吉田修一が紡ぎだす物語には、ファンタジーもサスペンスもミステリーも多くありません。何気なく見過ごしてしまうような日常を描いている作品が多いです。しかし、そんなありきたりに思える日常になぜか、心惹かれてしまいます。

吉田修一は1968年生まれ、長崎県出身の小説家です。法政大学を卒業後、1997年に「最後の息子」で文學界新人賞を受賞し、小説家デビューを果たしました。
2002年には『パレード』で山本周五郎賞を受賞、「パークライフ」で芥川龍之介賞を受賞など飛躍を遂げました。
また、多くの作品が映像化されることでも知られており、『7月24日通りのクリスマス』『water』『パレード』『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』『怒り』と2016年現在7作品が映画化されています。
2016年からは芥川賞の選考員に就任しました。
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2014-08-05
桂川渓谷は広い河原と美しい清流を持つ、都心から気軽に来られる人気の観光地です。しかし渓谷から歩いてすぐ近くにある老朽化した団地を訪れる者はほとんどいません。
四方を林に囲まれ世間から遮断されているかのようなその団地の1室に立花里美と4歳の息子の萌が住んでいたのですが、萌の遺体が渓谷の奥で発見されたことからマスコミが団地に押し寄せてくるようになります。そして里美の生活ぶりやインタビューに応じる時の態度の悪さから世間は里美が息子を殺害したのではないかと疑うようになり、団地には常にマスコミが張り付くようになるのでした。
中小出版社の記者である渡辺も団地に張り付いている1人ですが、同行した運転手の須田が、里美の隣に住む尾崎俊介が同じ大学の野球部員で昔ある事件を一緒に起こした事を教えてくれたことから、渡辺の興味は尾崎とその妻かなこに向かいます。
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2010-11-01
大学時代、尾崎と須田を含む野球部員4名は街で女子高校生グループをナンパし居酒屋からカラオケとハシゴした後、女の子2人を大学の野球部の部室に誘い飲み直します。そのうち尾崎は部室の隅で1人の女の子と交わり始め、それに気づいた3人も欲望を抑えられなくなり、最後に1人だけ残った水谷夏美という女の子を4人でレイプしたのでした。
渡辺が調べたところ、須田ともう1人は事件を境に不幸な人生を送っていました。しかし1人は父親の会社で順調に出世し幸せな家庭を築いており、尾崎も野球部の先輩のコネで大手の証券会社に就職し、上司の娘と婚約するなど順調な人生を送っていたのです。ところがある日、尾崎は仕事も婚約者も捨てて忽然と姿を消し、桂川渓谷に現れるまでは全くの行方不明でした。
そしてついに里美は萌の殺害容疑で逮捕されるのですが、里美は警察で自分と隣人の尾崎との間に肉体関係があったと供述し、尾崎の妻かなこもそれを認めたことから、警察は尾崎と里美が共謀して萌を殺害したか、里美との関係で邪魔になった萌を尾崎が単独で殺害したか、いずれにしろ尾崎が事件に関与していると考え尾崎を勾留します。渡辺は里美と尾崎との関係に違和感を覚えさらに調査を進めるうち、信じがたい事実にたどり着くのでした。
若さゆえの衝動で踏み外した1歩。しかしその1歩の先に続く道が果てしなく長く険しいことに気づくのは、1歩踏み外した後なのです。
第三者たちは当然の事としていつまでも加害者を糾弾し侮蔑し、時として被害者までをも差別するのです。それは果たして過去に踏み外した1歩に本当に見合った罰なのだろうかと考えずにはいられません。
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
物語はある部屋に集った5人の共同生活を軸に展開していきます。集った人たちはキワモノばかり。
H大学の経済学部に通う杉本良介(21)。ひょんなことから好きになった先輩と関係を持ってしまいますが、ある事情から一筋縄ではいかない恋愛模様・・・。良介はその闇へとはまっていきます。
相馬未来(24)は酒に溺れるイラストレーターで、雑貨屋の店長もしています。毎晩酔っぱらって帰ってくるこの男の趣味がまたいびつで、映画の強姦シーンをつなぎ合わせたビデオを大事にしているという変わった性癖を持っています。
大垣内琴美(23)は恋愛依存で、男に振り回され、翻弄する女の子です。何をすることもなくマンションに籠って男からの連絡を待ち続ける日々・・・。その姿には狂気すら感じます。
小窪サトル(18)。最年少ながら夜の世界にどっぷりと漬かった男娼です。
そんな変わった登場人物たちが拠点としている部屋の主が、伊藤直樹(28)です。好きな映画配給会社に勤め、健康的な生活を送る好青年であり、4人を取りまとめる頼りがいのあるナイスガイです。しかし、こんなにも色々な人に囲まれて生活する青年が果たしてまともでいれるでしょうか・・・。実はこの男こそ、一番の変わり者なのかもしれません・・・。
共同生活というと、プライベートとパブリックな要素が微妙に混じり合っているものですが、この生活はまさにそれ。お互いに変によそよそしいこともなく、かといって面倒な事には全く関わらない。深いのか浅いのかよく分からない関係性の中で、それぞれが別々の方向に向かって生きていく姿が描かれています。
読了後、なんだか不思議な感覚に包まれ、色々と想像してしまう本です。
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2015-05-08
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2009-11-06
長崎市のとある土木作業員・清水祐一が、ふとしたすれ違いから福岡市在住の女性・石橋佳乃(よしの)を絞殺してしまいます。出会い系サイトから始まった清水と石橋の関係は複雑なもので、肉体関係を持ったことはあるが、本格的な恋愛関係にまでは至ることがありませんでした。
殺人の容疑者として疑われ始める清水は、出会い系サイトで連絡を取ったことのある馬込光代に会うことになりました。清水が事件の当事者である事に気づいた光代ですが、彼の言動や態度から、言い知れぬ事情があることを感じ取ります。そしてそのいびつな存在の清水を守り、思いやることが愛情へと変わっていき・・・。
これらの他にも、佳乃と遊びの関係を続けていた増尾圭吾や佳乃の父・石橋佳男(よしお)、増尾の友人・鶴田公紀(こうき)などが登場します。彼らの人間性やその行動が、物語をより重厚なものへと落とし込んでいきます。
善人とはどんな人か?悪人とは?そもそも、人間はそんな二項対立で分けられるものなのか?そして、清水と光代の関係はどうなっていくのか?読者はそんなことを考えさせられながら、人間の荒々しさと優しさが複雑に織りなす物語につい引き込まれてしまうことでしょう。
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- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2016-01-21
- 著者
- 吉田 修一
- 出版日
- 2012-11-09
以上、吉田修一のおすすめ作品6選でした。やはり映画化され話題となった作品が有名ではありますが、その他にも魅力的なお話をたくさん書いています。ありふれた日常にスポットを当て、色とりどりに料理してしまう吉田修一。大衆文芸、純文学を制覇したその世界観をのぞいてみませんか?