川上未映子おすすめ本ランキングベスト5!

更新:2016.7.13

才色兼備。この言葉が似合う作家、川上未映子。容姿の美しさはもちろんですが、小説、詩、音楽と、その才能は多岐にわたります。関西弁で綴られた川上未映子の魅力をランキング形式でご紹介していきます。

東京都出身。作家志望。特に好きな作家は冨樫義博先生と舞城王太郎先生です。
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怒涛の関西弁を操る作家川上未映子

川上未映子の職業は一体なんなのでしょう?そう考えてしまうほどに多才です。小説家、詩人、音楽家、そして女優。自称、文筆歌手という肩書だそうですが、その一言でも表しきれているのか疑問です。音楽家としてアルバムを出したかと思えば、詩の掲載、そして小説の執筆。女優としても2つの新人女優賞を受賞してしまうほどです。

もちろん受賞歴は演技だけではありません。小説の世界での受賞歴は華々しいの一言につきます。芥川賞、中原中也賞、谷崎潤一郎賞とこれでもまだ全て書けていません。

2016年には、英語圏で最大の文芸誌「Granta」から、日本の若手ベスト作家の1人として選ばれています。川上未映子の引力は、世界的なものだということでしょう。

5位:いつだって女の子なんです。『乳と卵』

言葉を発しない姪っ子の緑子、その母にしてわたしの姉である巻子が、揃って大阪からやってきます。巻子の豊胸手術のためです。母子家庭であるこのふたりは、何があったのか言葉を交わしません。その代わりに、緑子は筆談でコミュニケーションを取ります。そんな中わたしを巻き込んだ3日間が過ぎていくのです。

巻子の妹の視線で語られる、たった3日間の出来事で、ページ数もけっして多くないのですが、その文章の中には、普遍的な人間の(主に女性の)悩みが凝縮しています。
著者
川上 未映子
出版日
2010-09-03

物語は、緑子と巻子の対比と、巻子の妹のわたしの言葉によって進みます。成長により女になろうとしている緑子と、豊胸手術により女を手に入れようとする巻子。それを見聞きするわたし。小ノートに言葉を書き喋らない緑子とペラペラとよく喋る巻子。それを見聞きするわたし。幼い女児としての悩みと妙齢の女性としての悩み。これらの対比と言葉が、女性の美しさや辛さ、悲しみ、そして強さを、あぶり出していくのです。

言葉を発しない緑子は、記録の中では雄弁です。緑子の姓に対する思考は、男が読んでもハッとさせられます。中でも一番印象に残るのは、生理についての緑子の考え。

「生理がくるってことは受精ができるってことでそれは妊娠ということで、それはこんなふうに、食べたり考えたりする人間がふえるってことで、そのことを思うとなんで、と絶望的な、おおげさな気分になってしまう、ぜったいに子どもなんか生まないとあたしは思う。」
(『乳と卵』より引用)

女性の強さもつらさも美しく抉り取る、川上未映子の記念すべき芥川賞受賞作品。男女問わずおすすめです。
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4位:愛に溢れ、哀愁漂う。川上未映子が育てた7つの花壇『愛の夢とか』

この本の中には、7つの花壇があります。それぞれが色彩豊かで、見るものの心を穏やかにさせるのですが、時折、枯れた花や、折れ曲がった花などが、見え隠れします。心の中はとても穏やかなのに、そこには確かに生と死が共存していて、悲しみや切なさが生まれます。ただ単純に綺麗なだけじゃないんだと考えさせられる瞬間です。7つの物語の中でも、特に印象的な1作品をご紹介します。
著者
川上 未映子
出版日
2016-04-15

「いちご畑が永遠につづいてゆくのだから」というタイトルの短編は、男女の機微を描いています。なんとなくではあるけれど、確かに近づいている別れの瞬間。そこに至るまでの、日常だった生活と少し変わってしまった、今の日常。その些細な変化を見事に切り取り、リズミカルに描写しています。

「結局。部屋にある電気をぜんぶつけて、その光を全部見ても、くしゃみは体のどこかへ消えてしまう。」
(『愛の夢とか』より引用)

