黒川博行とは、一体どんな作家なのでしょうか?彼の作品では、軽妙な大阪弁の掛け合いが多く描かれます。その実、扱うテーマは大変硬派な社会問題。今回は、そんな絶妙なコントラストを楽しめる、ベスト6作品をご紹介します。

唐突ですが、皆さんは「ヤクザ」と聞いて何を思い浮かべますか? 極道、任侠、暴力団、はみ出し者に犯罪者……ざっと挙げれば大体こんなところでしょうか。少なくとも、好き好んで関わり合いになりたい人種ではないことだけは確かです。
黒川博行『迅雷』は、そのヤクザと丁々発止の攻防を繰り広げる男達の物語です。ヤクザを誘拐して身代金をせしめる。そんな大胆不敵、かつ奇想天外な発想の元、同じく社会不適合なはみ出し者達が前代未聞の賭けに出ます。
主人公の友永は、日々の生計をダライコ(ネジの切り屑)業で細々としのぐ回収屋。ある日事故に遭った彼は、入院先の病院で稲垣という男に知り合います。ひょんなことから意気投合する二人。そんな中、稲垣はとんでもないことを言い出します。
「堅気が極道をさらうやて、どこの誰が考える。絶対に足はつかへんで」(『迅雷』より引用)
ヤクザを攫って金を奪う。博打めいた提案はうまく運び、まんまと大金をせしめます。思わぬ収入に、ほくほく顔の友永。しかしそれからしばらく経ったある日、再び稲垣が現れて……。
- 著者
- 黒川 博行
- 出版日
- 2005-05-01
本編で登場する人物は、いずれも一般的には「ろくでなし」と呼ばれる類の人々ばかりです。ヤクザは言うに及ばず、当たり屋・拳法家くずれ・汚職理事長と、これでもかとばかりにろくでもない人々が出てきます。友永のダライコ屋は真っ当な職業ですし、本人も比較的マシな人格の持ち主ではありますが、それでもこうした連中とつるむ道を選んでしまう辺り、根っこの部分は推して知るべしと言えるでしょう。
そんな彼らが繰り広げるドラマは、どこか憎めず不思議な痛快さを感じさせます。理想でも正義でもない、欲望を下敷きにした物語。人間の業をむき出しにして描かれた内容は、まっとうに生きられない者達の歪みが見て取れると同時に、ピカレスク作品特有の諧謔味に溢れています。
果たして友永一味は再び大金を手にすることができるのか。それともヤクザ達が一味の尻尾を捉えて報復に打って出るのか。最後まで目が離せない痛快誘拐ピカレスク。一度読みだせば、疾風『迅雷』の如き展開の虜になること請け合いです。
- 著者
- 黒川 博行
- 出版日
- 1998-03-30
- 著者
- 黒川 博行
- 出版日
- 著者
- 黒川 博行
- 出版日
- 2010-09-25
- 著者
- 黒川 博行
- 出版日
- 2016-06-10
- 著者
- 黒川 博行
- 出版日
- 2014-12-25