小説家であると共に精神科医でもあった北杜夫。その多才さは、書かれた作品にも遺憾なく発揮されています。今回は、そんな北杜夫の作品世界を味わえる5作品をご紹介します。

そんなおじさんですが、妙な理屈をこねてみたり、お見合いでビビってしまったり、懸賞を当てて海外に行こうとしたりと、何故か抜けていたりして憎めないのです。最終的には、ある方法により「ぼく」とおじさんはハワイに行けることになるのですが……。
- 著者
- 北 杜夫
- 出版日
また、物語自体にわかりやすい起伏があるわけでもありません。幼年期から青年期に掛けての心の動きが、自然の描写と共に、しばしば白昼夢のように語られています。しかし、絵画のような記述が読者をとらえ、飽きさせることがありません。
- 著者
- 北 杜夫
- 出版日
- 1965-10-12
本作はトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』に影響を受けて書かれたといいますが、後にご紹介する『どくとるマンボウ航海記』にも、ブッデンブロオクの家を観に行ったというくだりがあります。また、序盤で楡家の三番目の娘の桃子が歌っている歌は『ぼくのおじさん』収録の「赤いオバケと白いオバケ」にも出てくるもので、こうした繋がりが随所に見られるのも楽しい部分です。
- 著者
- 北 杜夫
- 出版日
- 2011-07-05
このように述べると、ある種の感動話のようにも思えますが、史実が示す通り、その内容は暗く重く、陰惨ともいえるものです。たとえば、医師の一人であるケルセンブロックの無謀ともいうべき治療は、患者の多くを廃人にしてしまいます。また、日本人の患者であり、ユダヤ人の妻をもつ医師でもある高島も、不幸な結末を迎えます。
- 著者
- 北 杜夫
- 出版日
- 1963-07-30
船酔いや便秘に悩まされた話、道に迷った話、ブッデンブロオクの家を観に行ってみて期待外れだった話など、失敗談の類もいろいろ出てきます。
- 著者
- 北 杜夫
- 出版日
- 1965-03-02
多才さというのは、幅の広さでもあります。北杜夫の作風というのは、有名な「どくとるマンボウ」シリーズの影響のためか、ユーモアに満ちた軽妙なものだと思われがちかも知れません。ですが、大自然を前にして身を打たれるような、清冽な湧水に似た文章もまた北杜夫の持ち味の一つです。
そのどちらも力強く書けるのが北杜夫の魅力なのです。これを機に、彼の様々な作品を味わってみるのはいかがでしょうか。