実に詩的です。

一番素敵だと感じたのは、文章の作り方。ひと段落ごとに〇〇。で始まり、その〇〇。がそのセンテンスの意味をまとめ、さらに題にもなっているのです。文章そのものの美しさもさることながら、目で見て美しいというのは、詩ならではだと思えます。何度でも読みたくなってしまいます。

ほかの作品も、日常の中で起こりえる些細な感情の機微を、繊細に描いています。谷崎潤一郎賞受賞作でもある川上未映子初の短編集をぜひ。

3位:美しくも切ないあの頃の記憶『あこがれ』

宝箱のようだと感じる物語です。忘れてしまったことも、覚えていることも、この物語の中には繊細に、そして鮮明に描かれています。

2つの章に分かれていて、それぞれ、小学校低学年の頃の麦くん、小学校高学年の頃のヘガティーの視点で「あこがれ」というキーワードを軸に語られます。

前妻とのあいだにも女の子が産まれているという、知られざる父の過去を知り、顔も知らぬ腹違いの姉に会いに行く、ヘガティーストーリー。これは一人の女の子の成長物語なのですが、泣けて笑える、心に染み渡る作品です。
著者
川上 未映子
出版日
2015-10-21

麦くんのエピソードは特に印象的です。ミス・アイスサンドイッチと命名した、スーパーの中にある店でサンドイッチやパンを売っている女性に好意を抱くのですが、それが恋心だとは分からない、でも気になってしまい、店に通いたくなってしまう。そのもどかしい少年心を恐ろしく捉えた描写は必見です。その冒頭だけご紹介します。

「ぼくの順番なんてずうっとこなければいいのにとおもいながらぼくはまばたきだってほとんどしないで、ただひたすらにミス・アイスサンドイッチをみている。」
(『あこがれ』より引用)

この感覚、知ってるはずです。

幼い頃の視点だから感じることができることがあると思います。それは、やはりもう忘れてしまったり、あるいは印象的なことだけは鮮明に覚えていたりしますが、確実に私たちの今現在の礎になっているはず。この一冊には、もしかすると忘れてしまっていたあの頃の感情が詰まっているかもしれません。あの頃の気持ちを思い出せる宝箱を開けてみたいと思いませんか?
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2位:川上未映子の独白が心に響く『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります 』

芥川賞受賞作家の徒然なるままに書かれた日記。日記であり、詩であり、記録でもあり、恥ずかしさも厭らしさも惜しげもなく曝け出しています。目を覆いたくなったり、赤面させられたり、笑わされ、泣かされ、それらの感情があまりにも素直に出てくるので、まるで、目の前に川上未映子がいて、同じ時を共有しているかのようです。

そんな錯覚に陥るのは、やはり、事実を事実として感じたまま考えたままに綴っているからに他なりません。もとより、私はなぜか関西弁というものに妙な親近感を抱いており、川上未映子の、ゴリゴリではない関西弁が耳、ではなく目に心地よいのかもしれません。
著者
川上 未映子
出版日
2009-11-13

印象的な文を抜粋しようと思うのですが、多すぎて選べない事態に困惑してしまいます。付箋の量を見ていただきたいくらいです、と思っていたら丁度、これを書いている日と同じ日付の日記にとても素敵な文を見つけました。

2005年の11月6日です。タイトルは「人は多分、とても感動するものだ」とされていて、感動という言葉についての考察が記されています。少し長くなりますが、伝えたい気持ちが強いゆえ、ご了承ください。

「感動。感動とは何か。感動とは感動という言葉以外の何かでしょうか、感動するのが素晴らしいと感じるのはどうしてか。とかいいつつ、それは 『素晴らしい』 というのは苦し紛れの感想であって、感動自体は素晴らしくもなんとも実はどうでもなくただそこにぽくっと生まれてじんときて、そう、なんだかじんとくるというただそれだけのことで素晴らしくもなんともない感動というのも多分存在はするのだろうと思う、と思うと世界はなんと、そういえば世界はなんと、素晴らしくもなんともない感動で満ち満ちているのだろうか、という気持ちで動けなくなり呼吸を整える。」
(『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』より引用)

