稀代の推理小説家として、国内外に多数のファンを持つ江戸川乱歩。数々の作品がメディア化され、日本の小説界に欠かせない存在となっています。読み応えたっぷりの長編から、心に残る極上の中短編まで、数々の傑作を生み出し続けた江戸川乱歩の作品をご紹介します。

作中で殺人事件が発生するD坂とは、文京区千駄木にある団子坂のことです。数々の小説家が暮らしていた土地ということもあり、乱歩もまた例外ではありませんでした。彼もまた、団子坂で古書店を経営していた過去があるのです。また、作中に登場する古本屋と蕎麦屋は、どちらも彼が働いたことがある場所であり、書き手自身の人生経験を存分に盛り込み、リアリティのある舞台設定に仕上げられているというわけです。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 1987-06-01
幼少期、江戸川乱歩は翻訳者の黒岩涙香の大ファンでした。リライト時、遺族の許可のもと、謝礼も支払い、原作の良さを守りながら、新たな作品として生み出すことに注力したのでした。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 2015-06-06
江戸川乱歩自身も、本作をトリッキーでアクロバットと称しており、黒蜥蜴は書き手としても重要視している登場人物の一人でした。乱歩らしいエロやグロを掘り下げ、物語をより盛り上げているのはもちろんのこと、ただの推理小説にはない、激しい頭脳合戦も魅力です。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 1993-05-01
謎を追う主人公は、明るい作風が特徴の探偵小説家。対して、暗い作風が特徴で、静子に脅迫を仕掛けてくる春泥もまた、探偵小説家です。どちらも実在の作家がモデルとなっており、後者はなんと乱歩自身を元に生み出されました。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 2015-02-20
誰にも悟られていないと思っていた郷田の秘密の行いも、明智小五郎にかかれば、すぐに暴かれてしまいます。シリーズの初期作であるにも関わらず、今後彼が、名探偵としてどれだけの活躍を経ていくのか、隅々から痛感するでしょう。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 2015-05-20
パノラマ島の緻密な描写は、読み手をいっきに物語の世界観にのめり込ませます。この世のものとは思えない、空想を実現させた絢爛な世界観は、人見の邪悪な思想と混じり合い、複雑な様相を生み出していくのです。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 2015-07-21
江戸川乱歩は、犯罪と心理学の関係について、特に深く研究し、様々な作品に反映していった小説家でした。本作『心理実験』は、その影をより色濃く感じることが出来る一作だと言えるでしょう。単語への反応検査であるミュンスターベルヒの心理試験について知った乱歩が、探偵小説として描き出したという歴史があります。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 2015-11-20
私立探偵の畔栁博士は、犯罪学者としての一面も持っている名手です。事件の様相や、被害者のスタイルから、解決のためのあらゆる分析を進めていきます。そのロジックの細かく劇的なスタイルは、本格探偵小説を楽しみたい人にうってつけでしょう。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 1993-02-01
「人でなしの恋」は、発表当時は読者人気もあまり高くなく、編集者からもあまり高い評価を得られませんでした。しかし、書き手である江戸川乱歩は、本作を特に気に入った作品のひとつとして挙げており、その執着ぶりは、作品の完成度からもうかがい知ることが出来るでしょう。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 1995-10-01
本作では、令嬢である妙子との間に、ほのかな恋心を育てる明智の様子を楽しむことができます。更に、賊の手に落ちてしまう探偵のピンチを細かく描いているのも特徴です。痛快な謎解き劇だけではなく、明智の人間らしい一面や、二人の恋の行方も楽しめる長編作品に仕上がっていると言えるでしょう。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 1993-03-01
明智小五郎と少年探偵団対、怪人20面相のバトルで元々小学生の中学年から高学年の子供向けミステリー小説です。怪人20面相は「血が嫌い」という理由で追いつめられると暴力的な行動を取るものの、一貫して残虐的なシーンはありません。江戸川乱歩の作品が見たいけれど、まだグロテスクな表現は怖いと感じる方はこちらが入門編になるかと思います。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
予告状を送り、挑発的な性格が奇抜なトリックと相まって、「少年倶楽部」という戦前から発行されていた雑誌で連載当時、爆発的な人気を博し戦後も「少年クラブ」に引き続き書き続け、当時の読者の心を掴みました。
怪人20面相は、魔法使いのよう。「どんなに明るい場所で、どんなに近寄ってながめても、少しも変装とはわからない」程の変装上手で「僕自身でも、本当の顔を忘れてしまっているのかもしれない」と描かれています。
冷血で完全無欠な怪盗というイメージを抱いている方もいたかと思いますが、実は人間味溢れるキャラクター。大悪党なのにどこか憎めないミスをしたりする姿は可愛いらしく感じてしまいます。現在でも色褪せることのない怪盗20面相の素敵なミステリーです。
1925年に発表された軍事スパイを題材としたミステリー小説です。この作品が発表された頃戦争の影が見え隠れしていた背景が、この作品を生み出したのかもしれません。
工学博士、五十嵐東三が東京―ニューヨーク間を5時間で飛ぶ超高速機を開発することが夢。博士は軍から援助を受け長野県にある温泉の裏山ある、某貴族の別荘に秘密設計班として籠ります。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
そんなとき、五十嵐博士の長男「新一」と助手の南博士の妹「京子」が山の見晴らし台から目撃した煙突の中からはい出した怪しい人物は何者なのか……。開発が成功すれば瞬時に敵国に行けるというこの超高速機を狙う者とは!?
