「『絶対』と言い切れることがひとつもないなんて、生きてる意味がないだろ」
先の2作に比べ、読みやすいのがこの作品。『逆さに吊るして叩けば、おそらく出てくるのは、「失礼」と「無遠慮」』という家庭裁判所調査員の陣内が繰り出す数々の名言に心が奪われます。
片想い中のレンタルビデオ屋の店員に告白に行くという陣内に、とある事件で知り合った、盲目の青年・永瀬とその彼女の優子はその場に来るよう誘われました。
店員と客との会話しかしていないのに妙に自信のある陣内。絶対にうまくいく片想いだという陣内に、優子は絶対と断言できるものは何一つないと、識者の言葉で説得を試みます。そこで上掲のセリフが出てくるわけです。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2007-05-15
またこの作品では、盲導犬を連れた盲目の永瀬が見知らぬ婦人から5000円を受け取るシーンがあります。それを見た陣内が「何で、お前がもらえて、俺がもらえないんだよ」というので永瀬は盲導犬を連れているからだろうというと、「そんなの、関係ねえだろ」「関係ないっつうの。ずるいじゃねえか」と喚き出します。
盲目で盲導犬を連れている人間にそんなの関係ないと言える、陣内みたいな人が増えたらもっと良い世界になるのかもしれませんね。
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか」
8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡すると発表されてから5年。残りの3年の生き方について「ヒルズタウン」の住民たちはそれぞれ思案します。本作は、終末を目前とした人々の8つの物語からなる短編集です。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2009-06-26
キックボクサーの苗場は「明日死ぬって言われたらどうする?」と問われ、「変わりませんよ」「ぼくにできるのは、ローキックと左フックしかないですから」と答えます。さらに「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか」と問いかけます。これは「鋼鉄のウール」の中の一節です。
どれくらい生きるつもりの生き方か、なんて普通に生きていたら考えつかないことなんじゃないでしょうか。終末を意識したそれぞれの住人が織りなすストーリー。是非読んでみてください。
「俺にとって残っている武器は、人を信頼することくらいなんだ」
友人森田に言われた「逃げろ!オズワルドにされるぞ」の言葉通り、首相暗殺の犯人として仕立て上げられた主人公の青柳。
逃げる先々で青柳を助けてくれる数々の人たち。そして上掲のセリフが出てきます。
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2010-11-26
また、「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」 というセリフもあるなど、本作は「信頼」というキーワードが軸となっています。大きな権力により濡れ衣を着せられた青柳は果たして逃げ切ることができるのでしょうか?
第1部と第2部では事件発生からおよそ3日間の出来事を、第3部ではそれから20年後のことが書かれています。それぞれリンクしていて、はっとさせられるところが伊坂作品の魅力のひとつでもあります。