恩田陸の初心者向けおすすめ作品ランキングトップ6!

更新:2017.4.11

『夜のピクニック』などで高い人気を博している恩田陸。彼女の作品は膨大な読書歴と実体験に基づいており、ジャンルは実に広範です。今回は、恩田陸の物語をまだ読んだことがないという方向けに、おすすめ6作品をランキング形式でご紹介します。

落ち着いた小説が好きです。『博士の愛した数式』の小川洋子さんが大好きです。
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オマージュ作家:恩田陸

恩田陸は1964年に宮城県仙台市に生まれました。その後は父の仕事の影響で各地を転々とするようになり、大学は早稲田大学教育学部へ進学。卒業後は生命保険会社で働くようになりますが、激務の末に入院することに。幼少期から本を読むことが好きだった彼女は、いつか遠い先に作家になれたら……という希望を持っていました。しかし、本を読むことも書くこともままならない生活に嫌気がさし、退職します。

1991年、退職後に書いた『六番目の小夜子』が日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、その翌年に刊行。突然、念願の作家デビューを果たすのです。いきなりデビューして作家としての修業期間に不安があったため、いろんな作品をたくさん手がけようと一念発起すると同時に、生活のために不動産会社の派遣社員としても働きだしました。作家として安定してきた1997年からは、完全な専業作家として執筆を続けています。

小さい頃から本を読み続けてきた恩田陸。作家になると従来のように読書を楽しめなくなってしまうという方もいらっしゃいますが、彼女は本を読むということが何よりも好きで、本当に色々なジャンルの本を読んできたそうです。多くの名作に触れ、影響を受けてオマージュとして自分の作品に落とし込むそうで、時には話のタネだけでなく装丁なども参考にするんだとか。

彼女の作品は、実際にある風景から物語を創り出していく特徴があります。電車やバスに乗って旅行をして、自分の目で見たものから紡ぎだしていく物語は、恩田陸の果てしない読書歴とその眼に映る情景の融合なのでしょう。
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6位: 恩田陸のデビュー作!『六番目の小夜子』

恩田陸の記念すべき第1作目です。第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作に残ります。大賞とはなりませんでしたが、翌年に刊行されるにいたりました。

物語は、とある高校が舞台です。学校というのは、それぞれに都市伝説やちょっと変わった伝統や行事などがあるものですよね。この高校にも他の学校にはない、一風変わった行事がありました。その行事は「サヨコ」というもの。

著者
恩田 陸
出版日
2001-01-30

この行事はある女学生が「サヨコ」となって決められた行動を起こす、というものでしたが、先生や学校に公式に認められたものではなく、生徒たちの間でひそかに受け継がれているのです。しかも「サヨコ」はその正体を知られてはならず、独自に隠密行動をとらざるを得ません。「サヨコ」という存在自体は確かにあるのに、それが誰だかわからないのです。

代々「サヨコ」となるのは一人だけであり、今の「サヨコ」は6代目。「サヨコ」は自分の役割を果たして過ごしていますが、ある日、この行事に異変をもたらす人物が登場します。津村沙世子という聡明でかわいらしい女の子が転校してくるのですが、ここから「サヨコ」の伝統に一筋の影がさすことになるのです。

学校というのは、なんとも独特な雰囲気のするところです。昼間は多くの人で賑わっているのに、夜になると誰もいなくなって恐怖に包まれてしまいます。昼間は青春、夜はホラー。「サヨコ」の伝統にも、青春の要素とホラーの要素を感じることができます。

本作はジャンル分けの難しい作品ですが、恩田陸が自らの豊富な読書歴を料理し、ジャンルの融合をはかった作品として、作者の今後の執筆像がうかがえるものになっています。デビュー作として、作者の可能性を示唆するものになっていると言えるでしょう。

また、本作品はテレビドラマ化もされていますが、原作と主人公が変わっていたりするので、別の作品として捉えたほうがいいかもしれません。

5位: 恩田陸もかつては、夜ピク高校生『夜のピクニック』

通称「夜ピク」と呼ばれ、恩田陸の代表作品として親しまれている作品です。吉川栄治文学新人賞、本屋大賞にも選ばれ、映画化もされています。

物語はというと、歩いて歩いて歩き続ける……というお話。作中では「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね」(31ページ)というセリフも出てきます。『夜のピクニック』というタイトル通り、ひたすら夜通し歩くということのなにがそんなに特別なのか。そこが本作品の肝です。

著者
恩田 陸
出版日
2006-09-07

主人公の西脇融と甲田貴子の通う北高の名物行事「北高鍛錬歩行祭」では、朝の8時から翌日の朝8時まで4時間の仮眠を除き、歩き続けます。80キロほどある道のりを一日かけて完歩するのですが、60キロまでは団体歩行、残り20キロでは自由歩行となって、それぞれが思い思いにゴールを目指すことになります。

