キラキラ輝く青春のひと時を描いた『彼のオートバイ、彼女の島』
1986年
大林宣彦監督により映画化もされた『彼のオートバイ、彼女の島』。
東京から信州へ、1人でツーリングに出かけたコウの前に現れた女性「ミーヨ」は、コウの乗っているバイクに興味を持ち、声をかけたのです。
後日、彼女が持っていたカメラで撮影してもらった写真がコウの元に届きました。はじめは文通でやり取りをするなど、携帯などが普及した今ではあまり見かけなくなった、時代を感じる連絡方法に懐かしさを新鮮味も感じます。
- 著者
- 片岡 義男
- 出版日
コウのバイクに興味をもち、こっそり免許を取得するミーヨは、活発で可愛らしい女性です。彼女は瀬戸内海の小さな島の出身で、東京にいるコウを夏祭りに誘います。こうして、2人は少しずつ距離を縮めていくのです。
それとともにコウの東京での生活の様子も綴られています。音楽大学に通いながらプレスライダーをしていること、その仕事は文通で知り合った女の子に紹介された仕事であること、また時には血の気が多くてケンカをしてしまうこと……。まだ自分の着地点を見つけていない若者、という印象を感じられます。
30年以上前に執筆された小説ということで、現在の若者の接点の取り方と違う部分もありますが、この時代に青春を謳歌していた人には懐かしく、若い方が読んでも目に浮かんでくるような風景の描写が素晴らしい、と感じてもらえそうな物語です。
コーヒー片手にゆっくり読みたい『豆大福と珈琲』
片岡義男の本には装丁にこだわったものも多く出版されています。『豆大福と珈琲』は表紙を開くと、片岡義男ワールドへと誘うような独特の色合いの中表紙。そして少しざらつきのあるページは、手にほどよくなじむとともに、ページをめくるたびに鳴る心地の良い音も、物語のための演出効果となっています。
『豆大福と珈琲』は朝日新聞が子どもをテーマに、数人の作家によるリレー形式で連載された企画のトップ作品です。さらにその1年後に発表された『煎りでコロンビアを200グラム』など、合計5作品が収められています。
- 著者
- 片岡義男
- 出版日
- 2016-09-07
豆大福のエピソードから『豆大福と珈琲』は、子連れで地元へ帰ってきた幼馴染の女性と男性との物語です。
女性の実家は和菓子店であり、手土産に豆大福をもらいます。主人公はパスタを食べた後のデザートに豆大福をフォークとナイフで食べますが、この食べ方の描写は片岡義男らしさを感じる場面でもあります。
タイトル作を含め、コーヒーと大人の恋愛を描いた4作品から構成されており、のんびり喫茶店でくつろぎながら読んでみたくなる物語ばかり。ぜひコーヒーをおともに読書を楽しんでみてください。
片岡義男の世界に引き込まれる『洋食屋から歩いて5分』
発刊されるまでの数年にわたって新聞などに掲載された食べ物をめぐるエッセイ『洋食屋から歩いて5分』。短編33編から構成される内容には、出版にあたって書き下ろされた2作品もあります。
本を開いてまず目に入る目次は、まるで散文詩のようです。このページを見るだけでも、彼がいかにコーヒーにこだわりを持っていたかがわかります。
本編で綴られる風景の描写の秀逸さは、さすが片岡義男といったところ。目の前に浮かんでくるようなテンポの良い文章は、スッと物語に引き込んでくれます。
- 著者
- 片岡 義男
- 出版日
- 2012-07-30
『洋食屋から歩いて5分』には、少年時代を過ごした海と山に囲まれた瀬戸内の風景とともに、その当時口にした食べ物の描写も綴られています。これらの描写はエッセイを執筆した同時期に発売された短編小説にも掲載されており、どの本のどの部分かを探しながら読むのも楽しそうですね。
本作では、片岡義男に小説を書くことを勧めた「田中小実昌」との新宿での一夜についても書かれています。また執筆活動のためいくつもの喫茶店をはしごしていた時に、ウエイトレスをしていた女性との偶然の出会いなども綴られており、本の内容に深みを与えています。
おしゃれでダンディな片岡義男の日常が、垣間見えそうなエッセイですよ。