3位:甘くて癒される、女性におすすめの軽やかミステリー
登場するのは小鳩君と小左内さんという、どうってことのない一般市民「小市民」を目指す二人の高校生です。二人は恋愛関係や依存関係ではなく、互恵関係「戦略的なパートナー」を目指しています。本作はそんな二人の日常に起こる些細な謎を解決する青春ミステリーです。
シリーズのタイトルには「いちごタルト」「トロピカルパフェ」といったスイーツの名前がついており、そのタイトル通り、小左内さんが小鳩君をスイーツの食べ歩きに誘うなど甘い一面もあり、軽いタッチで描かれています。
- 著者
- 米澤 穂信
- 出版日
- 2004-12-18
シリーズ第一弾の「春季限定いちごタルト」は5作の短編で構成されており、それぞれが独立したストーリーのように見えますが、読み進めると連なった長編として解決編へと繋がっていきます。
収録作品のひとつ、「おいしいココアの作り方」では友人健吾から一手間かけたおいしいココアが振る舞われるのですが、ココアを作ったキッチンのシンクが乾いており、ココアを溶くのに使ったスプーンしかなく、健吾が如何にして「おいしいココア」を作ったのかが謎解きのテーマとなります。
何とも日常感漂う事件の数々、肩肘はらずに読めるのですが、そこここに張り巡らされている伏線とその回収の方法は見事です。
始まりから最後まで、可愛く柔らかい空気を楽しみつつ、テンポのよい謎解きが繋がっていく心地よさを味わって下さい。
2位:どんな時代でも共感を得られる、チクッと胸が痛くなる異色の青春小説
ユーゴスラビアから来た少女と高校生たちの交流を描いた青春小説です。
ある雨の朝、主人公の守屋は外国人の少女マーヤと出会います。行くあてのない彼女は同級生の家が営む旅館に住むことになり、そこから彼女との交流が始まります。
外国人が見せる大人びた言動や母国に対する考え方は、平和慣れしてしまっている日本の高校生にはとても新鮮で、彼女を通して守屋たちの心の変化を感じることができます。
- 著者
- 米澤 穂信
- 出版日
- 2006-06-10
マーヤはやがて、紛争の起こる母国ユーゴスラビアに帰国するのですが、そこからこの物語の謎解きが始まります。内紛によりユーゴスラビアは分裂しており、マーヤがどの国に帰ったのかがわからないのです。最終的にマーヤとの会話をヒントに彼女の居場所を探し出すのですが、そこでマーヤの故郷から手紙が届いていた事実が判明し……。
最後に訪れる、何ともやりきれない、胸がギュッと締め付けられる真実。物語を通して散りばめられた伏線の張り方や、それを解決する様も非常によくできていて完成度の高さを楽しめると同時に、心に響く甘く切ない小説です。
1位:米澤穂信の最高傑作!外れのない短編集!
山本周五郎賞受賞作である本作は米澤穂信作品の最高峰とも言えるでしょう。
「夜警」「死人病」「柘榴」「万灯」「関守」「満願」の6篇から成る本作は、交番勤務の警官やサラリーマン、中学生姉妹、フリーライターなど、日常に生きる人々に起こる奇妙な出来事が描かれています。
- 著者
- 米澤 穂信
- 出版日
- 2017-07-28
表題作「満願」は、主人公である弁護士・藤井が学生時代に下宿していた大家の妻・妙子が殺人罪で問われ、その事件の弁護を引き受け、真相を追うというサスペンスストーリーです。
妙子が殺したのは借金を抱え派手に遊び歩く夫・英司。正当防衛による殺害であると主張し妙子の弁護を行う藤井でしたが、裁判所からは夫の借金から逃れるための犯行と判断され、実刑を免れることはできませんでした。
しかし、その殺人に隠されていた本当の意味は全く別のところにあったのです。
どの作品も表向きの出来事とは異なる真相が隠されており、その意外性や、何気ないヒントから真実にたどり着く過程が非常によくできています。
青春小説から出発した米澤穂信ですが、本作では大人の心理や思考がしっかり描かれており、深みのある大人も満足の作品に仕上がっていると言えるでしょう。