日常に織り込まれた伏線や名言が魅力の本多孝好
1971年生まれ、東京都出身の小説家。小学生の頃からずっと読書が大好きで時間のある時は2日に1冊のペースで常に読んでいたそうです。
そんな本多孝好の転機は23歳の時、もともとの夢である弁護士になろうか大学卒業間近に意識し始めた小説家になろうかと迷っていた頃に、「眠りの海」で小説推理新人賞を受賞します。
そこから本格的に作家への道を志し、約5年後に短編集『MISSING』でこのミステリーがすごい!トップ10入りを果たし、定期的に仕事が舞い込むようになりました。
何の変哲も無い日常を平易な文章な文で綴るという作風の本多孝好。言葉で多くを語るというよりは短い文章で想像を膨らませるようなものが得意で、日常生活の中に様々な伏線や哲学的な言葉を織り込み、読者を引き込んでいきます。
彼は「生と死」という深いテーマを追求するところから、現実世界に沿うようなものを作り始め、その後は娯楽性の高い作品も作るようになるなど、時代によって様々なテーマや意思を感じさせてくれる作家です。
5位:本多孝好の描く、ちょっと変わった家族の物語
家族をテーマにした4つのストーリーが収録された短編集です。どの家族も普通とは少し違う、一見いびつな家族ですが、お互いを想いやり家族になろうとする姿が印象的です。確かにそこには“本物”の家族の姿があり、微笑ましくもあり感動的で、ついつい涙腺が緩む素敵な作品となっています。
- 著者
- 本多 孝好
- 出版日
- 2013-06-21
表題作の「at Home」は2015年に竹野内豊主演で映画化もされ話題になった作品です。主人公“僕”の家族は、父さん・母さん・僕・妹・弟の5人。父さんの仕事は空き巣泥棒で、母さんの仕事はお金持ちを狙った結婚詐欺師、中学生の妹は家の家事一切をこなすしっかり者で、小学生の弟は学校にもあまり行かずゲームばかりしています。そして16歳の僕はそんな家族をまとめながら、ある仕事に精を出す日々を送っていました。
家族の食卓では、和気あいあいと次のターゲットの話が繰り広げられます。どうにも普通じゃないこの家族ですが、それなりに平和な日々を送っていました。それがある日、母さんに問題が発生してしまい…。
作品内のあちこちにちりばめられた伏線が、最後にひとつになる瞬間、なんとも言えない感動で、胸がいっぱいになる作品になっています。
他にも、主人公“俺”と血の繋がらない娘との、ある日の日曜日を描いた「日曜日のヤドカリ」。借金返済に追われている主人公“私”が、妊娠中の外国人女性と一緒に暮らすことになった「リバイバル」。甥っ子の身体に虐待の跡を見てしまった主人公“僕”の行動を綴る「共犯者」の全4編が収録されています。
本多孝好の作品をお得に読む
4位:ミステリーな恋愛小説
ミステリー要素の強い4つの恋の物語が収録された短編集です。その中のひとつ「イエスタデイズ」は、2008年に塚本高史主演で映画化され、これが本多孝好の小説初の映像化作品となりました。
表題作である「FINE DAYS」は、とある高校が舞台になっています。主人公は隠れてタバコを吸っているのが見つかり反省文を書かされますが、その時に同じ教室で、やはり反省文を書かされていたのが不思議な魅力漂う“彼女”です。ミステリアスな転校生の彼女には“人をたたる力がある”という噂が流れていて……。
ホラー要素も含まれるミステリアスな内容になっていますが、登場人物たちの会話がテンポ良く進み、どこか爽やかさも残る作品になっています。
- 著者
- 本多 孝好
- 出版日
- 2013-04-25
「イエスタデイズ」は、主人公が病気で余命少ない父親から、昔別れた恋人を探して欲しいと頼まれるという物語。ノスタルジックな雰囲気と切なさが漂い、不思議な世界にどんどん引き込まれてしまう作品です。
その他、妹の死に責任をかんじて苦しんでいる男勝りでクールな女性が主人公の「眠りのための暖かな場所」、アンティークショップの老婆が語る、ガラス職人と一座の女の切ない恋物語を中心に描く「シェード」が収録されていて、どの作品も読み応えがあり、時間を忘れて読みふけってしまいます。