素晴らしくもなんともない感動。知ってる!それ知ってる!と目を見開き、声を張ってしまいそうなほど、身近にありながらも名前の無かった感動。素晴らしく感動した瞬間です。

疑問符があまり出てこないのに、どう思います?と問われているようで、数ページ進むごとに手を止め考えてしまいます。自分ならどう思うか、どう感じるか、どう考えるか。そして、この日記を読んだ他の方々が、いったいどんなことを考えたのかを考えると、さらなる気づきに出合えそうです。それは、やはり素晴らしい感動かもしれません。

1位:川上未映子が愛しい息子に、そして読者に贈るラブレター『きみは赤ちゃん』

本作は35歳の川上未映子が、初めての出産から、生まれた赤ちゃんが1歳を迎えるまでを書き記した、愛の塊です。出産を経験した方はもちろん、これから出産を控えた方、考えている方、また、出産の予定のない方、さらには、出産を経験できない男性の方々にも読んでほしい一冊となっています。

出産編と産後編に分かれていて、その壮絶とも言える体験を惜しみなく書き記しています。妊娠への心構え、つわりのつらさ、現実的なお金のこと、体の変化、溢れる愛情、本当にありありと書かれているのです。

もちろんそこには、川上未映子の考えや心の変化なども切々と書かれていて、それが心に響きます。初めての出産に挑む母としての悩み、仕事を抱える女としての悩み、それらは同じ女性だからこそ通じるもの、分かり合える部分があるのかもしれません。ですが、その純粋なオブラートに包まれていない真っすぐな言葉が、すべての女性に、ある意味で共通の悩みだとすれば、これは男性にとってバイブルにもなりえる、女性の教科書なのかもしれません。
著者
川上 未映子
出版日
2014-07-09

少し本文から抜粋していきたいと思います。これは妊娠25週だということをご主人が認識していなかった時の川上未映子の言葉です。

「こっちは毎日毎日異常事態であれもこれもまじで心配しておろおろして頭おかしくなる寸前やのに男っていったいなんやねんな!」
(『きみは赤ちゃん』より引用)

続いて、帝王切開による出産後、その痛みの中朦朧としている最中の一文です。

「傷の痛みというのは人によるんだ、ということもはじめて知った。そして、つぎの瞬間に、地震やなにか大変なことが起きてもいまの自分は息子を助けに走ることもできない、なにかあっても守ることができないのだということを思うと、その恐怖に涙がでた。」
(『きみは赤ちゃん』より引用)

子育てにおける夫婦のあり方についてはこう書かれています。

「百歩ゆずって、家事は夫が外で稼いでくる賃金と相殺してもいい。けれど育児は対等に行うべきでしょう。『育児をやってくれている』『手伝ってくれている』。そういう言葉を、女性たちがなぜ思わず使ってしまうような、そんな環境になっているんだろう」
(『きみは赤ちゃん』より引用)

共感でき、考えさせられる、切実な文章が胸を突きます。

涙がこぼれるエピソードも思わず笑ってしまうエピソードも、その全てが、生まれてきた赤ちゃんへの愛情そのものなのです。子を想うからこそ、現実を見つめ、悩み、怒り、話し合い、歩んでゆく。壮絶な出産も、マタニティーブルーも、産後クライシスも、全部が愛なのです。

おおよそ1年とちょっとの期間が、この1冊に詰め込まれています。これでもかと、さらけ出してくださった本作は育児バイブルではないかもしれません。ですが、私たちに、出産とは、女とは、男とは、と考えさせてくれるのです。

歌、演技とマルチな活動をみせる川上未映子ですが、彼女の根底にはいつも普遍的なテーマがあるように感じます。それはもちろん小説の中でも書かれていましたが、アニメーション監督の新海誠と出演していた【2016年9月10日放送のSWITCHインタビュー 達人たち】の中でも色濃く表れているのです。幼少の頃から死を身近なものと感じた、と当然のように語る川上未映子の姿は、異質に感じながらも、純粋に生きているんだなと思いました。

誰にでも共通して訪れる事柄を、独自の視点、切り口で書き説いている彼女。私たちは川上未映子の生み出した文章から、それらを読み解くことで、日常をさらに輝かしいものにできるのかもしれません。

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