老人が主役の冒険SF
物語の主役は、架空世界での冒険小説を書いている作家で、もうすぐ70歳になる福井一男です。ある日、客員教授を務めている大学の学生、若葉快児から手紙が届きます。
そこにはなんと、自分の架空世界に行きたいから、念力修行のために98万用立てて欲しいということ、それが叶うなら、先生の家で架空世界行きを手伝ってほしいということが書かれていました。
福井は迷ったものの、応じることにしたのです。その結果、若葉が作り上げた「カイジ・ワールド」に一緒に入ってしまいます。何が何だかわからないまま、奇妙奇天烈な日常に流されていくうちに、猫とロボットを味方にして……。
- 著者
- 眉村 卓
- 出版日
「カイジ・ワールド」や猫やロボット、それぞれが非常にユーモラスで、なんとなく笑ってしまわずにいられないあたりが、タイトルである『いいかげんワールド』につながるのではないでしょうか。
老人を主役にした、わくわくするようなSF冒険小説は、他にあまりありません。分厚い本ですが、堅苦しくなく、さらりと読めるのでおすすめです。
日常から始まる不思議な話
15編からなる短編集。そのどれもが日常からいつの間にか少し違う世界に入り込んでしまうようなお話です。ここでは第2話の「ピーや」をご紹介します。
人付き合いのあまりない男は、猫を飼っていました。猫には男だけが日常でしたし、男には猫だけが日常でした。そんな中、男は交通事故で死んでしまうのです。
猫は男を待ち続けます。やがて月の光が猫の瞳を照らし、猫は自分を撫でてくれる男の手のことを考えました。すると、手が浮かんでいました。ひたすら男のことを考えると、五体揃った男のシルエットが浮かび、男と猫の生活は続いていくのですが……。
わずか4ページという非常に短い話ですが、涙なしには読めません。特に猫好きにはおすすめです。
- 著者
- 眉村卓
- 出版日
- 1994-10-20
そのほか、無能な新入社員と蝶の関係を描いた「蝶」、鳥取に左遷されたサラリーマンが砂丘で不思議な美しい女と出会う「砂丘の女」など、どれも少し不思議で素晴らしいお話ばかりです。短い作品が多いので、時間があまりない方にもおすすめの作品です。
オフィスショートショート39編
この本で描かれているのは、上司との付き合い方や、昼休みや、職場恋愛など、ごく普通の職場なのですが、ちょっと不思議な展開を見せていきます。どんでん返しが待っていたり、急展開を見せたりするわけではなく、自分の周りにもこんな人がいるなぁと思えるような、淡々とした短編集です。
若い新人だったころ自分が魔女と呼ばれていたけれど、新人が入るにつれ、いつの間にか自分のニックネームが消えていく「魔女のとき」、お金があるのによれよれの恰好をする男を素敵だと言う同僚と、そうは思えない自分を比較する「同僚」など、39編が集められています。
- 著者
- 眉村 卓
- 出版日
- 2013-11-14
文庫版背表紙にはオフィスSFという表記もありますが、SFという気負いはなしにして、まったりと読むことができる短編集です。お昼休みの合間に、お茶を飲みながらまったりと読んでいただきたい作品です。