜八郎単身での活躍ではなく、彼の手足となる存在がいるという構成や、喜八郎と料亭の女将とのロマンスなどが楽しめる作品です。シリーズになっていて3冊刊行されていますので、設定の妙をぜひ楽しんでもらいたいなと思います。