分かりやすく軽快ながらも、その中身は人間愛と優しさに満たされている-そんな重松清の作品。幅広い年代の人から支持され、同年代の作品を多く扱っていることから小中学生からも強い支持を集めています。今回は中学生にぜひ読んでほしい15冊をランキング形式でご紹介いたします。

- 著者
- 重松 清
- 出版日
いつの時代でもいじめはよくないです。しかし、いじめのない時代はないですし、いじめに対する特効薬もありません。それでも重松清は静かに熱い想いを小説に込めています。
いじめがあると、被害者の家族はいてもたってもいられないでしょう。先生や学校に相談したところで解決することは少ないです。重松清も短編集『ナイフ』にその答えを記しているわけではありません。本書のどの短編も、いじめがなくなったといった展開ではないのです。どの作品においても、子どもやその親それぞれが苦しんだ末に、いじめを乗り越えようとしていることを感じます。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2000-06-28
表題作「ナイフ」では、父も自身がびくびくしていた中学生の頃を思い出します。しかしある時、露店で酔って折りたたみ式サバイバルナイフを購入したのです。ナイフを持ち歩くことで、いつでも人を殺せるという自信が芽生えます。
父は息子のいじめに向かい合い、正直な気持ちを親子で交わすことができたのです。父は息子にそのナイフを託そうとしました。しかし、息子は断ったのです。父はそこに、この状況を乗り越えようという息子の決意があることを知ります。
このお話もその後どのような展開になったかはわかりません。でも、きっと父も子も顔をあげて、胸を張って生きていくんだろう、と想像ができるのです。
表題作「ナイフ」や、本書に収録されているその他の短編を読むと、どの作品にも共通して言えることがあります。世の中にはいろいろな形のいじめがあるが、いじめられた子どもたち、あるいは大人を支えるのも、結局は家族なんだということです。本書は家族がお互いを認め合い、支え合うあう物語なのです。そんな重松清の、人生に対する静かな応援歌をぜひ読んでみてください。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2002-06-28
普通のサラリーマン家族にとって、一戸建ての家を持つということは、成し遂げるべき夢でした。ニュータウンにはそんな家族の物語がつまっています。
山崎さんはくぬぎ台ニュータウンに住んでいます。都心から私鉄で2時間。都心への通勤は往復2時間です。そんな山崎さんも長年勤めあげてきた銀行を定年退職になり、もう通勤の必要はありません。定年になって改めて街を見回すと、なんと暇な街なのか。住むところしかないニュータウンは定年の身にとっては暇の極地でした。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2001-02-15
暇を持て余している山崎さんは毎日日課の朝の散歩に出かけます。朝の散歩には似たような境遇の仲間といつも出会うんですね。特に待ち合わせしているわけではありませんが、いつも一緒になります。同じ時期に家を購入した似たようなサラリーマン家庭がいるわけですね。
こんな、何の変哲もない定年後のニュータウン生活であっても、やっぱり人生には多事あります。嫁姑問題や、夫婦の離婚、居場所のない父親などです。ニュータウンで生まれるその話題にもその人の人生やドラマがあります。他人にとっては噂話でも本人たちにとっては人生そのものです。そして、ニュータウンを離れる人がいたり、新たなメンバーが加わったりして、ニュータウンもまた変わっていきます。
重松清は多くの家族の物語が詰まったニュータウンや、ニュータウンに住まう定年を迎えた元サラリーマン家族達の日常を描くことで、実は定年後の人生を応援しているのではないでしょうか。定年を迎えたら終わりではない。そこからまた始まるのです。そんな人々が住まうニュータウンそのものもまた新たにかわっていくのだと思います。
新たな変化を応援する『定年ゴジラ』は、定年だけではない、様々な人々の人生の区切りが、新たな始まりなんだ、といった前向きな気持ちにしてくれる人生応援物語です。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2004-06-27
物書きであるわたしが、小学4年生のときのマコトとの思い出を『くちぶえ番長』として書くことで、4年生を終えるときに再び転校してしまったマコトの消息を探しだそうとする物語です。忘れられない友情と淡い恋心を感じた少年時代として、マコトを中心とした小学4年生の思い出を爽やかに描いています。
ツヨシが小学4年生のとき、クラスに転校生がやってきます。マコトという女の子でした。マコトはツヨシのお父さんの小学校時代の親友の娘だったのです。しかし、お父さんの親友だったマコトのお父さんは病気で亡くなっていました。
マコトは一輪車をはじめ、スポーツが得意な女の子で、熊野神社の下から8つ目の枝までだって上ることができます。転校してきたときの挨拶がまたかっこいいのです。「私の夢は、この学校の番長になることです」と宣言します。番長を目指しているだけあって、マコトは誰にでも優しくて、いじめっ子には誰よりも強い女の子でした。それはお父さんとの「泣きたいときにはくちぶえを吹け」という約束があったからかもしれません。くちぶえを吹けば涙が収まるのです。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2007-06-28
