恋愛小説を読んだことはありますか。時に優しく、時に切なく、胸を締め付ける作品や奥手な人に勇気を与える作品まで、たくさんの恋愛が小説の世界にはあるのです。今回は、文学が苦手な方にもオススメ出来る、恋愛短編小説を集めてみました!

作家陣は6名で、全員男性作家。直木賞作家である石田衣良、伊坂幸太郎、中田永一、中村航、本多孝好、市川拓司と、実力派揃いのラインナップです。
伊坂幸太郎の「透明ポーラーベア」は、彼にしては珍しい恋愛モノです。セリフやちょっとした一文に伏線を忍び込ませておく「伊坂ワールド」は健在で、ただの恋愛小説に留まらない展開を見せます。青年と恋人、そして青年の亡くなった姉の恋人と、またその恋人と。複雑で事情アリの彼らの偶然の再会から、姉の恋愛について考えさせられ、そしてラスト数ページでの転結へと続きます。
- 著者
- ["伊坂 幸太郎", "石田 衣良", "市川 拓司", "中田 永一", "中村 航", "本多 孝好"]
- 出版日
- 2007-09-01
表題作となる「初恋温泉」は、飲食店を何軒も構えるオーナー島田光彦と、その妻である彩子、二人による物語です。
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2009-05-20
とても読みやすい全八編で、どれも女子高校生の繊細で甘酸っぱい言動が満載です。そしてタイトルはそれぞれ「Body cocktail」「Brush up」など、英語で付けられているのも特徴です。
- 著者
- 山田 詠美
- 出版日
- 1995-03-01
表題作「失はれる物語」は、愛の意味を深く考えさせられる名作です。
- 著者
- 乙一
- 出版日
本作で取り上げられているのは、恋愛というよりは情愛と言った方がしっくりくるようなかたちの愛ばかり。愛欲に溺れた末の道行を描く「溺レる」、SMのような関係を描く「亀が鳴く」と「可哀相」、不死になった夫婦を描く「無明」などです。しかし描写によっては生々しくなってしまう場面も、川上弘美は「交合」「情交」「行為をおこなう」といった古風な言葉や「アイヨクにオボレる」といった片仮名表記などで干草のような乾いた匂いにしてしまいます。
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
作品の1つ「百年」をご紹介しましょう。
妻子あるサカキさんと抜き差しならない関係になった40代の「私」とは情死することにし、断崖から身を投げます。しかし死のうと言い出したサカキさんは助かり、「私」だけが死んでしまうのです。サカキさんは元の生活に戻り、87歳まで生きます。死んだサカキさんは「私」のところには来ずに消えてしまい、100年経っても「私」の思いだけは残っています。
「サカキさんという人がいたのかいなかったのか、わからなくなることさえあるのに、強い思いだけがある」(『溺レる』「百年」より引用)
100年も残る強い情念というとおどろおどろしいもののように思いますが、「百年」の読後感はもっとさらさらしています。この川上の感覚は、彼女が生物教師だったことと無縁ではないのかもしれません。「私にはこの人しかいない!」と思い詰めるような激しい恋も深い愛も、生物全体としての命や種の営みを考えた時には淡く小さなものでしかないからです。しかし、命のリレーは思い込みから来る激しい恋愛事なくしては続かないのもまた事実。
ページが進むごとに幻想的な色合いが濃くなりますが、1冊を通じて描かれるのは様々な愛のかたちです。一般的な恋愛小説とは一線を画す、不可思議な世界をお楽しみください。
物語は、冒頭も含めると全7編となります。どの作品も愛をテーマにしながら神や宇宙的な設定があります。奇抜なストーリーが得意な方には好まれます。ちなみにですが、舞城王太郎作品の中では今作はずいぶんまともだと言われています。
- 著者
- 舞城 王太郎
- 出版日
- 2008-06-13
以上、「読みやすい」をテーマにした恋愛短編を5作紹介しました。ストレートな作品から、一風変わった作品、はたまた過激なほどの描写を含む作品まで目白押しです。
短編というのは、長編小説のそれに比べて、起承転結がスムーズです。気軽に読み進められるので、出勤時間のお供に、また寝る前のちょっと読書に、「恋愛短編」いかがでしょうか。