近年の芥川賞といえばお笑い芸人の又吉直樹が『花火』で受賞したことが話題となりましたが、同時に一躍脚光を浴びたのがこの羽田圭介です。高校生でデビューしたという羽田は芥川賞の『スクラップ・アンド・ビルド』以外にも多くの作品を残してきました。今回はそんな羽田圭介のおすすめ作品をご紹介します。

編集者の須賀は作家Kと会うために渋谷に行き、大勢の人間が行き交う駅前で1体の「ゾンビ」を発見します。周囲の人間もゾンビだと認識しますが、誰一人として怖がる者はなく、のろのろと歩くゾンビを遠巻きに眺めたり避けて通り過ぎたりする中、須賀も早々にゾンビの脇を通り過ぎ、何事もなかったかのように待ち合わせ場所の喫茶店に向かうのでした。
須賀から見たKは、かつては新人賞を受賞したものの今ではどこの出版社からも相手にされていない、作家としては「死んでいる」存在です。しかしKは、自分は出版業界の中で「まだ生きている」と思っています。話を終えて窓の外を見た2人は、先程のゾンビが通行人の女に噛みつく瞬間を見るのでした。
- 著者
- 羽田 圭介
- 出版日
- 2016-11-15
物語は編集者の須賀、小説家のK、Kと同時に新人文学賞を受賞した作家の理江、文学賞に応募しては落選を繰り返す小説家志望の南雲晶、区の福祉事務所のケースワーカーの新垣、女子高校生の希を中心に進んで行きます。
Kはゾンビをネタにした文章を書くことで再び注目を集めるようになり、理恵はゾンビに家を襲われ、新垣は自分の職場で生活保護申請を却下された人々が続々とゾンビになっていく現状に苦しみ、ゾンビに噛まれたのになぜかゾンビ化しない希と共にゾンビの隔離地帯で暮らし始めます。そして須賀の周囲には生前そのままの生活を続けるゾンビたちが現れ、南雲はゾンビがいないと噂される北海道へ家族と共に向かう途中1人はぐれてしまい、たどり着いた先で異様な光景を目にするのです。
最初は少数だったゾンビは日を追うごとに増え行動範囲を拡大し、人間社会を浸食していきます。ゾンビのいない場所を探し求める者、数人で立てこもる者、自分だけ助かろうとする者、愛するものがゾンビになってしまった者、物語はゾンビ映画そのままに進行するのです。
では本作は既存のゾンビものと何が違うのか、そう思った人は既に羽田圭介の術中にはまっています。誰もが知っている「ゾンビ」、この共通認識こそが物語の鍵なのです。また、「K」というイニシャルのみで語られる作家は羽田圭介本人を連想させ、描かれる出版業界の話は作者の実体験かのように思わされます。様々なトリックが張り巡らされた本作は読み進むほど読者の想像を裏切り、意外な結末に驚かされるでしょう。
- 著者
- 羽田 圭介
- 出版日
- 2014-10-09
- 著者
- 羽田 圭介
- 出版日
- 2010-11-05
- 著者
- 羽田 圭介
- 出版日
- 2015-08-07
- 著者
- 羽田 圭介
- 出版日
- 著者
- 羽田 圭介
- 出版日
- 2015-10-28
以上、芥川賞作家・羽田圭介のおすすめ作品をご紹介いたしました。テレビや雑誌などでも見かけることの多い作家ですが、やはり著作を手に取ってみるのが一番おもしろいでしょう。そして、その作品の幅の広さに驚くこと間違いありません。この機会ぜひ一読あれ!