詩的な散文体で語られる放浪生活の断片
『孤独な旅人』は1960年に発表された短編集で、アメリカ、メキシコ、モロッコ、イギリス、フランスへのケルアック自身の旅行記を編集したものです。
この作品では、ケルアックにおける他作品同様の問題、つまり路上生活における人間関係や仕事などについて描かれています。数編は、雑誌の記事として発表されました。
- 著者
- ジャック・ケルアック
- 出版日
- 2004-09-04
この短編集は、ケルアックの生み出した「自然発生的散文体」という技法を用いて書かれました。これは、意識せずに心の赴くまま、情景や感覚をつなぎ合わせて、時間をかけずに物語を描くというもの。特に「メキシコの農民達」や「鉄道の大地」に、文体的特徴が見てとれます。
「山上の孤独」では、のちに紹介する『ザ・ダルマ・バムズ』や『荒涼天使たち』でも登場する、孤独な山火事監視員として3ヶ月デソレーション・ピークに滞在した経験が描かれます。
それぞれの作品は不道徳なものでありながらも、印象的に仕上がっているケルアックらしい作品です。
東洋思想に魅了されたビートニクの探求と友情
本作では、登場人物が孤独を歩み、物質的なものに支配されず、ひたすら法(ダルマ)を求め、瞑想を通して学んでいく過程が描かれています。
語り手のスミスが、友人ジェフィとカルフォルニアの山を登り、ノースカロライナの森で瞑想し、ジェフィのキャビンでパーティをする日々を語ります。そして、ワシントンでは、ジェフィから山火事監視員という孤独な仕事を引き継ぐことに。
スミスは、敬虔な仏教徒の生活様式を実践していると信じているのですが、かなりアルコールを飲んでいるのが面白いところです。
- 著者
- ジャック・ケルアック
- 出版日
- 2007-09-10
この作品は、1958年に発表されました。他のケルアック作品同様に自伝的要素を多く含み、『オン・ザ・ロード』の数年後に起こった出来事を描きます。
主要人物はレイ・スミスとジェフィ・ライダーです。それぞれ、ケルアック自身とゲーリー・スナイダーが投影されています。ゲーリー・スナイダーは1950年代にケルアックに仏教を紹介した詩人で、1956年には来日し、京都の大徳寺などで修行を積みました。
ケルアック自身の経験と結びつく、主人公の仏教への探求が、物語を通して回想されます。語り手レイ・スミスの物語を駆り立てるのは、ジェフィの生き方や考え方です。それは、質素な生活や禅への傾倒であり、『オン・ザ・ロード』での成功後、ケルアックが一時的に魅了されたものでした。
ジャック・ケルアックの自伝的小説。放浪生活と自然を求める心の葛藤を描く
ジャック・ドゥルーズは、デソレーション・ピークの山火事監視員をしています。静かでいられ、物を書き、宇宙の真理について考えるため、ドゥルーズ自身が選択した仕事でした。
火事の時期が過ぎると、ドゥルーズはビート運動や詩人仲間の居住地であるサンフランシスコへ帰ります。ドゥルーズは仲間たちと再び絆を深め、一行はメキシコへ旅行をすることに。
詩人のアーウィンは、ニューヨークへ戻ったドゥルーズに書き溜めたものを発表するよう勧めます。ドゥルーズはついに納得し、彼の処女作『オン・ザ・ロード』が出版されることになったのでした。
- 著者
- ジャック ケルアック
- 出版日
『荒涼天使たち』は、ケルアックの自伝的小説であり、彼の「ドゥルーズ伝」の一部を成しています。「ドゥルーズ伝」とは、彼のライフワークとして目標に掲げていたもので、初期作品を含んだ壮大な自叙伝のことです。「ドゥルーズ伝」に登場する人物たちは、実際の友人達がモデルとなりました。
この作品は1956年に出版されましたが、実際に書かれたのは『オン・ザ・ロード』の出版中の時期でした。最初の章は、デソレーション・ピークの山火事見張りをしていたときの日記から、ほぼそのままの形で掲載されています。ケルアックは、第2章を単行本として出版したかったようです。
主人公ジャック・ドゥルーズが悩んでいる問題には、以前ケルアックが魅了された仏教哲学への幻滅が反映されています。