小学校教師から児童文学作家となったはやみねかおる
はやみねかおるは、三重県出身の男性小説家。小学校教師として、本嫌いの子供に本を薦めるうちに自分でも書き始め、『怪盗道化師』で講談社児童文学新人賞に入選し、デビューしました。
小さいときから本が好きで、大量に読むため読む本がすぐになくなってしまい、だったら自分で書いて読めばいい!と思って書き始めたのが小説家を目指したきっかけだそうです。
作家として活動する傍ら、自身も月に40~50冊の本を読むというはやみねかおるの引き出しは幅広く、ジュブナイルミステリーに始まり、青春小説、冒険小説、さらにはSF、ファンタジーとそのジャンルは多岐にわたります。
はやみね作品には、知っていると思わずくすりとしてしまうような様々なパロディが随所に散りばめられています。そして、作品同士の世界観や登場人物を共有しているため、作品を読んでいればいるほどおもしろい!それがはやみねワールドなのです。
はやみねかおるが描く探偵シリーズ。みんなを幸せにする名推理
はやみねかおるといえば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。三つ子の中学生、岩崎亜衣・真衣・美衣と夢水が中学1年生から3年生になって卒業するまでに、様々な事件に遭遇し解決していく、はやみねかおるを代表する大人気シリーズです。
このシリーズの最大の魅力はなんといっても、「人が死なないミステリー」だと思います。人が死ぬからミステリーは苦手という方でも読みやすく、入門書としてはぴったりな作品ではないでしょうか。
- 著者
- はやみね かおる
- 出版日
- 1994-02-15
名探偵の仕事は、難解な謎を解くことではなく、人が幸せになれるように事件を解決すること。名探偵のいるところには必ず事件が起こります。でも、大丈夫です。夢水清志郎は必ず、みんながしあわせになるように事件を解決してくれます。
おすすめは、第一作『そして五人がいなくなる』。夏休みの遊園地で「伯爵」と名乗る怪人が、天才児四人を次々に消してしまいます。消失劇の真相に辿り着いた夢水は、「謎はわかった」と言ったきり、なぜか謎解きをやめてしまいます。
すべての謎が解き明かされた後で、捜査にあたっていた上越警部が言った、「長いこと警官をやってると、犯人を逮捕することと事件を解決するってことが、同じに思えてくる。でも、ほんとうはそうじゃないんだな。いくら犯人を逮捕しても、解決しない事件もある」という台詞に、夢水が謎を明らかにしようとしなかった事件の顛末が集約されているように思います。さて、夢水の優しさとは何だったのでしょうか。
自信家で自意識過剰、自分さえ良ければ周りがどうなってもいい、そんなどうしようもない性格の夢水が、どうして「名探偵」と呼ばれるのか。その所以がこの本を読めばわかります。みんなが幸せになれる夢水の謎解きには、読み終わった後に満ち足りた幸福感を残してくれます。
はやみねかおるの作品をお得に読む
怪盗の美学と浪漫が詰まった人気シリーズ
神出鬼没の大怪盗・クイーンと、パートナーのジョーカー、人工知能のRDが飛行船トルバドゥールで世界中を駆け巡り、華麗に獲物を盗み出します。本シリーズの魅力はなんといっても、強烈な個性を持ったキャラクターたちにあると思います。
まずクイーンが、「怪盗」という言葉を聞いて一般的に思い浮かべるイメージとは逸脱した存在です。クイーンの趣味は猫のノミとり、電話での悩み相談、通信販売など、怪盗でなくてもとても変わっています。さらに、「人生に大切なのは、C調と遊び心」という口癖のとおり、自由奔放な性格で怪盗の仕事も自分の好みに合わなければ半年に一度しか仕事をせず、ジョーカーやRDを困らせてばかりいます。
- 著者
- はやみね かおる
- 出版日
- 2002-03-15
その姿は、およそ怪盗らしいものではありませんが、ひとたび「怪盗の美学」を満足させる獲物を見つけると、犯行前には必ず予告状を出し、持論に則って大胆不敵に獲物を盗み出します。その鮮やかな手口や、キャラクターたちのユーモアに富んだ会話は痛快で小気味よく、冒険小説と呼ぶに相応しいものです。
そして、行く先々で出会うICPOや秘密結社、さらには殺し屋集団など、個性豊かな敵との財宝をめぐる手に汗握る攻防戦には、謎解きとはまた違ったミステリーのおもしろさがあります。
おすすめは、第四作、『怪盗クイーン、仮面舞踏会にて』。正体不明の秘宝・ピラミッドキャップを巡って、怪盗や探偵卿、そして、謎の秘密結社と様々なキャラクターの思惑が交錯します。本作で登場する伝説の大怪盗にして、クイーンのお師匠様である皇帝との師弟対決は必見です。
ドイツの古城で行われる優雅な仮面舞踏会。繰り広げられるお祭りのような賑やかさは華やかな怪盗小説そのものです。舞台がヨーロッパというのもいかにも、らしいという気がします。なぜピラミッドが作られたのかの謎が解き明かされる、本書の後編にあたる『怪盗クイーンに月の砂漠を』もあわせて読むと一層おもしろいです。