じりじりと進んで行くストーリー展開で短編とは一味違う趣があります。激動の最中、江戸川乱歩がミステリーに拘った感慨深くなる一冊です。戦時中に執筆された作品だからか、彼特有の暗さなどは少なめです。しかし江戸川乱歩のミステリーのおもしろさは健在。彼の独特な雰囲気が苦手だという人も読みやすい1冊なのではないでしょうか。
この作品が世に出された頃はまだ同性愛を語ることさえままならない世間だったはずなのに、禁忌を犯してまでも題材として取り上げるというのは作家魂を感じます。
物語の主人公は「蓑裏金之助」が25歳の頃、木崎初代と恋に落ちたことから歯車が狂い出していきます。初代は「命に次に大事」なもの系譜図を持っていますが、初代は3歳の頃捨てられ、系譜図は初代の出生が書かれた重要な部分が破れ身元を特定できずにいました。それでも金之助は初代に求婚し二人は結婚に向け絆を深めて行きました。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
そんな2人の仲を家柄、収入、学歴が金之助よりも格上で頭脳明晰な美男子「諸戸道雄」が崩れさせます。彼は初代に求婚してきたのですが、道雄はかつて金之助に恋心を抱き、酔った勢いで想いを伝えたことさえある、金之助の学生時代の先輩だったのです。
道雄の目的は初代ではなく、金之助なのではないか……?と疑惑に包まれる中、なんと初代が殺され系譜図も盗まれてしまうのです!恐ろしい表現や目を背けたくなるストーリー展開です。グロテスクな場面もあり、寒気さえ感じるほどの内容ですが、江戸川乱歩を体感するに相応しい、ぞくぞくする1冊です!
読み進めて行けば行くほど、ぞっと背筋が凍っていくような展開で女性にぜひ読んでいただきたい作品です。
主人公は外務省書記官夫人「佳子」に届いた一通のはがきと、はがきに添えられた原稿用紙から始まります。
原稿は自分のことを「醜い容貌の持ち主」で「貧乏な家具職人」と紹介している人物によるものでした。その内容は独特のフェティシズムを持つ者の言葉が並べられていました。家具を作り、中でも椅子の注文に関しては作り終えると座り心地を確かめ想いを馳せては恍惚とする男。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
- 2015-03-20
内容はどんどん穏やかではなくなっていき、椅子の形に沿って潜ることができるよう作り直し、納品先で盗みを働くことなどを悪びれることなく書き綴っています。しかも自体はもっと恐ろし
い方向へ向かいます。なんとその男は潜った状態で、人に座ってもらうことに喜びを感じるようになっていたのです……。
読み進めて行くと、疑惑が確信に変わっていき女性ならば、佳子に感情移入してしまうかもしれません。すっきりしているようで、恐ろしい余韻が残るラストまで一気に読めてしまう作品です。
戦争から帰還した夫は、手足を失ってしまい話すこともできません。日々介抱する妻は食事の介助や、妻主導の一方的な夫婦の営みにだんだんサディスティックな目線で夫に接してしまう……というストーリー展開。
- 著者
- 江戸川 乱歩
- 出版日
夫にイライラしてしまう妻というのはありふれたものですが、そこは江戸川乱歩流。切なく、そして人間の隠された醜い部分が噴き出した時の恐ろしさと共に進んでいきます。
ラストは背中がぞくぞくするような、それでいて言い知れぬもやもやが残ります。江戸川乱歩の作品は一筋縄ではいかなしこの感覚がたまりません。衝撃を受けるラストはしばらく呆然としてしまうかもしれません。
人間臭く、人の恐ろしさや人間が持つ残虐さ、夫婦でしかわからない関係性も緻密に描かれています。短編とは思えない読みごたえのある作品です。
いかがでしたか?江戸川乱歩の作品は、シリーズから長編、短編に至るまで、どれも魅力たっぷりの作品ばかりです。読み応え抜群ですから、ぜひ手にとってみてください。