潜水艇で冒険の世界へ、「イーゲル号航海記」シリーズ
小学生の男の子カールが、天才科学者のローゼンベルク博士、操縦担当のフランク、コックのハンス、シェパード犬のラインゴルトと共に、潜水艇イーゲル号に乗って冒険の旅に出る「イーゲル号航海記」シリーズ1巻。
港に不思議な求人広告を見つけたカールは、張り紙に従って歩くうちに渦巻きの調査に行くという不思議な潜水艇に乗り込んでしまいます。目的地について、渦巻きに巻き込まれたカールたちがたどり着いたのは……。
- 著者
- 斉藤 洋
- 出版日
主人公のカールは一見普通の小学生ですが、とても冷めた考え方の持ち主です。学校にはワクワクするようなこともないから、毎日行くところじゃないと思っていたり、ドイツと日本のハーフであるという自分の境遇の説明を面倒くさいと一歩引いてみていたり。
そんな冷めた少年が一緒に旅をする仲間もとても個性的です。犬であるラインゴルトさえ、全生物の言語を理解する能力を持っています。きっと、ごく普通の生活を送ったなら、異質な存在となり得るであろうイーゲル号のメンバーたち。
しかし彼らはお互い、自分の好奇心を満たすだけの不要な侵入はしません。一定の距離と思いやりを保ったイーゲル号は、誰にとってもとても居心地のよい場所です。彼らの絶妙な距離の取り方にはとても感心させられるでしょう。
今回、イーゲル号は不思議な渦の調査に向かいます。実際に渦の中に飛び込んだ結果、たどり着いたのは魚人の世界でした。魚と鳥のいさかいごとに巻き込まれることとなりますが、その解決方法はとても平和的かつ知的です。
たくさんの伏線が張られた何度も読み返したくなるような冒険ストーリーとなっていますので、子どもだけでなく、大人が読んでも楽しめるでしょう。いつもの道をちょっと変えて、冒険に出たくなる1冊です。
なってみたいペンギンの探検家、斉藤洋の大人気の「ペンギンたんけんたい」シリーズ
神出鬼没のペンギンたちが色々な動物たちに出会って巻き起こる騒動を描いた大人気の「ペンギンたんけんたい」シリーズ。今回の舞台は南の島です。
50人乗りのカヌーに乗って南の島にやってきたペンギンたんけんたい。「エンヤラ、ドッコイ!」(『ペンギンたんけんたい』本文から引用)と掛け声をかけて島の探検を始めます。
最初に出会ったのはライオンです。「ガオーッ!」と脅したにもかかわらず「ペンギンたんけんたいだ!」と言い残し通り過ぎます。不思議に思ったライオンは後ろをついて行き……。
- 著者
- 斉藤 洋
- 出版日
- 1991-08-07
動物園でよく見かけるペンギンは、ヨチヨチ歩く姿が愛らしいですね。ペンギンは群れから離れない集団生活の動物です。
この物語に登場するペンギンたちも50羽で集団行動を取っています。先頭は隊長、その後ろが副隊長、その後ろでノートを抱えているのは副副隊長。ずいぶん本格的な探検隊ですね。
ノートを持つ副副隊長はことあるごとにメモを取り、泳ぐときにはノートを守って上向きとなります。物語の最後にはなぜ島を探検していたのかが判明するのですが、ライオンの心残りは副副隊長のせいなのかな……と思うと、思わず笑ってしまうことでしょう。
淡々としたペンギン探検隊の姿、そしてそれに振り回されるライオン、ニシキヘビ、ワニの姿はそれぞれの持つイメージと真逆で心を惹きつけられますよ。
ぜひ、この本を手に取り、ペンギンと共に南の島の探検に出て下さいね。
斉藤洋がおくる、時空間の歪んだ時計台が織り成す友情の物語
小児科医のクラウスは幼い頃住んでいた町イェーデシュタットの市立病院に赴任してきます。到着早々、幼稚園時代の深い思い出である人形劇に遭遇。不思議な気持ちで導かれるように少年期に過ごした街の西側、ウーアトゥルム広場に行ってみると、子どもの頃には一度も開いたことのなかった扉が開いていて……。
親友アルフレートに自分の正体を明かせないまま、再び離別するクラウス。ちょうど赴任から2年、クラウスが知る親友の真実とは?
- 著者
- 斉藤 洋
- 出版日
- 2011-04-06
この物語に出てくる時計台には不思議なうわさがたくさんあります。しかも「入り口から入る人は見るけど出てくる人は見ない」「夜中の3時に銅像のペガサスが動く」「時計台の先端に白フクロウがとまると死者が出る」など、学校の怪談を彷彿とさせるような少し怖いうわさばかり。
しかし、こんな怖いうわさも斉藤洋作品らしい心温まる物語の布石です。読み終わったら自分の街のうわさも調べたくなるかもしれませんね。
端的に言うとこの物語はクラウスとアルフレートの友情物語です。ただし、クラウスは小児科医となった大人、アルフレートは小学生のまま、そして友情を育む場所は時空の歪んだ時計台の中。最終的に2人は2度目の永遠の別れをすることとなります。一見切なくて悲しい物語、しかし読み終わった後に清々しさと前向きで明るい心を持つこととなるでしょう。
ぜひ真の友情から遠のいている大人の方にも読んで頂きたい1冊です。