田舎町で教師として奮闘する青年を描いた『何処へ』
都会で生まれ育った新任教師、伊能琢磨が田舎に赴任します。彼は都会の高潔さ、知的社会をそこに根付かせようとしますが、生徒や父母、同僚である教師に振り回され、なかなかうまくいきません。しかし彼はそこで諦めるのではなく、先駆者というものはいつもこういうものであるとめげずに田舎に住む人間達に向かっています。
そんな人間関係の中で紆余曲折しながらも教師として成長していく伊能の姿を描いた作品です。
- 著者
- 石坂 洋次郎
- 出版日
この作品も上の二作と同様に1964年に映像化されています。独特のユーモアが溢れた作品となっており、庶民派な物語だといえるでしょう。先生という、どの年齢の方にも馴染みのある職業の人物を取り入れ、内容も何歳になっても悩むような、躓いてしまうような事柄を扱っています。
あなたの周りにもこんな人いませんか?自分の持っている理想のラインにみんなを上げようと努力する人。人は一つの目標のため、特に理想を実現するためならば一生懸命に取り組むことができるのでしょう。
その中で成長し、嬉しいことも経験し、また苦しみや悲しみもしるのです。いろんな人との関わりを持つことである男が成長していく物語となっています。
石坂洋次郎の短編集。大人の恋を描く『霧の中の少女』
この本は短編小説です。今回は表題作である「霧の中の少女」をご紹介します。
ある時、金井妙子は姉・金井由子宛に届いた手紙を由子が不在なのをいいことに勝手に読んでしまいます。その手紙には上村英吉という男からのもので、今旅の途中なので家に泊まらせてもらえないかという内容のものでした。
妙子は両親を頑張って説得しようと試みますが両親はなかなか承諾してくれません。すると、祖母が両親に彼は由子の将来の婿だから泊めてやれと助言します。英吉は泊まることになり、そこから妙子、由子、英吉の3人の距離は急速に縮まるのですが……。
- 著者
- 石坂 洋次郎
- 出版日
- 1959-10-25
「霧の中の少女」では当時の男女観がうかがえるでしょう。上に記した3人は、みんなで仲良くお風呂に入ります。この時代は旅先での温泉でも混浴が多かったのです。
この作品は上にも記した通り、短編集となっていて内容としては、「人生」「女同士」「若い娘」「くちづけ」「危険な年齢」「霧の中の少女」「冬山の幻想」「婦人靴」「青い芽」「乳母車」が含まれています。いずれにも、思春期特有の危うい強さが滲み出ています。
自分が成長し、大人になって当たり前だと思っていたことも、ふと昔の自分を思い返してみるとそうではないと気づくことはありませんか? ぜひこの作品を読んで、昔の思い出を呼び起こしてみてください。
困難の先に見える景色とは?『山のかなたに』
この作品の主人公は、母と共に洋裁塾を経営する井上美佐子、高校の物理化学の教師・上島健太郎の2人です。高校では、不良気取りの学生が後輩を従え乱暴を働いています。ですが、上島はそんな学生に対し「生徒達は自分達でその過ちに気づかなければ意味がない」と言って消極的な態度を取り、自分から積極的に生徒に関わろうとしません。
そんな中、国語教諭の山崎から美佐子へ宛てたラブレターを預かっていた美佐子の弟が、不良学生にそのラブレターを取られてしまったことが発端となり事件が起こり……。
- 著者
- 石坂 洋次郎
- 出版日
この作品のテーマの中心は恋愛と性になっていますが、性はあくまでも結婚や出産といったものを指します。あくまで人間の本能的な部分よりも理性的な部分を大きく取り上げた物語といえるのではないでしょうか。
この作品を読むことによっていつの時代でも人の価値観を変えるということは、相互に認め合い、許しあうことであり、またそれに伴う勇気を持つことがとても大事だと学ぶことができます。
苦手なものに対して、努力して立ち向かうことってとても怖いですよね。ですが、その怖い気持ちをぐっと我慢して立ち向かったからこそ、山のかなたに美しい景色が見えるのでしょう。