数多くの長編小説を書き上げた山崎豊子。初期は大阪の風俗を描き、後期は社会問題を取り上げた作品を多く発表しました。彼女の作品は綿密な取材力で企業と経済を描いたものが多いです。そんな山崎豊子の作品のおすすめを8作ご紹介します。

このヒロインの多加が吉本興業の創業・吉本せいをモデルにしたと言われているのだそうです。そう思って読むからなのか、登場人物たちの話す大阪弁が実に活き活きと軽快に飛び跳ねているように感じられます。ほんとうに楽しげなのです。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 1961-08-17
弓成は一審では無罪判決を得ますがニュースソースを秘匿できなかったとして新聞社を辞しペンを置きます。二審では有罪判決を受け、実家の九州に帰り家業を継ぐことになります。慣れない業務で結局立ち行かなくなり、その後も荒みに荒んで沖縄まで流れていってしまうのです。その沖縄は沖縄返還密約事件の舞台そのものでもあります。米軍基地をめぐる諸問題が多く残存する沖縄が登場することで、物語はもう一つの展開を見せることになるわけです。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 2010-12-03
血の繋がりの怖さやそれまで見ていた人物の表の顔とは別の顔などが暴かれていく過程は見事で、思わず唸ってしまいます。それは山崎豊子のミステリーを越えるような設定の綿密な伏線の張り方にあるのではないでしょうか。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 2002-04-23
大学病院に勤務し、ともに優秀だが、目指すものや考え方の対照的な財前五郎と里見脩二を登場させて、彼らを通して医学界の腐敗に鋭くメスを入れたといっていい社会派小説です。どちらのキャラクターに感情移入するかによって、感じ方、読み取り方も違ってくるのではないでしょうか。あるいはサービスを受ける患者としてどちらのお医者さんに看てほしいか。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 2002-11-20
勧善懲悪の逆をいく展開を見せる作品です。悪ばかりが良い目を見る印象が残るかもしれません。それなのに、嫌な気持ちにならず読みきれてしまうのは山崎豊子の取材力と筆力の賜物なのでしょう。読んでいて、圧倒されます。この作品を描く取材には半年を費やしたそうでその読感も納得のものです。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 1970-05-27
きちんと取材をし、正確で詳細な描写をしている作品。そのせいか、描かれている社内闘争、労働組合、左遷などがいたたまれないくらい胸にしみます。特に事故の部分は壮絶さが容易に脳裏に浮かんでくるほどリアルに描かれています。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 2001-11-28
山崎豊子はこの作品を書くに当たって膨大な量の取材をしたといいます。中国で戦争孤児となってしまった人たちからもたくさん話を聞いただけあって、フィクションでありながら実話のような内容です。この作品は忘れてはいけない戦争の傷跡を私たちに突きつけます。若い人たちにも受け継いでいきたい作品の一つといえるのではないでしょうか。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
花巻朔太郎は潜水艦乗りとして、海上自衛隊潜水艦「くにしお」に乗艦しています。朔太郎は各種訓練を重ね、ようやく潜水艦乗りとして活動できるようになってきたところです。
その「くにしお」が展示訓練において、遊漁船と衝突し、死亡者、行方不明者を出してしまいます。展示訓練は海上自衛隊の役割を広く国民に知ってもらうことを目的に年に一回、一般に公開される催しです。衝突事故を起こした「くにしお」と乗組員は、海上保安庁や運輸省に徹底的に調査され、朔太郎をはじめ乗組員たちは潜水艦乗りとしての誇りを失いかけます。
そんなとき、朔太郎は父に会いに行きます。父は元帝国海軍少尉でしたが、終戦後は軍人であった頃の話は一切しませんでした。父は真珠湾攻撃の直前、乗っていた特潜艇が操縦不能となり、太平洋戦争で最初の捕虜となっていたのです。そんな父から覚悟を問われた朔太郎は改めて今後の進路を考えるのです。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 2016-07-28
山崎豊子が2013年9月に亡くなったため、本書『約束の海』は未完の絶筆となります。第一部潜水艦くにしお編に続き、第二部は朔太郎のハワイ派遣と父の足跡を辿る旅、第三部は艦長になった朔太郎が東シナ海で事件に遭遇するという構想でした。前段で息子の活動と苦悩を採り上げ、第二部以降では太平洋戦争最初の捕虜となった海軍少尉を中心に物語を組み立てていたようです。惜しくも山崎豊子は亡くなりましたが、遺されたストーリー構想はダイナミックに物語が展開する作品として期待されていました。
反権力、反体制の物語が多い山崎ですが、本作品では冷静に海自潜水艦サイドを貫いています。そして続編では、捕虜となった軍人の生きざまを通し、改めて今後の自衛隊の在り方と平和の関係について問いかける構想でした。
完成した暁にはきっと大作となったであろう本書が、未完となってしまったことが残念でなりません。
大阪・船場からはじまり世界や社会を舞台にした物語を生み出していった山崎豊子。企業や経済などと聞くと難しいと考えてしまうかもしれませんが、的確な表現で読みやすい作品ばかりです!