マコトと出会ったばかりのツヨシは、低学年の子が上級生にイジメられていても、見て見ぬふりして逃げ出そうとしちゃうやつでした。けれどもマコトのおかげで勇気や友達としての思いやりを身につけ大きく成長するのです。
子供向けに書かれた物語ではありますが、小学4年生を子どもに持つような世代が読んでも、しんみりとする、でも爽やかな気持ちにもなる物語だと思います。
あなたの小学4年生時代を改めて思い出し、あのころの友情や淡い恋心も思い出してみてください。
人の死は、生きている人が受け止めるものですよね。重松清の『卒業』は、残された者たちの身近な人の死の受け止め方を短編にまとめています。
人の死が、残された家族に大きな寂しさを与えるというのとは少し異なります。残された人は、亡くなった人の生きざまを受け止め、そしてそれぞれの人生を過ごしていくのです。そういったことを重松清は『卒業』で静かに熱く語っていきます。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2006-11-28
課長代理である渡辺の会社に、突然、「亜弥」が訪ねてきます。亜弥は「学生時代」の親友だった伊藤の娘さんだったのです。でも、亜弥が母親のお腹の中にいるときに伊藤は自らの命を絶っていました。
母親はお腹の中の娘と自分を遺して逝ってしまった伊藤のことを娘に語っていませんでした。亜弥はもっと話が聞きたいと思い訪ねてきたわけです。渡辺は思い出を振り返りますが、社会へ出てからそれぞれの世界へ進み、付き合いも疎遠になっていった伊藤との思い出は、ネタがつきています。
一方、亜弥の現在のパパは亜弥との思い出を辛抱強く語りかけていくのです。
「死」そのものや、逝ってしまった人の思い出よりも、生きている人の想いのほうが大きいんだということを渡辺や亜弥のパパ、ママが亜弥に伝えていくのです。
自分の親や親しかった者の死をどのようにとらえたらよいかわからない。けれども元気だったころにはわからなかった、あるいは知らなかったことに出会えた時、亡くなった人の想いが伝わってきて、心が晴れ晴れとする物語が集められています。
「死」をとりあげながら、生きていたころのわだかまりを取り除き、遺された家族も少しだけ前向きになっていきます。それを読んだ私たちも涙の中に笑顔になれる、そんな物語が『卒業』には揃っているのです。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2010-04-15
それぞれの再会を経て、四人は再び北都の『カシオペアの丘で』再会するんですね。トシとミッチョは夫婦になっており、シュンは家族を連れていきます。シュンは北都で一気に病状が悪化してしまい、入院することになるんですね。再会した四人とその家族はそれぞれの関係や過去の出来事を振り返ります。「あやまることなんて何もない、あたなが、あなたをゆるせばいんですよ」という優しい言葉を受け入れながら、それまでわだかまっていた相手への気持ちを少しずつときほぐしていくのです。
自分のせいでこんなことになってしまったのだ、自分の係累がこんなことをしたためにみんなに迷惑をかけているのだ。そういった悩みや苦しみを、相手はそうじゃない、あなたが悪いんじゃない、といってゆるしていくのです。そうやってゆるされた人たちは今まで以上に人々にやさしくなっていきます。おとなになって「過去とまっすぐに向き合う勇気」を得て、がんにかかりながらこれまで避けてきた自分の人生を改めて見つめなおすわけです。
車いすの生活になったり、末期がんになったり家族の死に向き合わなくてはいけなくなったり、重いストーリーが続きます。これだけでも涙が止まらなくなるのですが、そこに向かい合う登場人物の前向きな気持ちや優しい気持ちが引き出されることで、さらに涙はとまりません。でも、本書を読み終わった後にはもっとみんなをうけいれたい、そんな気持ちにさせてくれるのです。しっかり涙をながし、気持ちを切り替えたい方はぜひ読んでみてください。
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2011-10-25
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2005-06-26
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2005-02-15
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2008-09-03
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2008-06-30
- 著者
- 重松 清
- 出版日
- 2010-06-29
以上、重松清のおすすめ作品を15点紹介しました。あらゆるテーマを取り扱っている作家ですが、すべての作品に共通するのは、どんな話であれ最終的には何かしらの「救い・希望」があるという事です。また、ご自身の経験から生み出される物語・人物像は重松清にしか描けない世界観です。この機会にぜひ一冊手に取ってみてください。