大阪出身の女流ミステリ作家、近藤史恵。ミステリ作家としての知名度が高いですが、実は恋愛小説やスポーツ小説、はては女性向け恋愛シミュレーションゲームのシナリオまで幅広く手掛ける作家です。今回は、そんな彼女の作品をご紹介します。

日常の謎を取り扱ったさわやかな作品はいくつもありますが、この作品は日常に潜む小さな悪意がテーマになっています。帯文の言葉は「いつだって悪意はすれちがうほど側にいる」で、読後はどこか悲しい、そんな物語です。探偵役の老人は少し痴呆が入った、探偵としては似つかわしくないキャラクターですが推理のときは驚くほど鋭いのです。久里子の傍にそっと寄る老人の姿、その心の交流にも注目です。
- 著者
- 近藤 史恵
- 出版日
- 2008-06-10
この作品の魅力はなんといっても作中で描かれるフレンチの数々にあります。読んでいるだけでおなかがすく、フレンチがちょっと食べてみたい、そんな普通に思えてくることでしょう。無口でクールな三舟シェフもかっこよくてステキです。一つ一つの話がそれほど長くないので空き時間にちょっと読むのにも向いています。1作目のタイトル「タルト・タタン」を食べながら読んでみるのもいいですね。
- 著者
- 近藤 史恵
- 出版日
- 2014-04-28
清掃員が探偵?と思うかも知れませんが、17,8の女の子の視点はとてもこまやか。清掃員ならではの洞察力、目に入るものを奇麗にしたいという意識が謎を見つける大きな武器になります。捨てられたゴミや汚れからは驚くほど鮮明に、人の様子が描かれるものなのだということがとてもよくわかります。明るくて掃除の達人のキリコが、文章の中で動きまわる姿に読んでいるこちらもなんだか元気が出てきます。最初のほうはほんとうに短い小さな謎ですが、巻を重ねるごとにどんどん長く、ミステリ感も増していきます。掃除がちょっとしたくなる、そんな作品です。
- 著者
- 近藤 史恵
- 出版日
主人公は最初にスーツケースを手に入れた真美を含めて全部で4人います。働く既婚者、働く未婚者、未婚の派遣社員、未婚のフリーライター、立場は違いますがみな等しく29歳の現代に生きる女性たちです。キーとなるのはもちろん青いスーツケース。このスーツケースをバトンとして入れ替わりながら主人公たちが旅に出かけていくわけですが、旅に出かけるということは自分と向き合う一歩であると作中では描かれています。
- 著者
- 近藤史恵
- 出版日
- 2015-10-08
ロードレースと聞くと少しなじみがない人もいるかもしれません。作中でも一貫して自転車競技は日本ではマイナーな競技として書かれています。ですがもちろん、ロードレースを理解していなければ話が分からないなんてことはありません。むしろここからロードレースについて興味が出てくる、そんな構成になっています。ミステリ作品としては1人のロードレーサーの死を巡る物語ですが、青春作品として主人公が葛藤する姿、ロードレース中の選手たちの想い、レース自体の疾走感、そのすべてが味わえる作品です。特にレースシーンの描写は圧巻で、すぐにレースの世界観に引き込まれることでしょう。長編作品ですが、気が付けばあっという間もなく読み終わってしまう、そんな引き付ける魅力がこの作品にはあります。
- 著者
- 近藤 史恵
- 出版日
- 2010-01-28
いかがでしたでしょうか。ミステリといえば難解なトリック、と思われる方も多いと思いますが、近藤史恵作品はそれよりもその謎に纏わる人物たちの心情がテーマとされることが多いです。生きていく上で必ず起こるような感情のうねりが描かれているので、きっとどんな方でも楽しめると思いますよ。