口ではかったるいと言いながらも、3年生にとっては学生生活最後となる行事。自由歩行では、運動部の学生は少しでもいい順位になろうと走ったり、ひそかに想いを寄せる純情乙女は告白の機会を探ったり、果てはある事件の犯人捜しをしたり、正体不明の少年が混ざったりと奇想天外な展開をみせます。様々な学生による様々な思いが錯綜する行事ですが、中途半端に終われない、燃え尽きたいという各々の熱情がそこにはあるようです。

ごく単純に言えば、本当に夜歩くだけというお話ですが、普段の学校生活では絶対にありえない状況だからこそ、いつもは隠している本当の姿や気持ちといったものが表に現れてくるのかもしれません。学生時代という一瞬の輝きを感じさせてくれるお話です。

この「北高鍛錬歩行祭」ですが、茨城県にある高校の「歩く会」という夜通し歩く行事をモチーフにしています。実は恩田陸はここの卒業生で、実際に夜のピクニックをしていたそうです。そう思って読んでみると、登場人物たちの描写は恩田陸の実際に見てきた光景であり、なんだか生き生きとしたものを感じさせます。

また関連するお話として、歩行祭前日の話である「ピクニックの準備」が『図書室の海』という本に収録されています。こちらも読んでみると面白そうですね。
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4位: 華麗なる常野一族、ここにあり『常野物語』シリーズ

本シリーズは恩田陸が手がけたファンタジーの連作小説です。全部で三作となっており、刊行順に『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』となっています。『蒲公英草紙』は直木賞の候補作にもなっています。

物語の中心となるのは「常野一族」という、不思議な力を持つ一族。予知能力、記憶力、地獄耳、長寿など一人一人が特殊な能力を持っています。彼らは群れることなく、各地に散り、権力にその力を資することなく暮らしています。その力を使って人々に貢献し、ある時は悪に立ち向かっていくのです。

著者
恩田 陸
出版日

第一作である『光の帝国』は短編集になっており、常野一族の様々な人物についてのお話がまとめられています。常野一族とはどんな人たちなのかを知るのにぴったりの1冊です。二作目となる『蒲公英草紙』と、三作目の『エンド・ゲーム』はそれぞれが一本のお話になっていて、温かな感動とスリルを醸し出しています。

それぞれがまとまっているため、どれから読んでも話のつながりが分からなくなるようなことはありませんが、常野一族の全体像を把握するという意味でも刊行順に読むことをおすすめです。

また「常野たより」という集英社の特設ホームページがあり、作者のインタビューなども見ることができます。

3位: 恩田陸が描く、謎多き三月の国の物語『麦の海に沈む果実』

本作品は関連作品が多く、そのうちの基礎となるお話が収録されています。同等の長編として『三月は深き紅の淵を』『黒と茶の幻想』『黄昏の百合の骨』、短編作品として「睡蓮」「翡翠の夢、水晶の朝」があります。シリーズとして公式に刊行された作品ではありませんが、ところどころにつながりが見えてきます。

著者
恩田 陸
出版日
2004-01-16

物語の舞台は、北海道の湿原にひっそりと建てられた高校です。ここには3月以外の月に転校してきた生徒は学校に破滅をもたらす、という噂がまことしやかに語り継がれていました。そんな奇妙な高校に、2月の最後の日に主人公である理瀬が転校してくることになります。ある事件をきっかけに記憶を失くしてしまった理瀬は、強制的に転校させられたのです。

自分のことも周囲のことも分からない理瀬ですが、学校では次々と不可解な事件が発生して生徒がひとり、またひとりと謎の失踪を遂げていきます。この失踪は理瀬が破滅をもたらしたということなのか、そして理瀬の記憶は戻るのか……。気になるところですね。

関連作品が3作あり、本作品は2番目に刊行されたものですが、これらは読む順番が非常に大切です。他の作品は後日談や登場人物の入り組んだ話になっているので、それらの前提となるお話として『麦の海に沈む果実』を読んだ方がいいでしょう。


学校ものを描き出すことの多い恩田陸ですが、『六番目の小夜子』や『夜のピクニック』などとは一線を画します。本作品の特徴は、文化祭や歩行祭といった行事と普段の学園生活ではない、どこかこの世のものとは思えない、不思議な感じのする閉ざされた学園生活です。全寮制の学校ということもあるのかもしれませんが、校長先生から生徒たちに至るまで、俗世からかけ離れた雰囲気は他に類をみません。萩尾望都の『トーマの心臓』をオマージュしたような感じです。

