なんとも不思議な魅力を持った作品の多い川上弘美の小説は、独特の時間の流れの中でストーリーが進んでいきます。ここではそんな個性的で素敵な魅力溢れる、川上作品をご紹介していきます。

著者本人によると、短編には長さ的に満たないエッセイとして書き連ねた著作集です。大人の恋の思い出についてのエッセイ作品が集められています。
大人の恋には、当然ながら別れもありますし、長い付き合いの中にはマンネリや浮き沈みなどもあるわけです。なかには、同性同士の恋愛感情などが発生するケースはあります。
また、はっきり「恋愛」というステージには至らない、かといって「友情」という状況よりはもう少し踏み込んだ感情を持つ状態もあるのです。そういった恋の思い出を中心にまとめられています。
実際の恋愛にはどちらかが正しくて、どちらかが正しくないといったくっきりとしたものは少なく、そのあたりの機微を淡々と表現されているのです。「愛している」、「好きだ」といった情熱的な言葉ではなく、好きな気持ちや、好きだったのに好きではなくなってしまった気持ちを川上弘美独特の表現で描いています。
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2009-11-13
表現は淡々としていても、取り扱っている話題は多彩です。48歳の不倫を描いた「ネオンサイン」や、他人に尽くしてきたある日、突然3日間の愛人になってしまう「かすみ草」など、激しくなにかに突き動かされて行動してしまう主婦の気持ちを大胆に描いている作品もあります。
表題作「ハズキさんのこと」は、教員をしていた頃の同僚であるハズキさんとの関係を描いた作品です。何かと居酒屋で杯を重ねて、学校運営や恋愛事情、単なる酔っ払い話題を重ねる関係でした。ハズキさんの失恋をきっかけに行った宴会では、とうとうお互いに対する恋愛感情のようなものを吐露するに至ります。結局何もなかったわけですが、数十年経ちハズキさんのお見舞いに行くときに思い出すのでした。
女性からみた恋に関する話題が中心の短編集です。主人公が好きになった、振られたといった情熱的な恋愛モノではありません。誰かが誰かを好きになったり、振られたり、つらい目にあった時の、一緒にいた時の気持ちであったり、そんなことを散りばめた作品集です。
「染谷さん」はいんちき霊感商法の商品として売る石を毎日河原で拾っている染谷さんの話です。自称霊媒師の彼女は毎日の生活に疲れているわたしの気持ちを見抜いているかのように、「割りなさい」といって生卵のセットを渡してくれます。「わたし」は卵を割るにつれ、だんだんと興奮してきて、割り終わった後には痛快な感じになるのです。
表題作「パスタマシーンの幽霊」は、彼氏の家にあるパスタマシーンに女の影を感じ取った「あたし」の話。でもそれはばあちゃんの形見だそうです。そして死んだ後も出てきて次々パスタを作ってくれるといいます。「あたし」は彼氏の家に行かなくなり、連絡も来なくなったので、別れることしました。その彼氏と別れて半年後、「あたし」の家にばあちゃんが出てきたのです。そして料理を教わります。
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2013-05-27
その他、急にモテるようになって複数の人と身体を合わせるようになったけれど、彼らの名前を万年筆で試し書きしてときめかないことに気づいた話。都合のよい女として扱われていることをはっきりと指摘してくれるゲイの友達の話など、切り口が多彩な物語が満載です。
きれいな恋愛話だけではない、女性の複雑な気持ちを川上弘美が淡々と素直に表現しているところに共感が得られるのでしょう。
さよと仄田くんは小学4年生です。
さよはお父さんとお母さんが離婚してお母さんと2人で暮らしています。お母さんのお手伝いをきちんとするしっかりした子です。
仄田くんもお父さんとお母さんが離婚して、こちらはお父さんとおばあちゃんと暮らしています。物知りですが、弱々しくクラスには友達はほとんどいないのです。
街の図書館で、さよは不思議な本に出会います。それが「七夜物語」です。「七夜物語」は最初に本棚から手に取ると、びりっとします。読んでいるときはとても面白いのですが、本を閉じると中の内容は一切覚えていないのです。
さよと仄田くんが一緒にいるときに、「夜」が始まります。それぞれの「夜」は家事の大切さだったり、「自立」の必要性だったり、「物を大切にする心」だったりするのです。そんな七つの「夜」を経験し、しっかり者だったさよは、より自立した少女に成長し、弱々しかった仄田くんは自分から友達に入っていける少年へと成長します。
- 著者
- 川上弘美
- 出版日
- 2015-05-07
それぞれの「夜」で2人の少年少女はもがきながら、さまざまなことを考え、苦しんで「夜」の課題をこなしていきます。一筋縄ではいかないそれぞれの試練の描写が、本作品に苦みを効かせ、物語として深みを加えているのです。
「七夜物語」を全て体験し、物語も読み終えたさよと仄田くんの2人はそれぞれ大人への階段を上りだし、友達関係や親との関係を少しずつ変化させていきます。
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2012-10-23
主人公・ニシノユキヒコの、中学生から五十代までの恋愛遍歴が書かれた物語です。
ルックスが良くて仕事も出来て、女心が手に取るようにわかる天性の女たらし、ニシノユキヒコ。女性の望んでいることを、心の奥深くからすくい上げてしまう、出会った女性たちはそんなニシノにすぐ魅了され関係を持ちますが、なぜか最後には皆ニシノの元を去っていきます。
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2006-07-28
ニシノが少年の頃、姉が幼い子どもを亡くし、悲しんでいる姿を見てニシノは姉を慰めます。ニシノが初めて女性に対して「与える」ということをした出来事で、女性の心を読み、与え続けるニシノの原点になります。
そんなニシノから、なぜ女性たちは去っていくのか。ニシノと交情を持った10人の女性たちがニシノの思い出を語ります。恋に落ちたきっかけ、そしてニシノの元を去ることになった理由。そこには、女性を魅了しながらも、心から愛することができない、ここは自分の居場所ではないのではないかというニシノの苦悩が感じられます。
本当の愛、自分の居場所、そんなものを探し続けているうちに、いつの間にか「女たらし」と言われる程の女性遍歴を重ねることになったのではないか。それがニシノの冒険であり、恋であったのかなと感じます。
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2011-02-26
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2001-04-25
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2008-02-28
- 著者
- 川上弘美
- 出版日
- 2001-10-01
- 著者
- 川上 弘美
- 出版日
- 2004-09-03
川上弘美のおすすめの文庫本をご紹介しました。どの作品も、静かで心地よい文章がとても魅力的です。気になる作品があれば、ぜひチェックしてみてくださいね。