こんな寂しさはどう受け止めたらいいんだろう
- 著者
- 西 加奈子
- 出版日
- 2009-12-09
織田作之助賞大賞受賞作です。
通天閣がすぐ近くに見えるワンルームでひっそりと暮らしている40代なかばの中年男は、工場で毎日単純労働をして、仕事が終わればいつもの中華店で塩焼きそばを食べ、風呂に入って眠るだけの日々を過ごしていました。
20代の後半の女は、映像作家になるためニューヨークに行っている恋人の帰りを待ちながら、不安で寂しく暮らし、夜のスナックで働いています。
そんなふたりの姿が淡々と交わることなく描かれていきますが、やる気のないふたりが生きる意味を見出したあたりからぐんと面白くなるのです。そのあたりのギアチェンジが上手い作家だなあと感心します。
きっとラストのふたりの一瞬の交錯に、「うわあ、やられた!」と思いってしまうことでしょう。
大阪を愛する西加奈子の真骨頂、ぜひお楽しみくださいね。
西加奈子の作品をお得に読む
「共感」ではなく「共有」できる物語
- 著者
- 西 加奈子
- 出版日
- 2015-09-07
河合隼雄物語賞受賞作品です。
恋愛も友情も味わうことなく生き、真っ暗な中で「ふくわらい」をすることを趣味にする編集者の鳴木戸定は、愛を語ってくる盲目の男性や、自分を表現することに必死なレスラーと出会い……。
幼いころ、紀行作家の父とともに過ごした旅先で、目を覆うような特異な体験をしたことがある彼女は、 世間と自分との間にある「壁」を強烈に意識するようになっていました。
そのため孤独を選んでいたのですが、ふたつの出会いを経て、世界は彼女が想っているよりも優しくて愛すべきものであると気づいていくのです。
同時にプロレス小説でもないのに、西加奈子のプロレスに対する愛情に圧倒されてしまいます。
しっくりこない部分も主人公のエキセントリックさも全部含めて、この作品のカラーとして感じてみてください。きっとふわっと優しい気持ちになれると思います。