3位: 山内マリコによる、結婚がテーマの痛快物語
男と女の感覚の違いをコメディタッチに描き、面白おかしい世界観を見せながらも、どこか考えさせられる痛快短編集です『かわいい結婚』。表題作「かわいい結婚」をはじめとした、3編の物語が収録されていて、地方都市における「結婚」について焦点が当てられています。
- 著者
- 山内 マリコ
- 出版日
- 2015-04-10
『かわいい結婚』の主人公・ひかりは、29歳で結婚したことをきっかけに、仕事を辞め、専業主婦となります。これまでの人生で、家事などまったくしてこなかったひかりは、そこで初めてなにもできない自分に気がつきます。しかしあることをきっかけに、家事の仕方を勉強する機会を得たひかりは、どんどん家事を身につけていき、そこでふと思ってしまうのです。「この日々が一生続くのだ」と……。
その他、主人公の男が、ある朝目覚めると女に変わっていた『悪夢じゃなかった?』。2人の女が男を取り合うことになる『お嬢さんたち気をつけて』。この3つの結婚についての物語が、コミカルに綴られています。
男と女とでは、見ている世界や思考がまったく違うのかもしれませんね。そのため男女がわかり合うというのは、なかなか難しいものです。それでも、お互いがどうにか折り合いをつけ幸せになる努力をしていくのが、結婚というものかもしれないと考えさせられます。
ユーモアに溢れ、時折心にグサリとささる文章が印象的な、女性におすすめの作品です。
2位: さみしいときに読みたい短編集
11編のショートストーリーが収録される『さみしくなったら名前を呼んで』は、地方に住む女性や、地方から都会へ上京した女性を主人公に、葛藤しながら、悩みながら前へ進んでいく女性の心情を鮮やか且つ繊細に綴った短編集です。
都会に上京し、理想の生活を送っていても、どこか自信が持てない「ケイコは都会の女」。祖母とのかわいらしいごっこ遊びを思い起こす「昔の話を聴かせてよ」。周りに馴染めずにいる「孤高のギャル小松さん」。地方出身という後ろめたさを感じている女性や、現状に不満を抱き、都会に憧れる女の子たちが続々と登場します。
- 著者
- 山内 マリコ
- 出版日
- 2014-09-18
「遊びの時間はすぐ終わる」の主人公・「私」は、高校卒業後、地元から逃げるように東京へと上京しますが、まともな職にはなかなかつけないでいます。一方、親友だった加賀美は、高校の同級生と結婚。子供もでき、地元での生活を送っています。加賀美と再会し、東京が羨ましいと言いながらも、ゆったりと幸せそうな彼女の姿を見て、「私」の心情は揺れ動きます。
自分は特別な存在、なんでもできると思えるエネルギーがある10代。時がたち大人になり、それがただの若さだったことに気付いたとき、自分と真剣に向き合い、未完成なままの自分を認め、前を向く女性たちの姿に勇気をもらえることでしょう。
地方出身の方だったら、共感できる描写で溢れています。ふと疲れ、さみしくなったときには、この作品を開いてみてはいかがでしょうか。
1位: 山内マリコ、デビュー作
山内の原点ともいえる『ここは退屈迎えに来て』は、R-18文学賞・読物賞受賞作「16歳はセックスの齢」を含む8編の物語が収録された連作短編集です。閉鎖的な地方での暮らしに悶々としている若者たちの姿を斬新な表現力で描き、高い評価を受けました。
- 著者
- 山内 マリコ
- 出版日
- 2014-04-10
ある地方都市を舞台に物語は綴られていきますが、作品を通して「椎名くん」という男性が登場してきます。学生時代はスポーツ万能で、みんなからの憧れの的だった椎名くんは結婚して子どももいる、ごくごく普通の30歳の男性へと成長していきます。時代を遡りながら、様々な女性たちを主人公に描く物語の中に、椎名くんは度々現れ、読み進めるうちに、かつての人気者がどのような人生を歩んで今にいたるのか知ることになります。
いつも送り迎えをしてくれるからという理由で、好きでもない男と付き合う女性の憂鬱を描く「君がどこにも行けないのは車持ってないから」、頭の禿げた年上男性と体の関係を持つ女子高生の心情を綴る「ローファー娘は体なんか売らない」、16歳になったら処女を捨てたいと考える女の子を主人公に、若者のセックス事情を赤裸々に描く「十六歳はセックスの齢」など、狭い世界でもがく女性たちの姿には哀愁のようなものが漂います。
田舎の町には行くところもなく、なにをしていいのかもわからず、若さを持て余している男女がたくさんいることでしょう。切なさの滲んだ、若者たちの行き詰まった感情を言葉巧みに表現し、読みやすくリアリティを感じられる点がとても魅力的です。女性はもちろん、男性でも楽しく読めると思います。山内マリコという作家に興味のある方には、ぜひ1番に読んでもらいたい作品です。