登場人物たちの姿を生き生きと描き、その巧みな文章構成で読者を引きつける、中島京子。これまで数々の文学賞に輝き、直木賞を受賞した『小さいおうち』は映画化もされ話題になりました。そんな中島京子作品を6作、厳選してご紹介します。

- 著者
- 中島 京子
- 出版日
- 2012-12-04
- 著者
- 中島 京子
- 出版日
- 2015-05-27
- 著者
- 中島 京子
- 出版日
- 2010-09-17
- 著者
- 中島 京子
- 出版日
横浜で中学校の教師を勤める久保耕平は郷土部の顧問をしていますが、部員は4名しかおらず実質は赤堀というやる気のない男子生徒1人だけです。休日に実家に帰省した久保は、彼のひいおじいさんが保管していた書類の中から「イトウ」という人物の手記を見つけます。
イトウとは伊藤鶴吉という明治時代の日本の通訳の草分け的存在であることがわかり、久保はイトウを郷土部の研究材料にしようと思うのですが、手記は途中で終わっていました。そこで久保はイトウの孫娘の娘にあたる田中シゲルという女性に会いに行きます。シゲルは男性向け漫画の原作者をしており、シゲルの漫画のファンである赤堀はイトウの研究に乗り気になっていきます。
しかし、シゲルの母はシゲルが物心つかないうちに父と自分を捨てて家を飛び出しており、心優しい義母に育てられたシゲルは実母の存在を封印するように成長したため、最初は久保の話に全く興味を示しませんでした。ところが久保から渡されたイトウの手記を読むうち、シゲルはイトウという人物に強くひきつけられていくのです。
- 著者
- 中島 京子
- 出版日
- 2008-03-14
手記はイトウが自らの生い立ちを回想するところから書かれていました。イトウは武士であった父を早くに亡くし、母はイトウを養育するために武士の妻の誇りを捨て横浜の商家で女中となり、辛い現実を忘れるため毎晩酒浸りになってしまいます。
そんな境遇の中イトウは横浜に来る欧米人から独学で英語を学び、成長して通訳となるのです。しかし欧米人の日本を露骨に見下す態度に不快感を覚えており、ハリーズという植物学者に雇われて植物採集の旅をしていた際、彼のあまりにも傲慢な態度に嫌気がさし途中で横浜に戻ってきてしまいます。そして次の仕事として得たのが、イギリス人の女性旅行家I・Bの通訳として彼女の東北を巡る旅に同行することでした。
I・Bは小柄ですが体格が良く、年齢はイトウの母に近い年頃でしたが、他の欧米人と違い日本を愛し日本人に敬意を払うI・Bと接しているうち、いつしかイトウの心に恋心が芽生えます。しかしI・Bはイギリスに帰らねばならず、そこで手記は途切れていました。イトウの恋の結末を知るため、シゲルは自分を捨てた実母と連絡を取ることを決意するのです。
本作は実在の人物にヒントを得て描かれたフィクションですが、本当にこんな事があったのではないかと思われるような作品です。現代ではすでに失われた日本の風景の中を旅するイトウとI・Bは、現代を生きる久保やシゲルよりもはるかに生気に満ち鮮やかに描かれ、読む者の心を美しい世界へと引き込んでくれます。
- 著者
- 中島 京子
- 出版日
- 2013-11-22
中島京子のおすすめ作品を6つご紹介しました。どの作品も読み始めたら、作品の世界に引き込まれる傑作ばかりです。ぜひ読んでみてくださいね。