乙一、中田永一、山白朝子、実はこれらの作者はすべて同一人物。作者名に幅のある乙一ですが、その作風も広いんです。

毛色の違う2編の中編小説が収録されており、どちらも読んでいてグイグイ引き込まれてしまう、大変魅力的な作品となっています。
「A MASKED BALL」は、学校のトイレに書かれた「落書き」を巡る物語。一見良い子で実は不良だという女子生徒に、罰を与えると落書きには書かれていました。彼女を守るため、作戦を練る主人公ですが、なかなかうまくはいかず……。
読み進めるにつれ思ってもいない展開になり、感じるのは著者の文学的センスの良さ。ゾッとするような怖さもあり、公共の物をむやみに汚すのはやめようと心に誓うでしょう。
- 著者
- 乙一
- 出版日
「天帝妖狐」は、ある一人の男の、悲しい生涯の物語。杏子という少女が学校からの帰り道に、一人の男が路上に倒れるのを目撃します。全身黒い衣装を身にまとい、顔には包帯が巻かれ、髪は伸びきったその男。何より男からは、近づいてはならないような異様な雰囲気が発せられていました。
そんな男を杏子は放っておけず助けます。それが杏子と夜木の出会いでした。純朴な杏子とだけは心を通わせるようになる夜木。しかしやがて、夜木の素顔が暴かれる事件が起きます。
夜木の抱える悲しく恐ろしい過去。ダークだけれど切ない悲しみを背負った作品で、物語が進むたびに謎も徐々に解きはじめ、引き込まれていきます。夜木が書いた最後の手紙が切なく、深くしんみりとした余韻が続く作品です。
味わいの違う2作品ですが、両編とも乙一らしい世界観が十分に感じられる、異色のホラーファンタジーとなっています。
- 著者
- 乙一
- 出版日
淡々として、きれいな表現で描かれていますが、その取り扱い内容はどれも結末が恐怖の展開となっている短編作品が続きます。
表題作「ZOO」では、別れ話を切り出した彼女を殺害した「わたし」は、殺害したという事実を理解はしていますが、第三者が殺したと思い込み、警察の捜査を攪乱するのです。そして「わたし」は毎日犯人探しに奔走し、殺害現場に到達、死体の写真を撮影します。明日は警察へ出頭しようと決意する「わたし」と、翌朝、彼女を殺したのは自分以外の誰かと思い込む「わたし」。事実と空想の両極を行き来するという常軌を逸した世界を淡々と綴っています。
- 著者
- 乙一
- 出版日
一方、短編「陽だまりの詩」のように美しい短編も含まれているのです。介護ロボットである「わたし」は、病原菌で死ぬことが運命づけられている製作者によって作られました。「わたし」は、最初は人間的な心は持っていませんでしたが、毎日の生活の中で、少しずつ人間としての感情を身に付けていきます。そして死の意味を理解したとき、製作者が同じ介護ロボットであることを知るのです。人間の心をもった製作者である彼に、人間の心を身につけた「わたし」がよりそって、「死」を看取ります。
展開が恐ろしくても美しくても表現が淡々としているので、どんどんストーリーにはまり込んでしまいます。えげつない状況がさらりと表現されているのです。
幅広いジャンルの作品がある乙一作品のなかでも、展開が恐ろしくてえげつない系の短編を集めた短編集『ZOO』。お楽しみください。
- 著者
- 乙一
- 出版日
- 著者
- 中田 永一
- 出版日
- 2013-12-06
- 著者
- 乙一
- 出版日
- 2005-06-25
- 著者
- 中田 永一
- 出版日
- 2010-08-31
- 著者
- 乙一
- 出版日
- 著者
- 乙一
- 出版日
以上、乙一を初めて読む方へのおすすめランキングでした。ひとりの作家さんで多彩なジャンルのものがあって、その上名前まで違うとなると、なんだか奥深い感じがしますね。この機会に是非、乙一ワールドを味わってみてください。