ちなみにタイトルの『麦の海に沈む果実』とは、作中でとある人物が主人公に贈る詩の題名であります。

2位:直木賞を受賞した恩田陸の新代表作『蜜蜂と遠雷』

国際ピアノコンクールに挑むコンテスタント(演奏者)たちと、彼らを取り巻く人々の物語です。

優勝すると、世界最高峰のS国際ピアノコンクールをも制することが出来る。そんなジンクスがささやかれる芳ヶ江国際ピアノコンクールを舞台に物語が繰り広げられます。描かれるのは、このコンクールの出場者、風間塵、栄伝亜夜、マサル・C・レヴィ=アナトール、高島明石の4人と彼らを中心とした熱い戦い。彼らの他にも多数の出場者がいる中で、一体誰が優勝を手にすることが出来るのでしょうか。

著者
恩田 陸
出版日
2016-09-23

まず、この作品の魅力は確立されたキャラクター達にあります。特別なピアノ教育を受けたこともない風間塵は伝説的なピアニスト、ホフマンが認めた才能をもつ16歳の少年。母を亡くしてからピアノを弾けなくなってしまった栄伝亜夜は、かつては天才と呼ばれた音楽大学に通う女子大生。マサル・C・レヴィ=アナトールは音楽の名門ジュリアード院在学で“ジュリアードの王子様”と呼ばれます。そして取り上げられる4人の中で最年長なのが高島明石28歳。彼は、音大卒業後プロにはならず、仕事をし、家庭を持ち音楽界からは離れていました。そんな彼は音楽奏者として感じている怒りをぶつけるつもりでコンクールに挑みます。

そんな彼らが熱く真っ直ぐコンクールに挑む姿に心打たれるのではないでしょうか。そして彼ら以外の周りの人間もしっかりキャラクターとして成り立っています。読み手によって感情移入してしまうキャラクターは様々で、それもこの作品ならではの楽しみになるでしょう。

また、恩田陸の表現力もこの作品の魅力といえます。言葉選びが洗練されていて無駄な表現がないためとても読みやすいのです。演奏シーンでも、その場の空気や緊張感がしっかり伝わってきます。演奏される音楽が聞こえてくるかのようにとてもイキイキと描かれています。

クラシック音楽をあまり聴かない人でも読みやすい内容です。キャラクター達の熱い思いに入り込み、そしてコンテストの結果が純粋に気になり、どんどんページをめくってしまうのではないでしょうか。またシーンごとに使用される楽曲をBGMに読み進めるのも面白いです。ぜひ一度お手にとってみてください。

1位: 恩田陸オマージュの神髄『チョコレートコスモス』

本作品は演劇をめぐるお話です。主人公は、役者の父と歌舞伎役者の母の間に生まれた東響子。芸能の道一筋に育てられた響子の役者としての能力はもちろんのこと、容姿端麗、人気抜群と非の打ちどころのない人物です。そしてもう一人の主人公が、一見なんの変哲もない、大学の演劇研究会に所属する佐々木飛鳥です。飛鳥は響子のような名門の血筋ではありませんが、演劇研究会への入団試験の際には、未経験ながら、即席の演技で類まれなる才能を見せつけました。

ズブの素人として役者街道を歩きだした飛鳥は、様々な苦難を抱えることになりますが、響子は響子で役者の名門一家としてのストレスや悩みを抱えているのでした。そんな二人があるオーディションで出会い……。

著者
恩田 陸
出版日
2011-06-23

演劇漫画の名作とされる『ガラスの仮面』のオマージュ小説です。漫画では描き切れない登場人物の心理描写がかなり書き込まれていたり、絵がない分、読者は想像力をかきたてらりたりするという面白さがあります。

また、『ガラスの仮面』の最大の魅力であるオーディションなどの演技合戦という要素を完璧に抽出し、その他の余計な要素を省き、ある意味では原作より面白いオマージュ小説と言ってもいいように思います。

過去の作品をオマージュすることに関して「気持ちいいって感じるストーリーは、古今東西同じであって、見せ方を変えているだけという認識もあります」と恩田陸は語ります。

本作品はそんな作者が手がけたオマージュのひとつ。普通の作品よりも、ある意味作者の手腕が問われた稀代の作品ということで第1位にあげさせていただきました。
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以上、初めて恩田陸の小説を読む方に向けたおすすめランキングでした。今回のランキングでは学校を舞台にした作品が多くなりましたが、作品によってジャンルや世界観が異なっており、ひとつの場所でこれだけ書き分けられるのかと、作者の奥深さを感じられることでしょう。様々なジャンルの作品を書いている方なので、ぜひ色々と読んでみてくださいね。

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