1976年にデビューして以来、文壇のトップとして走り続けている作家、村上龍。誰もが一度は耳にしたことがあるでしょうが、その小説を読んだことがないという人もいるでしょう。今回は村上龍初心者の方におすすめしたい作品をご紹介します。

舞台は東京、福生市。主人公はリュウ。麻薬、暴力、酒、乱交に明け暮れている若者で、大半はリュウの一人語りの形式で物語はつづられています。リュウの仲間であるケン、リリー、オキナワ、レイ子、ヨシヤマ達もリュウと同じで麻薬使用者であり、リュウの部屋で乱交に明け暮れる日々を送っています。
読んでいてあまり好ましくない表現が多く出て来たり、麻薬を使用する様子が細かく描かれていたりして、登場人物たちの麻薬中毒に陥っている様子がリアルです。また、性描写や暴力的な場面も実際に目にしているような感覚になります。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
- 2009-04-15
大きな事件が起こるわけでもなく、物語はたんたんと進んでいきます。警官が麻薬を使っている彼らのアパートに踏み込んでいくシーンでさえ、彼らは落ち着いています。逃げるわけでもなく、あっけらかんとしているのです。彼らの感情の起伏が感じられないようにさえ思えてきます。
現実では決してあり得ない、犯罪まみれの作品ですが、なぜか最後まで一気に読んでしまいます。ページ数も少なく、会話形式で進む部分も多いので村上龍の作品を初めて読む人も読みやすいのではないでしょうか。
あらすじだけ見てみると、突拍子もない話に思えます。しかし取り上げている内容は、日本が抱えるリアルな問題ばかりです。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
第一章から十章までのタイトルが昭和の歌謡曲で形成されていて、カラオケ大会ばかりしている6人の若者と6人のおばさんたちによる殺し合いの物語です。
スギオカがナイフでヤナギモトミドリをナイフで殺してしまうところから、若者たちとミドリという名前だけが共通するおばさんたちの集まりである「ミドリ会」との復讐と称する殺し合いが始まり、銃や燃料帰化爆弾まで出てきます。金物屋でトカレフを手に入れたり、燃料帰化爆弾の作り方を教わったり。最後まで設定や登場人物の考え方、行動が現実離れしすぎていて驚きの連続です。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
村上龍特有の、1文がとにかく長く、句点(。)がほとんどない文章、読点(、)が多く、1文を一気に読んでしまいます。1ページ全部が1人のセリフになることもあり、会話も友達と会話するような話し言葉になっていて、一緒に会話に参加しているような感覚にもなります。
また、死体の描写もリアルで、登場人物が嘔吐するシーンが何度か出てきたり、性的な描写も繰り返し出てきたりきます。読んでいて決して気持ちの良い表現とは言えないのですが、なぜか常識はずれなふたつのグループの戦いに巻き込まれ、衝撃のラストシーンまで引き込まれていってしまう作品です。
ケンジは20歳ですが大学には行かず、日本に来た外国人観光客のアテンドを職業としています。ただし仕事の実質は主に性風俗店を案内して、外国人男性の旅先での性的な要求を満足させてあげることでした。
年末にケンジはアメリカから仕事で来たフランクという中年男性からの依頼で、12月29日~31日の3日間、夜9時~12時までのコースを請け負います。フランクに面会したケンジは、彼が時々見せる狂暴な目と不自然な表情から本能的に危険を感じますが、「セックスがしたい」という彼の希望に応じるべく夜の新宿歌舞伎町を案内することにしました。
いくつかの店を回りながら会話をするうち、ケンジはフランクが嘘つきだと気付きます。前の店では姉がいると話していたのに次の店では兄に囲まれて育ったと言い、トヨタ自動車の部品の輸入の仕事で来日したはずなのにトヨタレンタカーの営業所の前を通っても何の関心も示しませんでした。その時ケンジは、フランクに会う前に読んだ新聞に載っていた女子高生殺害事件を思い出します。売春をしていたその女子高生は何者かに殺され、バラバラに切断された少女の遺体は新宿のこの営業所の近くで発見されたのでした。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
嫌な予感を振り切るようにケンジはフランクをバッティングセンターに誘います。野球少年だったというフランクの話の真偽を確かめたかったのですが、フランクはまったくボールを打つことができませんでした。その後2人は、バッティングセンターの中に1人のホームレスの男性がいることに気が付きます。そしてケンジは翌日のニュースで、新宿で1人のホームレスが殺害された事を知るのです。さらに家を出るとき玄関のドアに人間の皮膚の切れ端のようなものが貼り付けられているのを発見し、ケンジはフランクの仕業だと直感し戦慄します。
ケンジは内心に恐怖を抱えつつも再びフランクを夜の新宿に案内します。その夜はプロの売春婦がいると聞いたお見合いカフェに行き2人の女性と飲み始めるのですが、女の1人が自己中心的な話を繰り広げ決して楽しい席とは言えませんでした。会計の際フランクはケンジに少し外に出ていくようにと言い、フランクに呼び戻されて再び店に入ったケンジの前には、2人の女をはじめ店にいた人々の惨殺死体が転がっていたのです。
本作はフランクの異常な人間性を描くと同時に、日本人の言動や慣習が外国人にとっては極めて異様に見えるという事についても描かれています。フランクが日本を選んだ理由、彼が日本に求めたものとは何だったのか、日本人として考えるべき問題なのかも知れません。
一見めちゃくちゃで、ファンタジーのように思えてしまう設定ですが、それが現代の社会問題に絡み、かつ、いかにも現実の話かのようなリアルな描写で書かれているため、「現代において、我々はどう生きるべきであるのか」と考えさせられます。それはおそらく、作者・村上龍からの問いかけなのでしょう。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
- 1990-08-03
訓練で鍛えぬかれた北朝鮮と、たるみきった日本という対比が描かれた村上龍の作品です。膨大な参考資料、そして膨大な登場人物をもって書かれた大作で、小道具の細部までひたすら作りこんであります。圧力を感じるぐらいの文章量ですが、その中で活動するアウトローたちのちょっと場違いな雰囲気に心が和むことでしょう。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
どうして主人公がそんなパラレルワールドに紛れ込んでしまったのか、その理由は語られることはありません。しかし、彼が紛れ込んだのは、身に着けていた腕時計から5分進んだ世界であること、そしてここが原爆を落とされても日本が降伏しなかった世界だということが分かります。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
不幸な生い立ちの二人の子供が、紆余曲折あって幸せになる、そんなストーリーがイメージできそうなあらすじですが、そういった物語にはなりません。どちらかというとサイバーパンク的なお話で、ひたすらに暗い雰囲気が続く本になっています。それでもこの話を村上龍の最高傑作だと評する人も多いので一度読んでみるのをおすすめします。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
- 2009-07-15
冗談のように書かれた学校のバリケード封鎖や、フェスティバルの開催に向けて準備をすすめる日々など、村上龍本人が言っているように、とても「楽しい小説」です。この作品は青春小説としてはかなり明るいもので、思春期ゆえの葛藤や息苦しさよりも、笑い、勢い、そういったもののパワーが強く伝わってきます。とにかくいろんなことは二の次にして、読んでみてもらいたいです。落ち込んだ気分もさらっと解決してくれるぐらい本当に楽しい小説なのです。
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
- 2013-06-26
いかがでしょうか。圧倒的文章力によって描かれる数々の物語、構築された世界観、それらすべてが高い水準を保っているからこそ、村上龍が時代を代表する作家と言われ、文壇のトップに立ち続けている理由だといえるでしょう。ぜひ本屋で手にとっていただきたいです。