日本推理作家協会賞受賞作『花の下にて春死なむ』
第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。タイトルは西行の「願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」が由来となっています。
- 著者
- 北森 鴻
- 出版日
- 2001-12-14
三軒茶屋の路地裏にあるビアバー・香菜里屋を舞台に、マスター・工藤が、客たちの持ちかける相談や謎を解き明かす、安楽椅子探偵といえる作品シリーズの1作目です。「香菜里屋」シリーズと呼ばれます。
工藤の推測による「答え」に相談を持ちかけた客たちは、ほぼ満足して納得します。工藤が作る料理もシリーズを人気にしている要因で、これは著者が持つ調理師の資格が活かされています。
表題作では、店の客でフリーライター・飯島七緒が同人仲間の火葬に立ち会い、身元引受人のいない彼のために、骨の中から出てきた骨折治療用ビスと彼の句帳を故郷に返そうと考え、工藤に相談します。工藤はどんな「答え」を推理するのか、飯島はどうするのか。静かに見つめていたくなる物語です。
本作では6本の短編が収録されていますが、どれも工藤と「香菜里屋」の魅力に満ちていています。血なまぐさい展開はありませんので、怖いミステリーが苦手な方にもおすすめです。
北森鴻が描いた、凸凹コンビ『親不孝通りディテクティブ』
博多の親不孝通りを舞台に、鴨志田鉄樹と根岸球太の「鴨ネギコンビ」が活躍する、ハードボイルド風ミステリーシリーズ。本作と『親不孝通りラプソディー』という2冊が出版されています。
- 著者
- 北森 鴻
- 出版日
- 2006-08-12
高校時代からの腐れ縁の男ふたりが交代で語る物語なのですが、一人称は共通語と博多弁。共通語を喋るのは冷静で、ラーメンとおでん屋台でカクテルを出すテッキこと鴨志田鉄樹。博多弁を操るのは、お気楽で自己中なのに憎めないキュータこと根岸球太。探偵役はテッキで、キュータは狂言回しに近いかもしれません。連作が進むにつれ、過去や思い出がよみがえってきて、ついには……。
ノリは軽いけれど、内容は重い感じのする本作。ふたりはどうなってしまうんだろうと考えながら読みました。凸凹バディ作品が好きな方には、特におすすめです。
元怪盗はいまや貧乏寺の寺男『支那そば館の謎』
『支那そば館の謎』と『ぶぶ漬け伝説の謎』の短編集2冊を出す、ミステリーシリーズ。実在の寺院が舞台です。北森作品の中では、ドタバタしたコメディ色が強い作品です。
- 著者
- 北森 鴻
- 出版日
- 2006-07-12
関西一帯を騒がせた元怪盗・有馬次郎は、嵐山大悲閣の寺男として働くことになります。かつて培った「裏」の技能を駆使し、住職や新聞記者たちとともに、寺に舞い込む事件を解決していきます。
登場人物同士の会話や、おてんば記者の暴走が面白く、ヘビーな事件が多いのですがユーモアいっぱいの仕上がりです。北森作品の定番ともいうべき料理がどれもおいしそうに描かれており、読んでいるとお腹が空いてしまいます。
京都の街を思い浮かべると、面白さが増すかと思います。ミステリー部分もしっかりと構築されており、幾重にも楽しめます!