エリートをドロップアウトした作家・中島らもとは?
中島らもは、日本の小説家。劇作家、随筆家、広告プランナー、放送作家、ラジオパーソナリティ、ミュージシャンでもあります。
1952年に兵庫県尼崎市で生まれ、名門進学校の灘中学・高校に進学するも、ドロップアウト。フーテン生活を続けたあと、大阪芸術大学芸術学部放送学科へ入学し、1975年に卒業しました。卒論のテーマは「放送倫理規定」だったそうです。
1976年、叔父の紹介で印刷会社にコネ入社。1981年に広告代理店へ転職します。1987年には独立して「有限会社中島らも事務所」を設立し、作家活動を本格化させました。その後、戯曲、エッセイ、小説、新作落語、バラエティ番組の脚本やコントなどを多数執筆していきます。
2004年7月16日未明、飲食店の階段から転落して全身と頭部を強打。脳挫傷による外傷性脳内出血のため、神戸市内の病院に入院します。15時間の大手術を受けますが、意識が戻ることはなく、同月26日午前8時16分に死去。享年52歳でした。
中島らもが描く、やっぱり嫌いになれない父たち『お父さんのバックドロップ』
ロックンローラー、落語家、究極のペットを探す動物園園長と魚河岸の大将、そして表題作にもなっているプロレスラー。そんな特殊な職業につくお父さんと、その子どもの物語が4作収録されています。
- 著者
- 中島 らも
- 出版日
表題作は、有名な悪役プロレスラーを父にもつ下田くんの話。父・牛之助頭は、金髪で、顔には赤白の隈取りをし、リングではみどり色の霧を吹きます。そんな父親がいやでたまらない下田くんですが、空手家・クマ殺しのカーマンと父親が対戦することになり……。
親の背中を見て思ったこと、一生懸命考えたこと、そして反発。子どもの目線から、多くに人が経験したであろう気持ちが丁寧に描かれます。子どもにも大人にもおすすめしたくなるような、切なさと優しさが満ち溢れる1冊です。
中島らもの作品をお得に読む
中島らもが伝える優しいメッセージとは?『今夜、すべてのバーで』
吉川英治文学新人賞受賞作です。主人公は、アルコールにとりつかれた男・小島容。彼は25歳のときに医者から、アルコールが原因で、35才までの命になるだろうと宣告されます。彼は、35才に入院するまで、アルコール依存症のあらゆる知識を取り込みつつも、アルコールへの依存を強めていきます。
- 著者
- 中島 らも
- 出版日
- 1994-03-04
アルコール中毒を悪いことだと頭ではわかっていても、やめられずにいる小島。人間の弱さや、どうしようもない部分が、苦しくなるほど伝わってきます。アルコールを飲んだときに「胃の中が太陽に照らされたような、ポっと温かくなる感覚」というような表現を使っているのですが、心や身体が弱っているときの「依存」はひょっとしたら「太陽」なのではないでしょうか。もちろん、そのあとには曇って嵐になってしまうこともあるのでしょうが。
依存そのものが悪いわけではなく、ものによっては周囲を悲しませたり、苦しめたりすることをはっきりと書く、中島らもの優しさ。必死に生きている人にこそ、疲れきってしまう前に読んでほしい1冊です。