巧みに張り巡らせた伏線で読者を一定方向に導き、最後に用意した大どんでん返しで見事に読者を裏切る道尾作品。作品ごとに新鮮な驚きを与えられる読者は、その虜になってしまうのです。そんな道尾秀介のおすすめ作品をご紹介します。

- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2008-07-29
本作には6つの短編が納められていますが、『鬼の跫音』という題の作品はありません。この言葉は5作目の「冬の鬼」という作品の中に出てきます。作品の冒頭で主人公が「遠くから鬼の跫音が聞こえる。私が聞きたくないことを囁いている」と日記に綴るのですが、この言葉が全ての作品の主題となっているのです。
また、全ての作品にSという人物が登場しますが、それぞれの作品に登場するSはまったく別の人物です。全てのSは主人公に人の道を踏み外させる加害者の役割を担った後、主人公によって被害者へと変化します。そして主人公には、道を踏み外す直前に接した動物や鳥、昆虫といった自然界のものの記憶がなぜか鮮明に残るのです。それは狂気の象徴であるとともに最後の理性の残像でもあり、封印した記憶の底から主人公を苛む『鬼の跫音』となります。
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2011-11-25
最初の「鈴虫」という作品では、主人公の男は11年前に友人のSという男を山奥の土の中に埋めた時、そこで鈴虫が鳴いていたことをずっと憶えています。その後結婚して息子が生まれ、幼い息子が鈴虫を飼い始めた時、男は鈴虫が自分に何かを囁いているのを聞くのです。
物語は読者の予想を裏切り、それぞれの主人公たちは意外な結末へと向かいます。簡潔に研ぎ澄まされた文体の中に人間の複雑な愛憎が凝縮された、ミステリアスで濃密な短編集です。
本作は6章からなる短編で構成された短編集です。それぞれの物語の主人公たちは傷ついた心を持ち、心に闇を抱えながら生きています。
最初の話は、30年前に自殺した父の後を継ぎ印章店の店主をしている男の話です。男の母は5年ほど前に認知症を発症し、毎日紙を鋏で切ったり絵を描いたりして過ごしていました。ある夏の日、母が描いた絵を見て男は驚愕します。その絵は30年に一度しか咲かない笹の花の中に1組の男女が描かれていました。男は30年前の夏、笹の花の中で自分が犯した罪を思い出し、それを母が見ていたことを知るのでした。
次の物語は前の物語の一部を受け継いで進みます。それはまるで罪や哀しみの連鎖を見ているようですが、物語を読み進むうちに哀しみの中に幽かな光が差しているのを感じ取ることができます。
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2012-10-19
風媒花とは、風を媒体として受粉する花の事で、虫媒花とは虫を媒体として受粉する花の事です。光媒の花というものは現実には存在しません。光を媒体として咲く花とは、人間の事なのです。
道尾秀介の得意とするミステリー要素もあり意外な結末に驚かされながらも、美しい文体で静かな感動を与えてくれる作品です。
我茂洋一郎と水城徹は大学時代からの友人です。共に相模野医科大学の医学部を卒業し、徹は研究員として大学で働いており、洋一郎は附属の大学病院に勤務しています。洋一郎の妻の咲枝と徹の妻の恵も同じ大学の同級生で、洋一郎の息子の凰介と徹の娘の亜紀も同じ小学校の同級生です。お互いの家も近所にあり、家族ぐるみで仲良く付き合ってきました。
しかし咲枝は、数年前から患っていた癌のため亡くなってしまいます。妻の死後、洋一郎は睡眠薬を飲むようになり、凰介も学校を休んでいました。そんな時、亜紀から凰介に電話があり、気晴らしになるから小学校の運動会に来るように言われます。
洋一郎と共に運動会に出かけ凰介は久々に元気を取り戻しますが、亜紀には元気がありませんでした。亜紀は具合が悪いと言って1人で先に帰ってしまい、徹と恵が仕事で不在だと知っている洋一郎は亜紀の様子を見に行くと行って凰介を先に帰します。その日の夜、恵は徹がいる大学の研究棟の屋上から投身自殺をするのでした。
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2009-08-20
後日、洋一郎と凰介が徹の家を訪れると亜紀はなぜか洋一郎を避けます。徹の精神状態も普通ではなく、精神安定剤を服用していました。徹は洋一郎に、恵の浮気と亜紀が本当に自分の娘なのかを疑っていることを打ち明けます。その時家から飛び出した亜紀は、走っている車に自ら飛び込むのでした。幸い軽症で命に別状はありませんでしたが、凰介は亜紀に何か秘密があることに気付きます。さらに凰介は、父の洋一郎の行動が奇妙な事にも気が付くのでした。
咲枝の死を境に、凰介の周囲は明らかに異常になります。何かに怯える亜紀を救いたいと行動を起こすうち、凰介はお互いの家族の隠された真実を知ることになるのでした。
本作には序盤から随所に言葉のトリックが仕掛けられているのですが、最後まで気づかず読み続けてしまいます。最後に全ての謎が解き明かされたとき、思わず最初の1ページ目から読み返してしまうでしょう。本格ミステリ大賞を受賞した本作は、ミステリの王道を行く大作です。
主人公は詐欺師の武沢。武沢は根っからの詐欺師というわけではなく、友人に騙されて借金を背負うことになった過去を持ち、そのことをきっかけに詐欺組織の一員となって働くことを余儀なくされた男です。
そんな武沢が直面した、一人の女性の死。そのことをきっかけに武沢は組織を抜けます。生まれ変わってもう一度生きてやろう、ただし今度は負けない、という決意のもと、武沢は相棒のテツとともに詐欺師として独り立ちすることに。そして武沢の前に一人の少女が現れたことから物語は大きく動き出します。
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2011-07-15
様々な過去を持つ登場人物たちとの奇妙な共同生活と、巻き起こる数々の事件。
散りばめられた伏線と、最後の最後に待っている落とし穴。快感すら覚えるこの「騙し」は道尾秀介ならではと言えるでしょう。騙されないように警戒しながら読み進めたのにもかかわらず、最後にしてやられます。
伏線が最後にきっちりと回収され、「騙された!」と思うと同時にすっかり納得もしてしまう。そして随所に織り込まれた、心にズシンとくる登場人物たちのセリフ、じんわりと胸が熱くなり、読後感は最高です。
どうしてこんなに読者を翻弄してくれるのだろうと、感動すら覚えるこの作品。ぜひ道尾秀介の手のひらの上で転がされてみてください。
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2016-01-21
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2014-08-12
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2010-07-08
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
- 2012-01-28
- 著者
- 道尾 秀介
- 出版日
道尾秀介作品をご紹介しました。道尾作品には何かで悩む子どもがよく登場します。大人の読者は、子どもの頃周りにあった風景や物や音を思い出し、悩んでいた自分も思い出し、切なくなるのです。そして大人になっても欠点だらけの自分がなぜか愛おしく思えるのです。