「奇妙な味」の本はお好きですか?「奇妙な味」とは、推理小説のジャンルの一つ。各話がとても短く、読者に後味の悪さとやりきれなさを残すことが特徴です。ハッピーエンドではないですが、ジェットコースターのような展開の速さと衝撃的な結末に魅了される人は多いです。そんな「奇妙な味」の名手、阿刀田高についてご紹介します。

『来訪者』:上流階級の若い主婦が自宅にいると、病院で子供を出産した際世話になった雑役婦が訪ねてきました。赤子の様子を見に度々退院後も、彼女は主婦の家を訪れるのです。それだけではなく、「お手伝いとして雇ってほしい」とまで言ってきたこともありました。精神的にも肉体的にも余裕のない雑役婦を内心見下し、主婦は毎度適当にあしらっていましたが、そこに刑事が訪ねてきて……。
- 著者
- 阿刀田 高
- 出版日
- 1982-07-15
「鴨狩り」:遠縁の叔母さんが住む老人ホームを訪ねる主人公。叔母さんは昔話をしてくれます。彼女は農園で働いていた時期があり、鴨狩用におとりの鴨を調教することが得意だと話します。野生の鴨が農園に来た際、捕えやすいよう人間のいるところに誘導することがおとりの役目だと訥々と話してくれました。しかし次に面会した時、彼女は自分のしたことに怯えていて……。
- 著者
- 阿刀田 高
- 出版日
- 2007-08-28
「無邪気な女」:大人しく美しい女を妻に迎えた大介。しかし新婚旅行中、彼女は性行為に並々ならぬ抵抗を示します。親類がほぼいないので過去に何があったのかはありません。カウンセラーの手によって、催眠療法がおこなわれ、忌まわしい真実が暴かれます。
- 著者
- 阿刀田 高
- 出版日
「茜色の空」:40年ぶりに同窓会で再会した、資産家と医師。資産家はあることに悩まされ、医師は金策に困っていました。彼らは昔、「困った時はいつでも助け合おう」と強い誓いをしていました。その約束が、ついに果たされることになります。
- 著者
- 阿刀田 高
- 出版日
阿刀田高のこの話だけファンタジー色が強いです。余所者の男と鄙びた町は一見何も関係はありませんが、あまりありがたくない「土地の神様」によって切っては切れない関係に結びつきます。傷害事件は作品中にはおきませんが、その後を考えると嫌な気持ちになります。子供を授かったとしても、その子の将来には黒雲が……。
- 著者
- 阿刀田 高
- 出版日
同じ短編集の名手の星新一は、SFを舞台にした作品が多く、男女の機微や性行為の描写は薄い作品が多いです。対して阿刀田高の場合、近未来を舞台にした作品はほぼありません。舞台は現代社会が多く、男女の恋愛を扱った作品が大半を占めています。その分、登場人物に現実感があり、ドロドロとした心の闇からうまれる短編も、私たちの生活に息づいているので共感しやすいと思います。作品からあふれだす人々の息遣いを感じ取ってください。