三国志の代表選手、吉川英治作品!
日本人になじみの薄かった三国志を広く深く知らしめた、勧善懲悪の長編小説。日本では最も知名度が高い小説です。
- 著者
- 吉川 英治
- 出版日
- 1989-04-11
中国大陸を滔々(とうとう)と流れる黄河。そのほとりで一人の青年が川面を眺める場面から、物語は始まります。この青年こそ、主人公の劉備。彼は貧乏暮らしでしたが、病の母親に高価な茶を買うため、商人の船を待っていたのです。
初登場から誠実なイメージの主人公。黄河は中国の大河であり、その近くで「待つ」という第一印象は後々まで変わりません。戦は負けてばかりで世渡りも下手、ただひたすら「時を待つ」劉備。人望のある彼を中心に、関羽、張飛を始めとする豪傑、諸葛孔明など、綺羅星のごとき人材が集まり、動乱の時代にささやかな華を咲かせます。
吉川三国志は、蜀の劉備=正義、魏の曹操=悪のイメージを植え付けたともいわれています。その点では賛否両論ある小説ですが、入門としてはぴったりだと思います。読み始めたら最後、続きが気になって気になって、本が手放せなくなるでしょう。
ちょっと癖あり?シバレン三国志
エロチックな描写も出てくる本作。天下の覇者たらんとする男たちが、陰謀と策略を巡らせ、血みどろになりながら戦う世界。男達の絆の強さが力を込めて描かれます。一方、悲劇の美女・貂蝉をはじめとする女達は戦いの世界からはじき出され、破滅していきます。
- 著者
- 柴田 錬三郎
- 出版日
義兄弟の契りで結ばれた関羽、張飛が暗殺されたときの劉備の怒りの深さ。それは国を滅ばしかねない危険なものでした。孔明が理で説得し、趙雲が半ば脅すように説得しても、劉備は同盟国への戦を止めようとしません。結果的にはこれが、劉備自身の命を縮めることになります。
自らを信頼する主君・劉備に応えようとする孔明の誠実な生き方が、まぶしくも悲しいと感じる長編です。史実ではわかっているはずの男たちの運命が気になってしまい、辛い辛いと思いながらもやめられなくなる小説です。
孤軍奮闘するその後の孔明の姿と、蜀の運命は、続編『英雄 生きるべきか死すべきか』に描かれます。ぜひこちらも読んでみてくださいね。
読みやすい文章、含蓄のある言葉
読みやすい文章の中に、ときおり投げられる含みのある言葉。仮想キャラの言葉だからこそ、読者の心にすっと入ってきます。
三国志の時代をもたらしたきっかけは、黄巾の乱。その影には一人の女性——五斗米道のリーダー・張魯の母である少容——がいました。宗教によって国を安定させる意志を伝える部下たちは、それぞれの英雄の元で助言、画策を行います。もちろん魏も蜀も呉も例外ではなく、後漢の宮廷にも五斗米道の息のかかった人物が送り込まれていたのです。
- 著者
- 陳 舜臣
- 出版日
- 2004-02-01
少容は曹操と、どちらが人々の心を得ることができるか、賭けをしていました。そして孔明もその賭けに乗るのです。孔明は、曹操の死、劉備の死を見届け、死んでいこうとする自分の枕元に座する彼女に「あなたが勝ったのだ。私は人の心は救えなかった」と言います。彼女は「いいえ、心の安らぎだけでは人々は救われません」と答えました。
作者は、心のよりどころである宗教と、安定した生活を守る政治家という両輪が必要なのだ、と述べます。平易な文章の中に含蓄がありますよね。
三国志では最大の悪役とされる魏の曹操にスポットを当てた『曹操』もあわせて読むと、それぞれの人物像が深くわかることでしょう。