新たに見えてくる、壮大な物語のかけら「V」シリーズ
森博嗣の推理小説シリーズの2作目となるのがこの作品です。全10巻となっており、少々長いですが最終巻を読み終えた時の衝撃がものすごいと評判です。
まず作品の内容ですが、登場人物の一人である保呂草順平が、友人たちと立ち会ってしまった事件を回想するというものになっています。物語のカギを握るのは、この作品のキーマンで保呂草の友人の一人でもある瀬在丸紅子です(「V」シリーズのVは、venikoに由来しているそう)。
瀬在丸紅子はとある元旧家の令嬢で自称科学者を名乗る、頭の切れる女性です。その頭脳故に探偵役までこなしてしまいます。私立探偵を営む保呂草とは、お互い近所に住んでおり、警備や捜査の支援を頼むこともある関係性です。そして、二人の向かうところで次々と殺人事件が発生し、それを解決してゆくことで物語が進行していきます。
- 著者
- 森 博嗣
- 出版日
- 2002-07-16
このシリーズの見どころですが、ひとつは作者が挙げる「SSS」というコンセプトにあるでしょう。SSSとは、シンプル・シャープ・スパイシィのこと。確かに、ミステリーというわりにはその構造やトリックは比較的簡素なものが多いです。その分、人物の心理描写や関係性の変化など、行間を読ませる要素がふんだんに描かれています。簡潔でありながら鮮やかな装飾が施されているのですが、シャープ要素はどこにあるのでしょうか。
それはやはり、他の作品とのつながりなのでしょう。森作品ではすっかりお馴染みとなりましたが、作品の垣根をまたいで関係性が明らかになっていく展開と視点は、非常に痛快で鋭さを持っています。瀬在丸紅子と保呂草順平は「四季」シリーズなどにも登場しており、特に本作品10作目の『赤緑黒白』は最終巻にして、シリーズの関連性が強く感じられる、ラストにふさわしい作品となっています。ミステリーとしての展開はシンプルですが、やはり作品を越えた決着点が明らかになっていく様が爽快です。
また、「S&M」シリーズとは違って巻と巻が内容的につながっていたりするので、順番に読む方が無難です。
森博嗣が手がける近未来!舞台は22世紀!「百年」シリーズ
全3作となっているこのシリーズは、出版社の分類ではミステリーに属するのですが、中身はミステリーというよりはSFもので、近未来小説となっています。森博嗣の作品としてはあまりミステリー要素がなく、作者の味を出しつつも他の作品とはちょっと違った雰囲気がするシリーズとなっています。
時は2113年。21世紀初頭の文明はほとんど廃れて博物館で展示してしまうくらいに、あらゆる技術・文化においてブレイクスルーを果たしています。大きな国家がひしめき合っているわけではなく、比較的小規模にまとまった都市国家のような国が各地に点在している世界がこの物語の舞台です。
物語を進めるのは、小柄な日本人であるサエバ・ミチルと、背丈の大きな「ウォーカロン」のロイディです。エンジニアライターであるミチルはパートナーとしてロイディを引き連れ、各地をめぐっていきます。第一作では、とある地域に不時着したミチルとロイディがある変わった国に招かれ、そこで殺人事件が起きてしまいます。このようにして、ミチルとロイディのいるところ事件アリ、といった感じで次々に事件が起こっていくのです。
- 著者
- 森 博嗣
- 出版日
- 2004-01-28
ところで、「ウォーカロン」とはなんぞや?という事ですが、これはこの世界に存在するヒューマノイドとのことです。例えていうなれば、スターウォーズに出てくるC3‐POのようなもの。テクノロジーが発達したこの世界では、人間のサポートは自動で動く機械が行うようになっているんですね。この設定は森博嗣が独自に作り出したものであり、ウォーカロンの他にも、様々な近未来的ガジェットが登場します。事件の手口やトリックにもこのガジェット類は大きく関わっているので、この作品でしか味わえないドキドキがありそうです。
また、森博嗣のシリーズは作品を越えてあるつながりを持っているのが特徴的ですが、この「百年」シリーズには他の作品との関係はそこまでありません。ほんの少し示唆的な部分はありますが、この作品だけで完結しています。
以上、森博嗣のおすすめシリーズを5つご紹介いたしました。森作品の魅力はなんといっても「S&M」シリーズや「四季」シリーズなどの理系の分野をふんだんに盛り込んだ緻密なトリックや展開と、作品と作品を往来する壮大なストーリーですが、「スカイ・クロラ」シリーズや「百年」シリーズなど単体でも作者の世界観を楽しめるものがたくさんあります。ぜひこの機会に読んでみてはいかがでしょうか。