出久根達郎の古書エッセイ
出久根達郎が経験した、古書に関する様々なエピソードをまとめた挿話集です。古書店で働く中で出会った客との交流が、時に厳しく、時におかしく、赤裸々に描かれています。「あの時こうしておけば……」という後悔の念も所々に垣間見えて、古書店員として働く難しさも随所に見ることができます。
彼の幼少期や青年期の思い出、プライベートな話も収められているのですが、それら全て絡んでくるのが、本。失恋して知った「図書館記念日」、小学生時代に新聞を切り抜いて作った「切り抜き図書館」など、彼の人生は本とともにあるといえるでしょう。
- 著者
- 出久根 達郎
- 出版日
古書店で働く中で生まれた、様々な出会いを描いた本作。出久根の前に現れる客には個性的な人物が多く、中には古書店員としての力量を試すような強者が登場することもあり、波乱の毎日です。
客たちとの思い出にはすべてドラマがあり、それをどこか楽しそうに振り返る様子が、本好きの彼の素性をよく表しています。
1つのエピソードが1~2ページにまとめられており、スピーディーに読み進めてしまいます。各エピソードの題名から、興味を持ったものをランダムに読むのも楽しみ方の1つです。
古書店員の経験を生かした密度の濃い随筆
古書店員として長年働いていた出久根達郎。そんな彼が24人の作家をピックアップし、彼らの作品の価値や、値段をつける際の裏話などを記した随筆です。
また、それぞれの作家の送ってきた人生にも触れ、作品の中に出てくる言葉を引用しながら彼らの生き方を分析していきます。
例えば、『たけくらべ』の樋口一葉。ここでは彼女の貧しい生活をとり上げて、作品の中にお金が欲しいという欲が現れていると分析をしています。描かれている彼女の生活も壮絶で、なんでそんな話を知っているの!?と思わず言いたくなるようなことまで記されているのです。
- 著者
- 出久根 達郎
- 出版日
- 2010-03-12
出久根の圧倒的な知識量が、余すところなく発揮されている作品です。ひとりひとりへの想い入れが強く、十分な量と質があり、本書を読めばぐっと作家たちとの距離が縮まります。
そして忘れてはならないのが、出久根に情報を提供している「龍生書林」の主人、大場啓志。作中にたびたび登場するのですが、彼が持っている情報量がとんでもなく多いんです。
何回読んでも飽きることのない、無限大の魅力が詰まっている珠玉の随筆。24人の作家を知っている人も、そうでない人も楽しめること間違いありません。古書店に足を運んで実際に値段を確認してみたくなりますよ。
出久根達郎が漱石の人生を手紙からひも解く
生涯で2500通もの手紙を書いたと言われる、日本を代表する文豪、夏目漱石。そんな彼の手紙を抜粋して取り上げ、内容や背景にある出来事を解説している作品です。
漱石の手紙の送り先は、正岡子規や寺田寅彦といった彼の友人や門下生から、妻や子ども、彼のファンに至るまで幅広く、内容も多岐に渡ります。中には、人生の教訓や教育論を説いたものもあり、他人に書いた手紙とは思えないほど心に響くものも多いです。
- 著者
- 出久根 達郎
- 出版日
漱石を慕っていた人は数多くいましたが、もちろん出久根もその1人。本書は出久根の作品ではあまり見られない固い文体で書かれており、漱石を題材にしているということでかしこまっている様子が感じられます。
2500通という膨大な数の手紙が保存されていたということで、漱石がいかに優れた文豪であったかが分かるだけでなく、さらにその内容を抜粋して解説している出久根が、どれだけ漱石を敬愛していたかも感じることができます。作者を介して、当時の文豪を取り巻いていた世界にお邪魔しましょう。