森茉莉は、文豪にして軍医でもあった森鴎外の長女です。父鴎外の話や、身の回りを題材にしたエッセイは、独特の美学と感性で語られ非常に面白いです。 また、森茉莉の小説は耽美で官能的な世界観で、昔暮らしたパリでの生活の影響が色濃く出ています。森鴎外の娘というだけではない彼女の魅力を、これを機に体験していただけたらと思います。

その後のエッセイのみならず、小説にもしばしば出てくる、絶対的庇護者としての父のような年上の男性像。鴎外の影響の強さは生活の描写でも感じられます。
- 著者
- 森 茉莉
- 出版日
- 1991-11-01
他に「マリアはマリア」という日常エッセイでは、茉莉のおくる貧しい生活も過去の優雅な記憶と美しい描写で彩られ、身をやつす貴族のような貫禄すら感じさせます。
- 著者
- 森 茉莉
- 出版日
- 1992-07-03
また、本物のお嬢様であった彼女は、その経験をふまえて「贋ものの贅沢」をする者達、品性のない若者達に厳しい目を向けることも。
- 著者
- 森 茉莉
- 出版日
今の世なら物議をかもし出しそうな過激なエッセイですが、昔だからこそこの毒舌が怖れられながらも続けていけたのでしょう。
- 著者
- 森 茉莉
- 出版日
田村俊子賞をとったこの作品は、森茉莉の煌びやかなイマジネーションがいかんなく発揮されています。フランス貴族とのハーフであるギドウや、敬里という名前を持つにもかかわらず、ギドウにフランス風のパウロと呼び名をつけられた美少年など、少女漫画のような現実離れした綺羅綺羅しい設定は、最初は過剰に感じられても、読み進めるうちに気にならなくなってきます。
- 著者
- 森 茉莉
- 出版日
- 1975-05-02
男たちからの愛を貪ることで満足を得る魔性の女性モイラの半生と彼女を取り巻く男たちを描いた話です。
まずページを開いて驚くのは、その圧倒的な文字の量です。登場人物たちの心理や行動が緻密な描写によって、実に丁寧に細かく表現されていて、それがこの小説の魅力となっています。
生まれてすぐに母を亡くしたモイラは、父林作に溺愛されて育ちます。実業家として成功している林作は、贅を尽くしてモイラを自分の理想の女性に育てていくのです。
林作は日頃から「モイラは上等。モイラは善い子」と甘やかし、そしてその言葉はモイラの中で理由のない自信に育っていきました。
- 著者
- 森 茉莉
- 出版日
- 1996-12-01
『甘い蜜の部屋』というのは、林作とモイラの間にある父と娘の関係以上の恋人のような濃密な関係を表しています。
そんな関係でありながら、モイラがまわりの男たちを虜にしていくのを林作はむしろ満足気に眺めているのです。
モイラは16歳で結婚をしますが、夫となる天上もまたモイラの魅力に絡めとられてしまった一人です。天上は許嫁との約束を破棄してまで、モイラと結婚しました。しかし次第に離れていくモイラの心に耐えかねて、自らの命を絶ってしまうのです。
モイラが実家に戻ってくることを知った父林作は、ひっそりと微笑みを浮かべるのでした。
大正時代の上流階級の豪華な暮らしと、そこで成長していく美しい魔性の娘。世間の常識や道徳などを飛び越えた、父と娘の濃密な物語です。
これから森茉莉を読む方に向けて、読みやすく入りやすいものばかりを紹介しましたが、彼女の作品はエッセイや小説、翻訳などまだまだたくさんあります。感性豊かな永遠の少女の織りなす、華麗にして精神的貴族な世界をご堪能いただけたら幸いです。