4位:新進気鋭のピアニストが奏でる真実!美しき音楽ミステリー
- 著者
- 中山 七里
- 出版日
- 2011-01-12
ピアニスト・岬洋介が探偵役を務める『さよならドビュッシー』。「このミステリーがすごい」大賞受賞作品であり、中山のデビュー作でもあります。クラシックが織りなすドラマと、ミステリーのコントラストが魅力的です。
中学3年生の香月遥は、ピアニストを目指し毎日厳しい練習に明け暮れていました。彼女は、旭丘西高等学校の音楽科に推薦で特待入学することが決まっており、周りからの期待も高かったのです。同じくピアニストを目指す従姉妹の片桐ルシア。遥とルシアは、姉妹のように仲良しでした。
そんな2人を悲劇が襲います。ある夜、祖父の香月玄太郎の部屋から出火し、玄太郎と遥、ルシアがいた離れが全焼してしまったのです。彼女は、全身に大火傷を負いましたが、奇跡的に命を取り止めました。しかしあとの2人は助かりませんでした。
ようやく退院し、香月邸に戻った彼女を待ち受けていたのは、顧問弁護士による玄太郎の遺言の発表。玄太郎は、遥に総資産の半分を譲るという遺言を残していました。遺産は、信託財産として、遥のピアノ教育とピアニスト活動にのみ使われるものでした。
彼女は予定通り旭丘西高等学校の音楽科に入学したものの、火傷が完治していない状態での特待入学だったことで、クラスメイトからは辛く当たられます。さらに香月邸でも命の危険にさらされ、ピアノ講師の鬼塚からは見放され、彼女は夢を諦めかけます。そこで彼女の講師を引き受けたのは、鬼塚の弟弟子であるピアニスト・岬洋介でした…。
中山七里のデビュー作として、非常に話題になった作品です。タイトルに「ドビュッシー」とある通り、クラシック音楽が絡むミステリーとなっています。まるで音が聴こえてくるかのようなクラシックの繊細な描写も、非常に魅力的です。
クラシックと絡み合う主人公の思いは、時折、鬼気迫るものさえ感じさせます。彼女は重度の火傷で指が自由に動かなくなってしまいます。日常生活に支障はなくとも、ピアノを弾くには致命的なことでした。それでも彼女は、ピアノが弾きたいと願います。主人公の演奏シーンは、必死であるがゆえに胸をうたれます。
3位:恐ろしき猟奇殺人鬼を、止められるか?
- 著者
- 中山 七里
- 出版日
- 2011-02-04
「カエル男」と呼ばれる猟奇殺人鬼を捕まえるため、埼玉県警の古手川と渡瀬が捜査にあたる『連続殺人鬼 カエル男』。『さよならドビュッシー』と共に「このミステリーがすごい!」大賞にノミネートされた作品です。残念ながら受賞には至りませんでしたが、落選作品も読みたいという声に応えて、刊行されました。
12月1日、新聞配達の少年はマンションの13階に吊るされている怪しいブルーシートを見つけます。めくってみると、全裸で吊るされた女性の遺体。ブルーシートには、平仮名で書かれたメモ書きが貼り付けられていました。「きょう、かえるをつかまえたよ。このはこにいれていろいろあそんだけど、だんだんあきてきた。おもいついた、みのむしのかっこうにしてみよう。くちからはりをつけて、たかいたかいところにつるしてみよう」という、まるで子供が書いたような文字と文章でした。女性の異常な殺され方に、世間は騒ぎます。
捜査一課の古手川和也はベテランの渡瀬とコンビを組み捜査に当たりますが、手がかりを得ることはできません。城北大学の教授である御前崎は事件の幼児性を指摘し、犯人は、飽きるか叱られるかしない限り、決してやめないだろう、と警告します。そして、第二の事件が起こり…。
『連続殺人鬼 カエル男』は、大賞受賞作の『さよならドビュッシー』とは正反対の、サイコサスペンスとなっています。中山の作品の幅広さを改めて感じさせてくれる作品です。
今まで紹介した作品は、ミステリーながらどこか爽やかさの残る作品が多いですが、本作は違います。猟奇的な殺人事件と、幼児性というミスマッチな恐ろしさ、手口の残虐性を物語る描写、格闘シーンなど、思わず目を背けたくなるかもしれません。それでも先が気になって読んでしまう魅力あります。
さらに、「どんでん返しの帝王」とまで呼ばれる中山の仕掛けが、本作では大いに楽しめます。猟奇的な殺人事件の裏に隠された真実を、古手川は見つけ出せるのでしょうか。
中山七里の作品をお得に読む
2位:中山七里が描く社会派ミステリー
- 著者
- 中山 七里
- 出版日
- 2017-03-10
『テミスの剣』はある冤罪事件を軸に、主人公渡瀬が警察組織を敵に回しながらも真実を求める社会派ミステリーです。
1984年、渡瀬は当時巡査部長として、教育係鳴海の元、強行犯係に所属していました。そこで1件の殺人事件がおこります。容疑者として浮かび上がるのは楠木明大。鳴海は明大が犯人と決めてかかり、荒々しい取り調べ、さらには証拠品のでっちあげまで行います。こうして、死刑宣告をされた明大は獄中で自殺してしまいました。
1989年、ある事件を捜査していた渡瀬はその手口が5年前の殺人事件の手口と似ていることに気がつきます。容疑者の迫水二郎を取り調べる中、迫水はあっさり5年前の事件も自分の犯行と認めます。それは警察組織を揺るがす発言となるのでした。
物語は冤罪、警察組織、司法のあり方を責め立てるようにすすんでいきます。渡瀬は自分の正義を貫こうと冤罪事件について捜査します。しかし、それを面白く思わないのが警察、司法の人間達。そんな大きな力を敵に回しながらも渡瀬は真相を追い求めるのです。物語が進むにつれ渡瀬が成長していき、とても愛着がわいてくるでしょう。
そして1つの冤罪が憎しみを生み、第2の事件を引き起こします。第2の事件では、迫水が殺害されてしまい、まさに負の連鎖です。警察の中には、楠木明大、迫水二郎の名前も聞きたくない人間もいます。もちろんそれは、明大を冤罪に追いやったという自覚がある者たちです。市民の正義の指標であるべき警察が悪を悪で覆い隠す姿に何を信じていいのかわからなくなってきます。
そんな不安な気持ちをも引き起こすこの物語。だからといって読まなければよかったなんて絶対思わないでしょう。警察、司法について考え直すいい機会になります。またとても読みやすく、巧妙に仕組まれた伏線は圧巻です。ぜひ1度読んでみてください。