3. コミュ力低めなスーパー探偵『十三の呪』
人の「死相」をみるという特殊能力を持つ、死相学探偵・弦矢俊一郎が探偵事務所を訪れる様々な依頼人の事件を解決していくというストーリー。
- 著者
- 三津田 信三
- 出版日
- 2008-06-25
東京・神保町の雑居ビルの中にある「弦矢俊一郎探偵事務所」。所長の弦矢俊一郎は、まだ年若い青年で、ある理由から、探偵事務所を開いたばかりでした。
事務所に初めての依頼人・内藤紗綾香がやって来ます。しかし、俊一郎は、依頼人を見るなり「帰ってくれませんか」と言い放ちます。彼はとにかく人付き合いが苦手なのでした。
俊一郎が依頼人に帰るように言ったのには、もう一つ理由がありました。俊一郎は生まれつき、人の「死相」を視ることができます。祖父母の提案で、その力を活かすために探偵事務所は開かれたのですが、依頼人の「死相」がみえなければ、なにもできません。依頼人の紗綾香には、「死相」がみえなかったのです。
ふたたび紗綾香が俊一郎の元を訪れたとき、彼女の肌には「死相」がうごめいていました。俊一郎は不思議に思い、紗綾香の依頼を引き受けることにしますが…。
本作はホラー要素が強くなっていますが、三津田作品には珍しくライトで読みやすくなっています。作品の読みやすさには、主人公・俊一郎のキャラクター性が一役買っているのでしょう。彼は、生まれつきの能力のせいもあり、人とうまく関われません。唯一の友達は、飼い猫の「僕」だけ。探偵事務所を訪れる様々な人たちと関わることで、だんだんと心を開き、他人への関心を見せていきます。本ホラーミステリ作品中には、決して完璧ではない俊一郎の人間としての成長も描かれているのです。また、俊一郎が、猫の「僕」のことを「僕にゃん」というかわいい愛称で呼ぶことも俊一郎に親しみを覚えます。
三津田信三の作品を読むのが初めてという方にも、おすすめの作品です。
4. 数々の怪奇現象が12歳の少年を襲う『禍家』
とある家の怪奇現象を題材とした作品です。完全なホラー作品となっています。
- 著者
- 三津田 信三
- 出版日
- 2013-11-22
両親が亡くなり、祖母と郊外に引っ越して来た12歳の貢太郎。初めての土地であるはずなのに、なぜか過去に来たことがあると感じます。近所の老人には、「ぼうず、おかえり」と声をかけられます。不気味に思う貢太郎でしたが、新しく住み始めた家でも次々と怪奇現象が起こります。しかし、一緒に住んでいる祖母は特になにも感じていません。
ある日、貢太郎は同じ年頃の礼奈という少女と友達になります。彼女は貢太郎の体験している怪奇現象を知ります。貢太郎と怜奈は、礼奈の兄の家庭教師・詩美絵と共に、貢太郎の家を調べ始めます…。
『禍家』は、これまで紹介した作品と違い、純粋なホラー作品となっています。主人公の貢太郎は、新しく住む家で何度も怪奇現象に見舞われます。読者の想像を掻き立てるシーンがたっぷりと詰まっています。怪奇現象に尋常でないほどの恐怖を表す貢太郎の様子が、本作品の恐怖をより強力にしています。
超自然的な怪奇現象の恐怖が、人間の狂気が作り出す恐怖へと変化していくところが読み所です。
三津田の描くホラー世界を存分に堪能したい人に、おすすめの作品です。
5. 板野友美主演映画の原作!『のぞきめ』
同じ場所で起こった2つの怪異体験を、作家である「僕」が本として書いていくというスタイル。本作は、板野友美主演で映画化もされました。
- 著者
- 三津田 信三
- 出版日
- 2015-03-25
作家の「僕」は、以前、編集者をしていたときから、怪奇譚や怪異体験の話を収集していました。集めた話は、本として作品にすることもありましたが、ある話だけは発表できずにいたのです。
そんな「僕」のところに、ライター・南雲から1冊のノートが送られてきます。ノートは、南雲は何年も民俗学者・四十澤想一の元に通い、盗まれたもの。悩んだ末、「僕」は読まずにノートを返却します。
時は経ち、四十澤が亡くなり、弁護士から、正式にノートを譲りわたすと書かれた手紙と共にノートが送られてきました。遂に読むことになったノートには、「のぞきめ」という怪異が記されていました。「僕」は「のぞきめ」が、発表できずにいた「覗き屋敷の怪」という話と、同じ場所で起こった話であると気がつきます…。
主人公である「僕」は、名前こそ明かされないものの、元編集者の三津田との共通点があります。実際に、三津田本人が見聞きしたかのように受け取れる作品となっています。
作家「僕」の視点と同じ立場で読み進めていけるというのが、魅力です。作中作として語られる「のぞきめ」とはなんなのか、「僕」とともに考察していくのも面白いかもしれませんね。