3位:宮木あや子の「雨の塔」からは、マフィンの香りまで漂ってくる『雨の塔』
資産家の家庭に生まれた女の子だけが入学できる特別な全寮制の女子大。そこでは衣食住は完備されていて、好きなだけ手に入れられる。しかし、外部からの情報は入らず、自由に外には出られない。そこはまさに閉鎖的な空間。そんな孤島に、4人の少女が暮らしている。それぞれにあるのは、後ろ暗い背景と孤独感。4人は同じ匂いを感じ、惹かれ合う。その中で起こる嫉妬と執着のせいで、4人は狂っていく……
- 著者
- 宮木 あや子
- 出版日
- 2011-02-18
読めば読むほど、物語へ移入しようとすればするほど、少女たちの気持ちが分からなくなっていきます。
籠の中の鳥が飛び立てず、決まった顔ぶれとだけ触れ合う日々を過ごしている様子は、あまりにも退屈そうです。ですが、その世界しか知らない4人にとっては、その中だけが自分のいても良い場所であり、唯一の居場所でもあります。
いかに退屈で、いかに危なかしげか。見ていてひやひやするほど、儚い。世界がこの4人で構成されているような錯覚を起こすこと間違いなしです。
大人の女性に向けた、少女時代を思い起こさせる物語です。
2位:ワカマツカオリがイラストを描く『セレモニー黒真珠』
「お葬式のご用命は、真心と信頼の旅立ち・セレモニー黒真珠へ」。そんな謳い文句のおかげで、お葬式の光景がありありと目に浮かびませんか?
町の葬儀屋である、「セレモニー黒真珠」。しっかり者で働き者のアラサーである笹島と、銀縁眼鏡をかけて喪服を着こなす木崎、何か怪しいところのある派遣で新人の妹尾という、異色の3人。
- 著者
- 宮木 あや子
- 出版日
- 2011-10-22
彼らが行うのは、死人との悲しいお別れをそっと見守ってあげること。生きているうちに言っておきたかったこと、してあげたかったことが遺族や葬儀に参列している人の口から出るのを、そばにいて見ていてあげることです。
お葬式に対しての思い入れがある、3人の登場人物。人が亡くなるということを、3人それぞれの視点から描き出されます。
故人への気持ちが良いものであれ悪いものであれ、それで最期なのだと考えると、せっかくならキレイに見送ってあげたい。個性的な葬儀屋ですが、人が死ぬということを考えさせられ、こんな見送られ方をしたいと思うような、心温まる作品です。
1位:宮木あや子デビュー作。斉木久美子によって漫画化も『花宵道中』
愛しているの一言が、どうしても伝えられないような恋を、したことがありますか?
遊女は男に抱かれることが仕事。仕事だから、何も感じない。誰かに惚れるなんて、まっぴらごめんだ。そう思っていたはずの遊女たちが、ふとしたきっかけで人に恋をする。
- 著者
- 斉木久美子
- 出版日
しかし、彼女たちを待っているのは、愛する人の前で別の客に抱かれること。初見世の夜を違う男の腕な中に収まること。自分の思いとは裏腹な、現実という残酷な世界。実の弟に禁断の恋をしたり、自分の姉女郎に欲情したりする遊女もいるが、変形した愛も、もちろん認められない。
誰かを愛しても、その人のものにはなれない。自分のものにもできない。それが、その仕事をする女の宿命だとしたら、一体どうしたら良いのでしょう。
男たちに夢を見せることが遊女としての生き甲斐。それ以上に望むなんて何もない……様々な理由から遊女になった女性たちの、プライドと淡い恋心とのせめぎ合いは圧巻です。
江戸末期の遊郭・新吉原での、悲しい宿命を背負った遊女の切ない恋を描いた、官能かつ純愛の物語です。