シングルファーザー・鉄のファン続出!
アナザーフェイスシリーズ第1弾。刑事総務課に勤め、事務仕事や研修の準備などの仕事をしている大友鉄は、かつて捜査1課の刑事でしたが、交通事故で妻を亡くした2年前から、一人息子の優斗の子育てに支障の出ないように、定時帰宅できる今の部署に希望を出して異動してきました。
ある日、銀行員の息子が誘拐され、特捜本部が設置されます。刑事時代の大友の能力をかっていた上司の福原の指示で特捜本部へと派遣される大友。
学生時代、演劇部だった大友は、変装してどんなところにでも溶け込んでしまう特技を持ち、人間観察に優れています。また、人当りがソフトなので警察官の雰囲気を消し、相手に緊張感を抱かせずに本音を聞き出す力も持っていました。
今回の誘拐事件は、犯人の指定してきた身代金の受け渡し場所が、アイドルグループのコンサート会場という特異な事件でした。不特定多数の人間が集まる場所で、どうやって犯人を特定すればいいのか。捜査陣はあせりますが、果たして犯人は捕まり、少年は解放されるのでしょうか。
- 著者
- 堂場 瞬一
- 出版日
- 2010-07-09
およそ刑事らしくない大友鉄のキャラクターが女性の心をくすぐり、堂場作品の中でも女性ファンが多いシリーズです。仕事帰りに食材を買って毎晩息子と二人の夕食を作り、息子の成長に合わせて家のことを考えている鉄。また、穏やかな性格で、同僚との関係も大事にしている鉄。何よりも、亡くなった妻を未だに愛している鉄。今までの警察小説にはなかったキャラクターではないでしょうか。
がさつで男っぽくて強面の柴、可愛い顔にごつい体の高畑敦美など、同期も素敵なキャラクターに描かれ、鉄の大変な時にさりげなく助ける友情も、読んでいて気持ちいいものです。
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それぞれの平成。2人はどう歩んだか!?
1989年(平成元年)、日本は好景気の真っただ中。大学を卒業し、社会へ出た鷹西仁と大江波流(はる)。鷹西は、作家になる夢への足掛かりに、新聞記者として働くことが決まっていました。大江は、父の後を継いで政治家になり、日本を正しい方向に引っ張っていきたいと夢見ていました。
1994年(平成6年)、大蔵官僚となっていた大江は、父の死をきっかけに父の後援者から、次の選挙に出馬するよう勧められますが、大江自身は資金をためるためにまずは会社を興そうと考えています。そんな矢先、母親から自らの家が借金まみれだと知らされ、ある行動に出るのでした。
新聞記者として伊東支局に異動してきた鷹西は、特ダネを取りたい一心で元代議士殺人事件について調べていましたが、東京への異動を命じられ、事件調査は途中のまま、後任に託すことに。
以降、大江はITビジネスで成功を収め、鷹西はとうとう新人賞を受賞して作家への道を歩み始めます。
- 著者
- 堂場 瞬一
- 出版日
- 2015-08-20
青春時代を共に過ごした仲間2人の平成になってからの足跡を追ったストーリーで、世の中で起きた大きな事件や世相、大震災などにも触れているので、読者にとっても、自分のことを振り返るいい機会になる本です。
2011年(平成23年)で終わるストーリー。鷹西と大江は、夢をつかみとったのでしょうか。
成長まっただ中!新人刑事の活躍を描く
25歳の一之瀬拓真が、新人刑事として成長していくシリーズ第1弾。東日本大震災後、まだ日本が混乱のさなかにあった時に、拓真が配属されたのは千代田署刑事課でした。千代田署の管轄は、オフィス街、官庁街、皇居外苑などがすっぽり含まれるため、居住者の少ない特殊なエリアです。窃盗犯が中心だと聞かされていましたが、拓真にとって刑事としての初めての事件は、殺人事件でした。初めて目にする無惨な遺体、被害者の父親への対応、交番勤務とは全く違う不規則な勤務、戸惑うことばかりの拓真でしたが、教育係の藤島のフォローや恋人である深雪の励ましによって、少しずつ刑事らしくなっていきます。
事件の被害者・古谷は、30歳でIT企業の課長という出世を遂げ、忙しすぎて人とのつきあいも極力してこなかったことがうかがえました。古谷は、福島県郡山出身で、実家は地震で被災し、両親は親戚の家で避難生活中、しかも母親は入院中という中で起こった事件でした。古谷本人は、故郷を嫌ってあまり帰省もしていませんでしたが、故郷で執り行われた葬儀での聞き込みで、拓真と藤島は、宮原由衣という女性と知り合います。自宅の酒屋は被災し、営業できなくなったので、物資の運送や被災者の面倒をみるボランティアをしている由衣は、つっけんどんな態度ながら、最近の古谷が不安を抱えていたことを教えてくれます。
若くして異例の出世を遂げたかに思われた古谷でしたが、実際は、何か深刻な問題を抱えていたようです。一之瀬自身の生活や藤島との会話など刑事側の心理を丁寧に描写しながら、捜査も進んでいきます。堂場作品では、食べる物の描写が細かいという特徴がありますが、この作品でも、忙しさの中で食べるファストフード、恋人と一緒に作る夕飯、捜査中に藤島と共に食べるランチなど、食事ひとつにも人物の心理が巧みに表現されています。
- 著者
- 堂場 瞬一
- 出版日
- 2014-03-20
ゆとり世代と揶揄される一之瀬、新人類と呼ばれた世代の藤島、それぞれに自分達が持っている、育った世代ゆえの特徴をお互いに感じながらも尊重しあって仕事をします。藤島が、一之瀬の成長のために仕事を多くふったりと、刑事のチームワークという点がこの作品のひとつの魅力です。
また、一之瀬の同期で、郡山に派遣された城田の気持ちの変化、一之瀬と城田という若い2人の切磋琢磨して成長していく様子も爽やかに描かれています。さて、事件は、どういう方向に向かうのでしょう。
この作品は、これまでベテラン刑事や捜査1課を辞めて特別な部署で持ち味を発揮している警察官を多く書いている堂場瞬一としては異色とも言えます。真っ直ぐに刑事の道を歩んでいく、未来を感じさせる作品です。震災後に堂場瞬一自身が、未来を意識して書いたのかもしれません。一之瀬と藤島のコンビには、これからも注目していきたいものです。
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